第14話 女剣士レンティの完全超悪
懐かしい彼女の声と、肌に感じる焼けつくような爆発的な魔力の奔流。
そのとき、レンティは全てを悟った。
「……『
それは、自分とリアンが挑み、敗れたダンジョンのボスモンスターの名だ。
人の魂を喰って肉体を支配する、実体を持たない憑依寄生型の悪魔種モンスター。
「おまえが、全ての元凶だったんだな」
「…………」
彼女の声をしたレオンを、レンティは憎々しげな目で見つめる。
それに対し、レオンはクビに刃を残したまま、反応を返さずに無言を貫いている。
「レオンは『試練』をクリアできていなかった。おそらくはリアンの体を乗っ取っていた『死喰いの悪魔』と戦い、そして、最終的にその身に憑依された」
レオンが携えている、リアンの剣。
彼がそれを持っていることから、レンティは当時の状況をそう推測する。
自分とリアンが挑んだ時も、このボスは別の冒険者の体を使っていた。
次から次に体を乗り換え、魂を喰って生き永らえる醜い怪物。それがこいつだ。
「わたしにしてきたことは全て、わたしの体を乗っ取るための準備だったってことか。全部、納得がいったよ。納得がいきすぎて、自分のバカさ加減がイヤになる」
悪魔にとって、負の念にまみれた魂は大層なごちそうらしい。
今まで抱いてきた罪悪感も、怒りも、悔しさも、全てはこいつの狙いの内だった。
そうと知らずに、自分はレオンの言う通り哀れな道化を演じていた。
それは結局、目の前のボスに『よりよい餌』として飼育されていただけのこと。
「……ふざけやがって」
悔しい。あまりにも。
目の前の悪魔より、レオンより、いいように扱われてきた自分に腹が立つ。
「おまえだけは絶対に許さない。おまえだけは――」
「…………」
半ばから折れた剣をきつく握り締めて猛るレンティに、だが、レオンは無言。
それが、レンティの怒りの火に油を注ぐ。
「何か言ったらどうなんだッッ!」
レンティが怒号を炸裂させる。
すると、レオンの体に巣食うものが、やっと口を開いた。
「……そう思われても、仕方がないよな」
泣きそうな声だった。
「…………な」
その反応はレンティにとっても想定外だった。
目を見開く彼女の前で、レオンの姿をしたものはリアンの声で何かを言い始める。
「おまえの言う通りだよ、レンティ。ぼくはおまえを苦しませてた。全部、ぼくがやったことだ。でもそれは、おまえの体が欲しかったからじゃない……」
その物言いは、まさしくリアンのものだった。
あの敗北から今日までレンティが模倣し続けてきた、リアンの口調に間違いない。
「見ての通り、今のぼくは兄貴の体を乗っ取ってるモンスターだ。ぼくは『死喰いの悪魔』に体を乗っ取られたけど、魂を逆に喰い返してやったんだ。だから、ぼくはぼくだ。でも、人間ではなくなった。今のぼくは『死喰いの悪魔』でもあるんだ」
「そんな言葉を、信じろ、と……?」
「信じてもらえるとは思ってないよ。でも、知ってほしかったんだ。どうしても」
リアンの声をしたものが、レオンの顔で力なく笑う。
悲しげな雰囲気がレンティにも伝わってくる。その気配には、覚えがあった。
「……リアン」
自分の力が及ばず被害が出てしまったとき、リアンが漂わせるものと同じだった。
レンティが、構えを解く。そして震える唇が、弱く言葉を紡いだ。
「本当に、リアンなんですか……?」
レンティの口調が、本来のものに戻る。
「うん、ぼくだ。レンティ」
それに応じる声もまた、いつか聞いた相棒そのもので。
レンティの肩が震え出す。彼女の瞳が、これでもかとばかりに大きく開かれる。
「だけど、今のぼくは『死喰いの悪魔』としての側面もある。だから言い出せなかった。自分がモンスターになってしまったことを言えなかった……!」
「リアン……」
「許してくれとは言わないよ。ぼくはおまえを苦しめてきたから。人でなくなったぼくは、そういう形でしかおまえの関心を引けない存在になってしまったから……」
俯いて、どんどんと声を小さくするレオンの姿をしたもの。
しかし次の瞬間、顔を上げて自分を見るその瞳に、レンティの心は揺さぶられる。
「……ぼくを、助けてくれ、レンティ」
「リアン!」
苦しそうに声をかすれさせて、低く呻くリアンに、レンティは駆け寄った。
レオンの姿をしていようと、もう関係なかった。
目の前にいるのは、相棒のリアンだ。
リアンは帰ってきてくれた。あのダンジョンでの約束を守ってくれた。
そう思おうとした。
そう思いたかった。
そうとしか思えなかった。
「ああ、リアン。リアン! 帰ってきてくれたんですね、リアン!」
「当たり前だろ。おまえとの約束、ぼくだって忘れてないよ」
レオンの体が血にまみれているのもお構いなしに、二人は抱きしめ合う。
彼の体は冷たいが、レンティの背中に回された腕に相棒のぬくもりが感じられた。
「こんな形での再会になってごめんな、レンティ」
「いいんです。わたしは、全然構いません。だってあなたは、約束を守ってくれた」
「守るさ。ぼくにとっても、大事な約束だったから」
リアンがそう言ってくれる。
それだけで、レンティはこれまでの苦労が報われた気がした。
これまで、レオンが自分にしてきたことも、全てはリアンがやったことだった。
本当のことを言い出せない彼女が、レンティに送り続けたメッセージ。
そう思えば、今日までの苦労もむしろいとしく思えてくる。
仮に、今後も周りが自分を『場違い』として扱うのだとしても、苦にならない。
自分の隣にリアンがいてくれるのであれば――、
「……レンティさん?」
そこに、声がした。
それはリアンもレンティも知っている声だった。
だが、こんな場所で聞こえるはずのない声でもある。
あり得ない事実に戸惑いを覚えたレンティは、ゆっくりと後ろを振り向いた。
「――ハナコ」
風が流れる夜の城壁。
自分とリアンしかいないはずのそこに立っていたのは、逃亡奴隷ハナコだった。
「ど、どうして……?」
「ごめんなさい、レンティさんのことが心配で、追いかけてきたんです」
ハナコは、その顔に怯えの色を浮かべながらも、そう言ってくる。
彼女がここに現れた事実に、驚愕したレンティは何も言えずに立ち尽くす。
「……その人」
ハナコが、視線をレンティから少しずらす。
レンティはドキリとした。後ろに立っているリアンの首には、刃が残ったままだ。
彼女の危惧通り、ことを察したらしきハナコが、みるみるうちに顔を青くする。
「何で、生きて……?」
「違うんです、ハナコ。この人はその……!」
「レンティ」
何とか言い訳を捻り出そうとするレンティに、後ろからリアンが声をかける。
再び彼女の方を向くと、差し出されたのは、レオンが使っていた剣。
「……リアン?」
すぐには意味がわからず、レンティは剣を見て、次にリアンを見る。
レオンの姿をした相棒は至極真剣な表情で、こう言った。
「あの奴隷を斬るんだ、レンティ」
「な、何を言って……!?」
信じがたいその言葉に、レンティは息を呑む。しかしリアンは本気だ。
「この先、おまえとぼくが一緒にやっていくには、ぼくがモンスターであることを知られちゃいけない。見られたからには、生かしておくことはできないだろ!」
「…………ッ」
リアンの言っていることを、レンティは衝撃と共に理解する。
そうだった。今のリアンは『死喰いの悪魔』でもあるのだ。モンスターなのだ。
「レンティ……!」
リアンは彼女の名を呼びながら、すがるような目を向けてくる。
その必死の顔つきと声に、レンティの心が震える。その目を、剣に釘付けにして。
「……あの、レンティさん?」
そして、今度は後ろからハナコの声が聞こえてくる。
振り返ることは、できない。彼女にどんな顔をすればいいのかがわからない。
「本当に殺すしかないのですか、リアン。彼女は何もしていない……」
「ああ、何もしていない。ただの逃亡奴隷だってことは知ってる。けど、ぼくのことを知ったんだ。おまえ以外は誰も知っちゃいけない、ぼくの秘密を」
わかる。リアンの言っていることはわかる。
彼女の秘密は、自分以外は知ってはならない禁忌。他人に明かすことはできない。
それがレオンの仲間であっても、ニコやリップであってもだ。
レンティだからこそ、リアンは教えてくれた。自分のもとに帰ってきてくれた。
これ以上ない深いしわを眉間に作って、レンティはきつく目をつむる。
そして折れた剣から手を離して、震える指先をリアンが差し出した剣に近づける。
「レンティ――」
すぐ近くから、リアンがホッと安堵の息を漏らすのが聞こえる。
「ぼくを、助けてくれるんだな」
「リアンを、助ける。わたしが……」
助ける。そうだ、助ける。
自分とリアンが冒険者になった理由は、まさにそれだったじゃないか。
困っている人間を助けるために、自分と彼女は冒険者になった。
今まさにリアンが困っている。だったら、それを助けるのが自分がすべきこと。
おかしくはない。
何も、おかしいことはない。
「…………」
レンティが、リアンから剣を受け取る。
そして、改めてハナコの方へと向き直った。
「……ぇ? え?」
ハナコは、自分に迫る危機を察してか、胸の前で両手を握って身を縮こまらせる。
恐怖という感情を全身で表す彼女を、レンティはこれから斬らねばならない。
「……ごめんなさい、ハナコ」
かすれ声で謝りながら、レンティはゆっくりと彼女に近づいていく。
その一歩の、何と重たいことか。
ハナコまでは十歩分も離れていないのに、体が鉛のように重たい。前に進めない。
それでも、リアンのために。リアンを助けるために、自分は――。
激しく呼吸を乱し、揺れる視界の中できつく歯を食いしばって、一歩、また一歩。
目に涙を浮かべているハナコに、レンティの心は激しい呵責に苛まれる。
そんなものを感じる資格、自分にはないだろうに。
まるで、自分こそが被害者のような感覚だ。本当に反吐が出る。
「わたしを恨んでくれて構いません、ハナコ」
恐怖に凍えて動けなくなっているハナコに告げて、レンティは長剣を振り上げた。
リアンのために。リアンのために。リアンのために。リアンを助けるために。
「レンティ、やってくれ! レンティ!」
リアンの切迫した声が夜の城壁に響き渡る。
わかっている。やるべきことは、わかっている。自分はリアンを助ける。助ける。
「……レンティさん」
ハナコが、恐怖に歪んだ顔でに自分を見上げている。
彼女は何も知らない。レンティとリアンの事情も、何故自分が殺されるのかも。
本当に、何も知らない。
ただ、レンティのことを心配して、追いかけてきただけ。それだけだ。
「わたしは、わたし、は……」
掲げた切っ先はみっともないくらいに震えていた。深い懊悩が彼女の行動を阻む。
それを見て、リアンがまた大声で呼びかけ、訴えてくる。
「レンティ! また一緒に冒険しよう! 今度こそ、ぼくとおまえで『勇者』になろう! だからそのためにその奴隷を殺してくれ! ぼくを、助けてくれ!」
「リアンを、助ける。……わたしが、リアンをッ」
レンティの唇から血が一筋零れ、切っ先の震えが止まる。
一思いにハナコの急所を切り裂いてやる。せめて、苦しまずに殺してやる。
そう思った矢先、レンティの耳にハナコの呟きが届く。
とても、とても弱い、恐怖に震えた声で――、
「……誰か、助けて」
…………。…………。…………。…………。…………。…………嗚呼、
「――――」
レンティの体から、殺気が引いた。
それを、リアンは敏感に察したようで、みたび叫んだ。
「何をしてるんだよ、レンティ! どうして剣を振り下ろさない!?」
「……リアン」
「ぼくを助けてくれるんじゃないのか! その奴隷を殺すことが、ぼくを助けることなんだってわかってるだろ! だから、殺してくれ! その奴隷を早く、殺して!」
リアンの叫びは切実だ。余裕はなく、必死になってレンティに頼み込む。
わかっている。リアンの状況をレンティだってわかっている。でも、だけど――、
「……今、ハナコが言ったことが聞こえましたか、リアン」
「何がだよ!?」
「この子は今、言ったのです。『誰か、助けて』、と」
「それが何だよ! そんなのが、一体どうしたっていうんだ! だから何なんだ!」
リアンが、絶叫にも等しい声量で怒鳴る。
だが、それに対するレンティの返答は、さらに大きな声だった。彼女は答えた。
「何も『そんなの』じゃないッ!」
「…………ぇ」
リアンの勢いが、そのレンティの咆哮によって挫かれる。
「わたしは、わたし達は、この子のような人を助けられる『誰か』でありたいから冒険者になったのではありませんか! だったら『そんなの』じゃないでしょう!」
訴える。訴え返す。
レンティはリアンへと振り返って、涙ながらに強く、強く訴えていく。
「これは、違う。これは絶対に違います。これは、わたしとあなたがしようとした『人助け』なんかじゃない。単にハナコの口を封じようとしているだけです!」
「…………」
まさかのレンティからの反論に、リアンは一秒弱、呆気にとられた。
しかし、すぐにその顔に怒りの色が浮かび、逆に言い返す。
「そうだよ、口封じだよ。そんなの、言われるまでもないことだ!」
「リアン、ハナコはわたしが説得します。だから口封じなんてしないでも――」
「そんなこと言って、おまえは自分の手を汚すのがイヤなだけなんだろ」
「な、そんなことは……!」
「だったら殺せよ! そしてぼくを助けてくれよ! そんな奴隷よりも、ぼくのことを助けてくれよ! ぼくが今、どれだけ必死になってるか、わかってるだろ!」
悲痛だった。
リアンの声も、様子も、まさに追いつめられている者のそれだった。
「……リアン」
レンティは、どう返せばいいのか迷った。
彼女の言っていることもわかる。その必死さは、しっかりと伝わってくる。
「なぁ、レンティ。おまえがさっき言ってた『人を助けられる『誰か』になりたい』なんて、ぼく達が何も知らない子供だったときに描いた夢だよ。絵空事だよ」
「……そんな、リアン」
まさかと思った。
リアンが、あのリアンが、そんなことを言うなんて。
「ぼくもおまえも子供じゃいられない。ぼくなんて、この通りモンスターになっちまった。昔に願ったきれいごとなんて、いつまでもこだわっていられるモンか。ぼく達は、今のぼく達に合った生き方をしなきゃダメだろ! わかるだろ!」
悲しいことを、リアンは言う。切実に。そして、叩きつけるようにして。
ああ、確かに違う。今と昔とでは、何もかも違う。
自分は身を落として『場違い』となり、リアンはモンスターと化してしまった。
「それでもおまえが『誰か』を助けたいっていうなら、それはまずこのぼくであるべきだろ! レンティ、お願いだから助けてくれ! ぼくを、このぼくをだ!」
リアンの叫びに、レンティの心は揺らぎ、決意もその輪郭を朧にしていく。
自分は間違っているのではないか。そんな疑念がどんどん胸の内に膨らんでいく。
「……それでも」
だが、レンティはハナコを庇うようにして、リアンと相対する。
その手に、リアンの剣を握ったままで。
「――どうしてだ、レンティ?」
頑なに自分を拒む相棒に、リアンは半ば絶句し、虚ろな声で問いを投げる。
未だ、胸中に激しい葛藤を渦巻かせ、それでもレンティは答えた。
「これが、あなたがわたしに教えてくれた生き方だからです」
思い出す、あのダンジョン。
死力を尽くしながらも及ばず、敗北しかけた二人は死を目前にした。
そのときに、リアンは自分に何をした。何をしてくれた。
「あなたは自らを犠牲にしてわたしを外に逃がしてくれた。それと同じことを、今度はわたしがハナコにしているだけです。それが、わたしの思う『人助け』だから」
「何だよ、それ。……何なんだよ、それ!」
リアンが顔を憤怒に染めて癇癪を起こす。
レンティは心底申し訳ないと思った。この裏切りは、死んでも償いきれまい。
「きっと、正しいのはリアンの方だと思います。わたしのやっていることは、現実を見ようともしていない、子供じみた愚かな選択なのでしょう。やっと再会できたあなたを裏切ったわたしは、本当に最低の人間です。でも、それでも――」
それでも自分はこの生き方を変えたくないし、変えられない。
例えそれが子供じみた幼稚な絵空事でも、理想しか見てないきれいごとでも。
「かつてあなたと語り合った、その取るに足らないきれいごとが、最も大切な『わたしの正義』なのです。わたしはそれを貫きます。わたしは、ハナコを助けます!」
バカでいい。お人よしでいい。愚かと呼ばれてもうなずいてやる。
そう在ろうと願い、そう在り続けようとした結果が、今の自分なのだから。
「だから、もうやめましょう。リアン。ハナコはわたしが説得します。この子はきっと納得してくれます。わたしが納得させます。だから、もう――」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァァ――――ッッ!」
突然の、天を仰いでのリアンの雄叫び。
あまりにも唐突で、レンティは驚きに身をビクリと震わせる。
「リ、リアン……?」
「もういいよ、レンティ。もういい。あ~あ~あ~あ~、もう心底どうでもいい」
リアンの態度が急変する。
さっきまでの切羽詰まった様子はなくなり、投げやりな物言いになってしまう。
「おまえが助けてくれないならいいよ、自分でやる」
「え……」
唖然となるレンティの前で、リアンの右手がゴキゴキと音を立てて変形し始める。
手は大きさを増し、指は長さと太さを数倍にして、指先に鋭い鉤爪。
「言っただろ、今のぼくはモンスターだ。武器なんかなくても、ほら、この通り」
「リアン、あなたは……ッ」
彼女はハナコを殺す気だと、レンティはすぐにわかった。
「ダ、ダメです! リアン、やめてください!」
「うるさいなぁ、裏切り者のクセにエラそうにぼくに命令するなよ。どうせ、おまえにはその奴隷は守れやしないよ。おまえ、とっくに体力尽きて限界だろ?」
リアンの言う通りだ。
今のレンティには、余力など微塵も残っていない。
「リアン、おまえに教えてやるよ。おまえの言う『わたしの正義』とやらが、どれだけくだらなくて意味のないものか。その奴隷を殺して、実感させてやる」
「やめて、やめてください! リアン!」
歩き出そうとするリアンへと、レンティが剣を向けようとする。
リアンが、ペッとツバを吐き捨てて、顔を歪める。
「何だよ、今度は自己満足のためにぼくを殺すのか? さっきみたいにこの首に剣を叩き込むのか? それで自慢げに『わたしの正義』を誇るのかよ、裏切り者が!」
「……何と言われようと、わたしは、ハナコをッ!」
「いや、もう十分だわ」
声。
後ろから。
「…………はい?」
レンティ。
そちらを振り向く。
「ンフ♪」
ハナコ。
とってもニッコリ。
「か、ら、の――、唐突にアハト・アハト!」
ズドッゴオオオオォォォォォォォォォォォ――――ンッッッッ!!!!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?」
砲撃。
爆音。
リアンの悲鳴。
砲弾は彼女の胸板を直撃し、はるか城壁の果てまで吹き飛ばした。
城壁が揺れている。大気が震えている。そして、レンティが呆けている。
「いや~、最高の『完全超悪』だったぜ、レンティ!」
そんな彼女へ、ハナコはすこぶる明るい笑顔でサムズアップして見せるのだった。
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