世界の意思にさようなら
ラゲク
第1章 災害からの脱出
第1話 災害
青い空、白い雲、素晴らしい天気である。廃墟マニアの僕にとって、本来であればこれほど心が躍る場面なんてないはずだ! つい数か月前までは……
「どこも見渡す限り荒れた街並み……、流石に飽きたよ。」
僕の名前は、トガショウ どこにでもいる一般人だ。東京在住で、一人暮らしを堪能していて、休日には遠出して趣味の廃墟巡りをしていた。
なのに、一瞬で世界が変わった……
突如として大都会東京の街に、東京タワーほどの、ホラーゲームに出てきそうな禍々しい巨大樹が現れたのだ。そのせいで東京の中心はほぼ壊滅状態、今もガラスや瓦礫で、歩くのが困難な状況だ。
「流石にもう生存者はいないだろう……」
厄災の後、仕事もこの状況だ。流石にずっと休みになっている。
いや、つぶれたのか……
とにかく、こういう時こそ助け合い精神!
僕はボランティアで救助活動にあたっていた。他にやることもないからだ。
「腹減ったなぁ そろそろ配給の時間かな?」
腹が減っては戦は出来ぬ! こんな世界になっても最低限の衣食住はある。日本だけでなく、この厄災は世界中に現れ、世界中が大混乱になっている。日本はまだマシな方だ。世界ではもっとひどいことになっているところもあるそうだし……
「しかし、この植物どうにかならんかね……」
「そうだよな、こいつが邪魔で、復興も何も始まらん。」
時間が経って最初は気味悪がられてたこの巨大樹も、慣れ始めてきたところだ。
もちろん、災害の記憶を思い出すから近づきたくないと、考えている人がほとんどだが、時の流れは、恐ろしい。
「この木さ!食えるのかな?」
「おいおい、まじかよお前……」
近くの若者二人が、こんなくだらない会話ができるぐらい巨大樹は、日常光景の一つとなっていた。
巨大樹から離れた大きな公園に向かうと、多くの人が集まっている。政府から配給される食料が目当てだ……。みんな家と仕事を失い、最低限の生活で耐えている。数か月前の、賑やかで華やかな東京の生活とはかけ離れている。
キャアア
天気だけはいい公園に悲鳴が鳴り響いた……
今となっては見慣れているが、人の腕ほどある異様な存在を放つ木の根が、地中から現れたのだ。まわりがざわつく中、一人の男がその根に近寄る……。
「大丈夫だ! 問題ない。」
彼の一声で、周りは落ち着きをとり戻した。
彼のようなファーストペンギンに感謝だな!
と、思いながら遠くでオドオドしているチキンペンギンがぼくだ。
日が落ち、周りが闇へと書き換えられれいく……。
電気などのインフラが崩壊した中、夜はとても危険だ。周りが見えにくいのはもちろん、犯罪率も多くなる。
ぼくの区画の場所は、自衛隊の人もいるし、かなり安全ではあるが、それでも気を付けないと! 強姦魔や暴行が増えているのは確かだ。
「さて、そろそろ交代の時間かな?」
「そうですね、行きましょう。」
いくら自衛隊の人がいるとはいえ、この混乱の世界人手不足なので、夜の見張りは交代制でやっている。二人組でだいたい1時間ぐらいで交代だ。ぼくはこの30歳くらいの山田さんと、一緒に見張りをすることになっている。
「トガ君は、災害が起こる前は何をしてたの?」
「営業の仕事してましたよ 成績は酷かったですけど……。」
「ヘぇ! すごいじゃん おれ、ニートだったからさ。」
「……」
ガシャン
暗闇の奥から、重い音が響いた……
「なんだ? 今の音は…トガ君見に行こう。」
「え! 行くんですか?」
「胸騒ぎがする……」
「だったら尚更、自衛隊の人呼びに行きましょう!」
「いや、彼らも忙しくて疲れている。ぼくらで解決できることは、ぼくらで解決していこう。」
行動力ある系ニートだったか……
まあ、いちいち呼びに行くことでもないか
数時間後、ぼくはこの選択を後悔することになる。
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