2023/05/23埼玉県羽生市雨が降る川沿い

 この蛇生きてんのか?

「見た目じゃちょっとわからないかな。あ、そこに枝落ちてるよ」

 よーし、つんつん。あっ亡骸っすね。


 今日も雨ですね。そう深紅も言っている。昨日の豪雨とは打って変わり、静かな降雨が町を包んでいる。


 そんな中を俺とグランヴィルは歩いていた。


 川沿いのサイクリングロードをたどり、二人でのんびりと散策する。雨のおかげか全く人と会わない。たまに猫がこちらを睨んでいたり、蛇が死んでたりしたくらいだった。

「さっきの蛇、川を睨んで死んでたね。ぱっと見で傷なかったし、なにがあったんだろうね」

 何かと戦ってたんじゃないかと俺は思ったよ。勝敗はまぁ……本人たちにしかわからないだろうな。


 グランヴィルはスマホを覗きながらあちこちうろつく。カメラを向け、首を傾げては何も撮らずに唸っている。

「うーん、う~……うーん」

 さっきから何してんだよ撮影家。

「なんか良い画がなくって」

 映えないってこと言ってるのかな。そらまぁ曇りだし元々大したものがあるような場所じゃないし。

「映えは別にどうでもいい。琴線に触れるかどうかなの」

 どんどんこだわっていけ。こだわり貫けてるうちは趣味って最高に楽しいからな。


 遅めの昼飯、ラーメン屋じゃい。ところで今何時じゃ?

 グランヴィルが隣の席で不審者を見る目で見てくる。

「時間?えっと……14時37分」

 この店、15時で閉まるんですよ。店入って食券買った後に気が付いた。

「……さっさと食べてさっさと出ちゃおう。ちなみに何頼んだ?」

 汁なしまぜめん大盛。そっちは?

「つけ麺」

 どっちも茹でるのに時間かかるやつだから畜生!

 ……数分後。

 うん、おいしい!ぶっとい麺と雑に濃くてオイリーな味付けがジャンクでとても良い。チャーシューもでかくて柔らかくて。

「店員さんが窓のカーテン閉めてテーブル片付けはじめてるって!」

 量が多いんでちょっと待ってくださいスイマセン!


 あとちょっとで帰れるって所で、雨風強くなってきやがった。

「写真撮る余裕がないー」

 グランヴィルはビニール傘を正面に向けて、斜めの雨を防いでいるが、ローファーの足元はびしょびしょだろう。折り畳み傘さしてる俺は胸から下大体びしょびしょだった。

 田んぼのど真ん中のマジ何もない道、強い雨の中だと心もとないって印象が強くなる。こんな程度の雨で道がどうにかなったりしないとわかってるけど、なんか不安になってくる。

「見晴らし悪いせいかな。この道、無限に続いてるように見える」

 グランヴィルはビニール越しに道の先を見ながらぼやく。俺も彼女の傘越しに景色を見る。何もかもぼんやりとしていて、だからこそ想像の余地がある。ただ想像の翼を広げるには天気が悪いし傘は小さい。翼びしょびしょは嫌だ。

 風邪ひく前に帰ろう。昨日といい体冷やしすぎだ。


 自宅でこの日記を書きながら外を見ていた。雨は止まない。俺たち、あの中を歩いてたのか?天気が悪い日に歩くといつもそう考えている気がする。

 天気予報は見ていないが、明日はきっと晴れるだろうと思いながら、寝ることとしよう。

「じゃあ最後に一言いい?」

 グランヴィルが部屋のドアを開けてそんな事を言ってきた。いいよ、今日はそれで〆にしよう。


「姫様拷問の時間です、今回のすごい好き」






 


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