第28話 オッサン、ゲームショップに行く
*
――ティロンティロンティロン……
「いらっしゃいま――ッッホワァィィイ!!!?」
一世一代の気迫を込めて、ガチガチに緊張した顔でゲームショップに入店した私。
もしかしたら、この凶悪ヅラに拍車が掛かってるかも知れないけれど、今の私は全くそんな事に注意を割く余裕が無い。
「ハワァ!! ハワァア――!!! テロリストか!!」
私が入店した途端、騒然とする店内――子供を抱き寄せる親に、奥歯をガチガチ鳴らせてへたり込んだオタク……
過度の緊張で顔が凄まじく熱い……多分ヤカンみたいに煙が噴き上がっていると思われる。
「バッバクダンかぁああ!!!」
余りの集中で周りの声が聞こえない。だけどアフロの店員がやたら活気良く、跳ね飛びながら私に何か言っている事は分かる。
「うわあああなんだお前! うちの店に何の様だお前ぇえ!!」
「フォ……フォカァ……ッフォカヌポゥ!!」
「うわああああ異人ダァアアア!!!」
しまった。変な人だと悟られぬよう、無理に店員に話し掛けたのが裏目に出た。猛烈にドモってしまった……
「ぎいいいいいいああああ!!!」
それにしても、最近の接客は勢いがすごいなぁ。こうでもしないと、今の社会の生存競争に生き残れないのだろう。
店内から人が走り出していくなか、私は口の端から泡を吹きかけているアフロ店員に近づいていった。
「ぁう……の……」
「ひっヒィイいい何が狙いだぁあ、この店を好きにはさせんぞぉ! この店は私の全てなんだぁあ!!」
「……ぁの、今週……発売の『踊れ爆乳盆踊り』……ぁリマすかぁ」
「ヒィ!! ……ん、え……――ぁ、そ……それなら」
顔を引きつらせたアフロ店員が、背後の在庫棚から死に物狂いで商品を探し始めた。
――ふふん。どうだ、店員に話し掛けるだけでもすごいのに、今私は希望の商品のオーダーまで出したぞ。この姿はまるで引きこもりとは思えまい。何せ
「あの! はい、ここコレ!!」
――ふっ……来た来た。私の注文した商品を店員が見
「ち……チ……チ」
「え! え! あ、そちら、間違いようもなく疑いようもなく、今週発売の『踊れ爆乳盆踊り』でございますが。なな、何か不手際がありましたでしょうかーぁあ!!!!」
「チガウ!!!!!!」
「あんぎゃぁあああ、こええええええ!!!」
――確かに、確かにこれは『踊れ爆乳盆踊り』だが……っ
「ゲンテ……版……ジャ無い」
「げ、限定盤!!? まま、まことに申し訳ありませんガッ!! 『踊れ爆乳盆踊り』の限定版バチスティック付きは、とうの昔に完売となっておりま――」
「――――――ッッ!!!!」
「ぅわぁあああ!!!!」
余りのショックに、驚愕した顔を近づけ過ぎてしまった……いかんいかん。大丈夫、落ち着け、落ち着くんだクルミ。私の欲しいゲームは他にもある。
「――――アのオオオオオオオッッ!!!!」
激しい地鳴りに揺れる店内。落下する商品。
あれ……?
「あの……店員…………さん?」
「――――――……」
アフロ店員が、急に糸が切れたみたいにぐったりしてしまった。心ここにあらずといった様子で、一点足元を見つめている。どうしたのだろう?
すると彼はアフロを
「もぅ……全部……全部あげます」
――――なんでだ!!?
シクシク泣き始めたアフロ店員は、自分の心臓に手を当ててうなった。
「持っていってください……私の全て。そしてこの命さえも……それでこの町が救われるのなら」
――――どうしてそうなる!!?
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