おんじゃあさん

私が小学生の頃。

風邪で欠席した翌日、教室に入るとある言葉が飛び交っていた。


「おんじゃあさん」


聞き慣れない単語。少しワクワクするような、寒気を感じるような不思議な響き。

席に座ると、隣の子が私の気にしている素振りを察してか、話しかけてきてくれた。


「F君!昨日休んで正解だったよ。S先生がめちゃくちゃ怖い話してさ〜」


そう言って、その子が前日にS先生がした「おんじゃあさん」の話を語って聞かせてくれた。のだが、当時の記憶がおぼろげで、おんじゃあさんという話を聞くと何が起こるのか?という部分しか覚えていない。


①おんじゃあさんの話を聞くと、家に兵隊の霊が訪ねてくる


②おんじゃあさんは夜、自分の居る部屋の窓をノックしてくる


③ノックをされたら、その窓を少しだけ開けて④の言葉を唱えなければならない


④おんじゃあさん、おんじゃあさん、ようこそおいで下さいました

おんじゃあさん、おんじゃあさん、どうぞお帰りください


⑤おんじゃあさんの話の効力は一週間続く

話を聞いた人間の内、誰の所に行くかは分からない

だから皆さん、この一週間は気をつけて下さい


という風に締めくくられたらしい。

当時から怖い話は好きだったので、聞き逃した悔しさを感じたのを覚えている。

その日は一人、蚊帳の外にいる気分だった。


✳︎

翌日、一人の男の子が泣きながら登校してきた。

クラスの全員が心配して駆け寄る。どうしたのか?と聞かれる前にその子は言った。


「おんじゃあさんが来た」


クラスは騒然となるかと思ったが、その逆。

しんと静まり返った。

涙を拭きながら、その子は途切れ途切れに話し始めた。


その子は夜眠る前にトイレに行ったらしい。

するとコンコン、と窓を叩く音が聞こえた。

その子はおんじゃあさんが来た。と思いS先生の話した約束事を守ろうとしたが、恐怖でしばらく体が動かなかったらしい。

早くしないと…と思っていると、バンバン!と先ほどよりも強く窓を叩く音が聞こえたそうだ。

何かがぶつかったのではないか?と口を挟んだ生徒をその子は否定した。

手の平ですりガラスの中腹を叩いているような音だったのに、その手が見えなかったと言うのだ。

その音に急かされるようにして、ようやく体が動き、少しだけ窓を開け、その子は震える声で④の言葉を唱えたそうだ。


✳︎

以上が、私が覚えているおんじゃあさんという怪談を聞いたクラスで起こった出来事です。


当時は家にネット環境が無く、S先生が聞かせてくれた怪談はネットに転がっているよくある怪談話に上手く脚色を加えた物ばかりだった。ということに気付くのですが、

この「おんじゃあさん」という話だけは、どれだけ調べても出てきません。

似たような話も出てきません。

この怪談を聞くとどういうことが起きて、どうしなければならないのか。は覚えているのですが、その引き金になる部分を私は聞けていないのです。

おんじゃあさんという怪談をご存じの方がいらっしゃいましたら教えてほしいです。


追記

この文章を書き終えた後に思ったことですが、引き金になる話の部分は存在しなくて

「おんじゃあさん」という言葉が引き金になっている可能性があるのでは?

とか考えてしまいました。まあ、あくまでひだり手の妄想ですので、お気になさらず。

もしそうだったとしたら、ごめんなさい。

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