第19話  調査課戦闘係

 「さて、ではわたしに攻撃してみてください。」

支部長はそう言って立ち上がり、僕たちの前に立った。たぶん能力を見せてみろってことなんだろうけど。残念ながら僕の能力は驚異的な再生能力以外なにもない……。


 こ、このままじゃ不採用で研究室送りになってしまう!


「支部長、彼の能力は再生能力です。心臓が止まってからも再生したので、我々と違い不死に近い能力かと。彼女はまだよくわかってませんが、身体能力向上の能力かと。」


僕たちが自力でアピールできないのを察してか、ハイノメがサポートしてくれた。


「なるほど、わかりました。トガショウさんの能力は素晴らしいですね。シンプルで分かりやすい、人類が追い求めてきた夢の身体! 私たち能力者ザブも、一般人よりもかなりタフで、傷の治りも早いですけど、あなたほどじゃないですね。ぜひ、調査員として頑張っていただきたい。」

「あ、ありがとうございます。」

どうやら合格のようだ。でも調査員? もしかしてハイノメと同じく、現場に出向く感じか……。出来ればデスクワークで安全に暮らしたいのだが。

「ユズキミナさんは……、まだ能力が分からないんですね。大丈夫、調査員としてうちで頑張って、徐々に慣れていけばいいんです。ハイノメ君、お二人をお願いしますよ。」

「え!」

ハイノメは予想してなかったのか、かなり驚いたようだ。

「お願いしますよ。」

支部長はさらにハイノメに圧をかける。支部長に押されてハイノメはしぶしぶ承諾した。


 支部長室から出た三人組は、とぼとぼと廊下を歩く。

「と、とりあえず受かってよかった~。ひとまず安心ですね。」

ミナさんは緊張感から解き放たれたからか随分と楽観的だ。そんなミナさんの気持ちを打ち砕くように、ハイノメがキツイ言葉を投げかける。

「いいえ、今はまだテスト期間よ。特にミナ! あなたは自分自身の能力をちゃんと把握しないといけないわ! でないと、研究室送りになって、アオバの研究材料にされる。」

「えええ! そんなぁ」

ミナさんは急に顔が青ざめていく……

「冗談よ! さすがにそんな悪いようにはされないわ! 安心して」


 アオバサユリ……、彼女ならやりかねないのだが……


 ハイノメを先頭に僕たちは施設内を見学していた。そしてある扉の前で立ち止まった。

「さて、ようこそ世界樹対策課日本支部へ ここが私たちの部屋よ!」

その扉には、調査課戦闘係と書かれた文字が

 

 戦闘係……戦隊モノみたいだな


ハイノメが勢いよく開けるとそこには誰もいなかった。

調査課戦闘係の部屋は机が六台、しかも、二つしか使ってなさそうだ。つまり、ハイノメとあと一人……。

「……今はほら! できたばかりだし、人手不足だから!」

「お、追い出し部屋……」

放った言葉がこれだった。 しまった! 思ったことがつい出てしまった。

「ちがうわ! 本当に出来たばかりで人手不足なの!」

ハイノメが食い気味に否定する。

「お、思っていたのとなんか違う……」

ミナさんも同じことを思ったらしい

「ぐぬぬ、でも相棒に出てくる特命係の部屋みたいでかっこいいでしょ」

「でもここには右京さんいないじゃん!」

「うるせえ!」


 ばし と頭をたたかれた。


 「さあ、二人とも自分のディスクは好きにデコってもいいわよ」

机の上は好きに変えて良いらしい。とは言われても、僕はすっきりしていたら別にいい、ハイノメのようにキティちゃん? のぬいぐるみ置く気もないし、そしてもう一つの机のようにフィギュアだらけにもしない。

「もう一人の方はどちらにいらっしゃるのですか? 随分と、フィギュアが置かれてますが……。」

「あー、あの人は仕事中なの。まあ、近いうちに会うわ。一応この係の責任者だし。まあとりあえずゆっくりしなよ! 明日から忙しくなるし。」

その後、ハイノメに連れられて、僕たちは別館にある社員寮に連れていかれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る