悪役の心得

ちーずけーき

プロローグ




この世界は私をこう呼んだ、『完璧な悪役』と...‥

人間共は勝手に私を軽蔑した

いいさ、この世界が私を『悪役』と認識するなら真の悪役になってやろうじゃないか

何だって私は無限の命を持っているのだから時間は沢山ある

何処まで私から抵抗できるかな?



「さあ、精々私の手の上で踊っておくれ、人間よ」






―――――こうして暗黒の中一柱ヒトリの悪魔が呟いた

――――――世界で最も恐れられる一柱ヒトリの悪魔

――――――――その名は暗黒帝 ベリアル

―――――――――――誰一人敵わなかった悪魔を怒らせた瞬間だった






◼◼◼◼





世界にとって『悪役』とはどう言うモノか

『悪役』と言うのは周りが作る

周りが悪と言えば悪になり善と言えば善になる

この単純なサイクルで悪役と言う演者は出来るのだ

私はその様な面白く無いモノをするつもりはないがそれ以外やることがないのが問題だ

久々に人間共に挨拶してくるか

私は座っていた髑髏の山を降り呟いた



「暗黒世界<破滅>夢見幻世界混沌」



ああ、魔術を使うのは何時ぶりか

ふふふ、私が人間界に言ったら卑しい下等種族共はどんな反応をするのでしょうねぇ

私の好物は人間が死ぬ間際に見せる失望した顔

思い出すだけで愉快ですね

では行きましょう、『最高の悪役』になるために

結局私も悪なのですから

私は人間界に入り人間が作った大聖堂と言うモノを壊しながら優雅に降り立った



「ふーん、人間如きが何で勝手に私の領地を荒らしているのかな?」




◼◼◼◼



私はエルネシア・リペア

エルネシア帝国の王女でもあり聖女でもある

9歳の時、私は聖力があると発覚して聖女になった

毎日がとても楽しかったけど...‥同時に孤独感があった

私は容姿、才能、権力、様々のことに恵まれたけど人々は私を『聖女』としか見ていなかった

国民達は私をよく崇めるけど結局は私の『聖女』としての立場しか見ていない

でも、そんな退屈を塗り替える事になるとは今の私は思っても見なかっただろう



私が何時も通り大聖堂で食事をしていると突然天井が吹き飛んだ



「ふーん、人間如きが何で勝手に私の領地を荒らしているのかな?」



驚く私の横で見知らぬ男性が声をかけてきた

彼は...‥驚く程美しくて、逆に恐ろしくなる程顔が整っていて黒髪に飲み込まれそうな真紅の瞳、笑っているのに背筋が凍るような笑み

この世界に黒髪赤目を持つ人物は...‥‥唯一人



「暗黒帝ベリアル」



太古の昔人間を大量虐殺した人物

聖書にも載っておりこの大陸でその名を知らぬ者はいない

彼は笑みを溢しながら中央にある女神、セレシア像を見る



「この像、鬱陶しいなぁ」



ベリアルは手を振りかざしセシリア像の頭を吹っ飛ばす

ベリアルは蕩けた笑みを浮かべ私の後ろにいる神官を見た



「絶望した顔、良いねぇ、私の好物だよ」



その笑顔だけで私達に絶望感を味わせるのは十分でした

私は...‥いけないことをしたのでしょうか?

女神様、どうか...‥助けてください

そんな私の願いがかなったのか私達に一筋の光が差し...プラチナブロンドの足元まで伸びた長い髪、サファイアを埋め込んだような澄んだ瞳、正しく彫刻のように美しい女神様が降り立ったのです

女神様はベリアルにビシリと指を差して言いました



「ベリアル様、浮気しましたね!?」



は?浮気?

女神様は呆れている私達を置き去りにしてベリアルに歩み寄りました

ベリアルはため息を吐きながら答えました



「何を言っているんですか?私は浮気した記憶もないし貴方との繋がりもありません」



「えぇ!?酷いですぅ、わたくし家出しますわ!!」



「ご自由にどうぞ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役の心得 ちーずけーき @04110411

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ