第2章 -1-
───数日後。
ピンポーーン♪(宅配でーす)
荷物の送り主は「ValtexNet」リバイブの開発元だ。
まさか!
荷ほどきしてみると、やはりVRゴーグルだった。
皆で申し込んだ無料モニター、まさか当選するとは!
すぐに共通チャットで報告した。
すると意外にも全員当選したらしい。
抽選じゃなかったんだ・・一瞬喜び過ぎた自分がちょっと恥ずかしい。
皆でボイスチャットしながら、開封の儀を共有する事にした。
「さて、箱の中にはVRゴーグルの他に説明書類と・・これ、全身タイツ?」
『ウケるー!何年か前に話題になったヤツだよね?あたしらまだ中学生くらいの時・・』
『これを着てプレイするのかなぁ?』
『拙者はサイズが心配でござるよ。』
「そういや宏は居ないのか?」
『宏くん、今日はボウリングに誘われたって言ってた。』
宏は付き合いの幅が広いからなぁ。
説明書を観ながら、一旦全裸になって・・全身タイツを着てみた頃、
茜から個人チャットに画像が送られてきた。
『一樹にだけ特別♡』
全身タイツを着た茜の自撮り画像だった。
スタイルは良いのだが、全身タイツが笑いを誘う。
『似合ってるよw』と返信した。
「そんじゃVRゴーグルを装着しまーす。」
『あたしもー』『わたしもー』『拙者もー』
こめかみ付近にあるスイッチを長押しすると電源が入った。
ここからは、目の前に現れたナビゲーターさんが説明してくれるらしい。
体を動かす事に集中する必要があるため、完全に独り状態になるのが望ましいというので、
皆とのボイスチャットは一旦終了した。
さて、ナビゲーターさんの指示に従い、ラヂオ体操のような運動をしたり、指先を使った手遊びのような事をしばらく繰り返した。
体の各部を動かした時の脳の反応をゴーグルが読み取り、個人の動作パターンとして記憶するそうだ。
一通りのトレーニングが終了する頃には汗だくになっていた。
蓄積したデータを最適化するのと、アプリケーションのアップデートに数時間要するというので、
スーツを脱いでシャワーを浴びた後、再び皆とボイスチャットで全身タイツをネタに盛り上がった。
そしていよいよ、reViveの世界へ没入する瞬間が訪れる。
VRゴーグルのみで、コントローラーは無い。
腕や足を動かそうとするだけで良いらしい。
サインアップすると、既にほぼ自分と同じアバターが用意されていた。
体格は全身タイツでスキャンされたのだろう。顔もゴーグルで読み取られてるのか・・。
予め決めていた「SASサーバー」を選択すると、仮想都市の一角に転送された。
賑わう街の中、回りには大勢のAIDたち?
首を左右に振りながら、辺りを見渡してみる。
ちょっと離れた所にキョドっている人が見える。恐らく彼も自分と同じ来訪者(ビジター)なのだろう。
茜や慎太郎、麻衣の姿は見当たらない。スタート地点は各自で異なるらしい。
『(練習)1st-Mission:手足を動かしてください。』
両手を動かしてみたり、足踏みしてみたりして、アバターの反応を確かめてみる。
指先の動きまで細かくトレースされている。
『(練習)2nd-Mission:今度は現実の手足は動かさずに、アバターだけを動かしてください。』
説明書には、独自に開発した「マインドセンス」という技術で脳波を読み取るので、手足を動かそうと考えるだけで良いとあった。
現実では手を動かさず、右手を顔の前まで上げようと意識してみた。
すると、ギクシャクしながらもアバターが右手を上げた!
凄い!凄く気持ち悪い!なんだコレ!?
ある意味、フルダイブじゃないか・・
脳がパニックを起こしそうになる。
一旦、ログアウトだ・・。
ほんの数分で激しくVR酔いしてしまった。
共通チャットでは茜も絶叫していた。
麻衣と慎太郎は既読が付かないので没入中だろうか。
薬箱に酔い止めの薬があったはずだ...。
「マインドセンス」という技術で、現実の体を動かさなくても歩いたりできるので、
椅子に座ってプレイする事を推奨されている。
ゲーミングチェアに深く座り、酔い止めの薬を飲んで、いざ・・・
さきほどの街中だ。
キョドっていたお兄さんだろうか。辺りを駆け回っているビジターがいる。
もうあんなに馴染んだのか?
『(練習)3rd-Mission:歩き回ってみましょう。』
よし、歩いてみよう。
右足を前へ・・(1歩動いた)
左足を・・(2歩目)
3歩、4歩と進んでみる。
酔い止め薬が効いているのか、さっきほど気持ち悪くはなかった。
左右を見渡す時も、実際に首を振らなくても良い。
徐々に自然に歩けるようになり、数分後には走り回れるようになった。
マインドセンス、スゲェー・・。
かなり自然に動けるようになった頃、最後のミッションが与えられた。
『(練習)Last-Mission:AI Dollと会話してみましょう。』
なるほど・・そうきたか。
周辺を行きかうAIDたちを、ざっと見まわしてみた。
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