2023/05/08道具屋

 まぁ聞いてくれよ。

 今日なんやかんやあって知り合いの道具屋で店番してたわけさ。それ自体はたまに発生するから慣れっこだったんだけどもな、なんかおかしな勇者御一行の3人組が来たんだよ。


 何故か腹出してる盗賊。

 店の飾りのぬいぐるみに勝手に抱きついて話しかけた魔術師。

 比較的落ち着いている勇者。


 コイツらがギャハハと笑いながら店内ぐるっと回って会計しに俺のとこにきたから対応したのさ。いらっしゃいませー、と。で、俺が商品確認してる間に3人喋りっぱなしで、自然と会話が耳に入るのさ。


「おい盗賊お前なんで腹だしっぱなん?汚ねえって」

「いや魔術師何いってんの、見せてんでしょ世の中に。綺麗な肉体でしょ勇者さん」

「うるせえよバカ」

 そして3人でギャハハ。


 内輪で盛り上がってるところに入っていくのはいつでも勇気がいる。仕事だからやるしかないんだが。

 傷薬温めますか?

「……あっ2つともお願いします」

 皮袋有料ですがお付けしますか?

「……ウッス」

 年齢確認お願いします。

「……」(無言で指を指す)

 3人でバカ話してる時は店中に響く声なのに店員と話す時は蚊の鳴くような声になる。で、俺が袋詰めを始めた辺りでまたテンションが上がっていったようだった。


「やっぱ勇者さんみたいに必殺技欲しいですよね」

「まぁオレの技はすげえからな。そういえば僧侶の必殺技レーザーだってよレーザー。ああいうのもいいよな」

 盗賊と勇者がそんな事を言っていると、突然魔術師がハジけた。


「オレさぁ!!」

 魔術師が急に1段上の声量で叫ぶように喋り出した。ちょっとびっくりした。


「俺、黒魔術!黒魔術使えっから!黒魔術!な、黒魔術!」

 魔術師は若干ポーズをとりながら黒魔術!を連呼し出した。俺は袋詰めをしながら笑うのを堪えるべく下唇を噛んでいた。コレを書いている今もまだ下唇が凹んでいる。

 勇者と盗賊はそんなひとしきり笑うと、俺から袋を受け取って店を出て行き、馬車に乗って夜の闇に消えていった。


 まあ何が言いたいかというと、腹出して歩いてる奴と店のぬいぐるみに抱きついて話しかけ、黒魔術を連呼して帰って行った奴は確かに現実に存在したという事だけ今日はお伝えしたかった。

 これが俺の日常ってわけ(^^)v


PS,働いたお礼にと店主からローストチキンを頂きました。グランヴィルがとても嬉しそうでした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る