第21話 死にに行く様なもんである
だからこそこの俺様殿下もどこに行くかはわざわざ言わなかったのであろう。
その行く先は十中八九サロンで間違い無いだろう。
それも上位階級爵位、そして王族しか使用が許されないサロンである。
はっきり言って行く訳が無い。
何故敵の本拠地へ単身のこのこと向かわないといけないのか。
死にに行く様なもんである。
非常に大事な事なのでもう一度言います。
何故そんな場所に行かなければいけないのか。
「どこに行くかだと……そんなのサロンに決まっておろうっ! それにお前は昨日何故来なかったっ!? 昨日来なかった理由を先に言えっ! 言えないのならば行くぞっ!」
若い頃は俺様な、その引っ張ってくれる男らしいノア殿下に惹かれてしまうだろう。
しかし結婚を考える年齢になると話は別である。
この様な、相手の意見も尊重せず自我を貫こうとするその性格に前世合わせて三十歳をとうに超えているわたくしは引いてしまう。
最早ノア様に対しては攻略対象キャラクターという時点でマイナス評価なのだが、既に地に落ちているその評価はここに来て勢い良く地中へと掘り進んで行く。
「すいませんがわたくしはサロンには今後行きませんし、今日レオ様よりレオ様に近付くなと言われたのでレオ様と鉢合う可能性の高いサロンへは行けませんわ」
本当の事を言うとレオではなくてシャルロッテに近付くなと言われたのだがこの際多少の嘘は許容の範囲内であろう。
むしろ相手の言葉の裏も読み取り、そして汲み取ったに過ぎない為嘘では無い。
この時ばかりはレオに感謝である。
「はぁっ!?」
「ですのでわたくしをサロンに連れて行きたいと申したいのでしたらまず初めにレオ様から許可を頂いて下さいまし。 それにわたくし、こう見えて暇ではないのですの。 それではノア様、御機嫌よう」
「おいっ!? ちょっ、待てよっ!!」
どこぞのキム○クかよと言いたくなる様な呼び止め方された所で待つ訳が無い。
ただ、悔しいのがノア様がキムタクに負けずとも劣らないのが腹立たしい。
と、言う訳で捕まる前に逃げるが勝ちですわ。
「おいこらメイドっ!! 邪魔すんじゃねぇっ!」
「いいえ、邪魔させて頂きます」
なんか後ろからノア様とアンナのやりとりが聞こえて来るのだが無視だ無視。
アンナさん、このままこのわたくし最大の天敵を阻止して下さいまし。
◆
「レオはいるかっ!?」
ノア王子の怒号と共にサロンの扉が勢い良く開く。
そこに立つノア王子は苛立ちを隠そうともせずレオを見つけるやいなや大股で歩み寄って行く。
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