第24話

 夜になり、私達は横並びにベッドの上に座り、約束通りゲームを始める。


「久しぶりだから覚えてるかなぁ?」

「大丈夫だろ」


 ──ゲームを始めて数分後。少し下手になっていてゲームオーバーになってしまう。


「あ~……悔しい! 悠ちゃん、また同じステージ選んで」

「了解」


 ──ん~……悠ちゃんも久しぶりにやったから下手になってる? それとも考え事でもしてるのかな? 簡単にブロックが積みあがっていくように見える。 


 ──あ! もしかして私が久しぶりに隣に居るから照れていたりして? ふふふ、からかってみようかしら?


「悠ちゃん、ブロックが積みあがってるけど大丈夫?」

「あー……まだ大丈夫」


 反応が薄いってか、生返事? 考え事が正しそうね。


「なぁ、チー。変な事を聞いて良い?」

「悠ちゃんはいつも変な事を言っているので、いつでもどうぞ」

「あのな……人が真面目な話をしようとしてるのに、茶々入れるなよ」

「真面目な話?」

「うん。チー、って俺の事──好き?」


 な、な、な、な、何を言い出すんだこの人は!!!! 急にそんなことを言われて心臓がバクバクと、うるさくなる。


 落ち着け……落ち着くのよ千秋……あの照れ屋の悠ちゃんが、ダイレクトにそんな事を聞いてくるはずがない。だったらまず確認することは──。


「それって友達とか、幼馴染とかじゃなく恋愛対象として好きって事?」

「うん……そういうこと」


 え。嘘、嘘、嘘!! まさかのそっちなのぉ……あぁ……どうしよう……嬉しい……嬉しいけど、それって前に進むって事なんだよ、悠ちゃん。


 私は明らかに動揺してブロックを、どんどんと積み上げていく──私は悠ちゃんに忠告するため「ダメダメね。もしその答えが好きだったら、悠ちゃんどうするつもりなの?」と聞いた。


「どうするつもりって……責任取るよ」


 覚悟は決めてるんだね。だったら──。


「分かった」


 二人ともゲームオーバーになると、私はゆっくりコントローラーを床に置いて、体を悠ちゃんの方に傾けた。悠ちゃんもコントローラーを床に置き、私の方に体を傾ける。


「私……悠ちゃんのこと好きだよ。大好き」

「──え……嘘……」

「なんでこの流れで嘘つかなきゃいけないのよ」


 嘘と言いたい気持ちは分からないでもない。私もさっき信じられなくて嘘と思ってしまった。でも不満だ……不満だからフグの様にポッペを膨らませてやる。


「あ……そうじゃなくて信じられなくて……」

「なんで信じられないの?」

「いやだって……俺はダメダメな男だし、チーは人気者で高嶺の花だから……」


 悠ちゃんはこうやって、昔から自分の事を下に見る癖がある。私から見れば十分に魅力的なのに分かっていない。それに腹が立ち、私は両手を腰にあて鼻で深呼吸をする。


「まったくダメダメね……分かってない様だから、仕方なく教えてあげる。恥ずかしいから一回しか言わないからね。よく聞いてなさいよ」

「うん……」

「私のダメダメにはね。悠ちゃんに必要とされたい欲求が込められているの」

「え? 完璧なチーが俺に必要とされたい?」

「そう! 私はね、不器用だけど一途で優しい悠ちゃんの世話をするのが楽しいの! 悠ちゃんの嬉しそうな笑顔をみるだけで幸せなの。私にとって悠ちゃんは、今のままで十分に魅力的なんだよ」

「俺が魅力的……」


「あ!」と、私は声を出すと、悠ちゃんの顔を覗き込むかのように体を動かし「だからとって調子に乗らないでよ?」


「分かってるよ、チー。俺もチーの事が好きだから、嫌われる様な事をしないって」


 悠ちゃんがサラッと恥ずかしくなるようなことを言うので、私は体が火照ってしまう。そんな顔を見られたくなくて、サッと悠ちゃんから顔を背けた。


「突然、照れ臭くなるようなこと言わないでよ……」

「それはお互い様だろ?」

「なんのこと?」

「気付いてないなら良い。さて、ゲームの続きをしようか?」

「うん!」


 私達はゲームのコントローラーを手に取り、ゲームを再開する。


「──ところで恋人同士って何をするんだ?」

「えー……一緒に登下校したり遊んだかな?」

「それって今と変わらないんじゃ……?」

「あー……確かに。じゃあ──」


 私は恋人として進展した記念に何かを残したくて、ベッドの上にコントローラーを置き、悠ちゃんの顔に自分の顔をグイっと近づける。そして──チュッとホッペにキスをした。


 悠ちゃんのホッペから唇を離しても、柔らかい感触はまだ残る。私は今まで感じた事がないぐらいドキドキしていた。


「こういうのはどう?」

「あ~ッ!! やられた」

「どっちの話?」

「もちろん、ゲームの方だよ」

「なぁんだ……じゃあもう一度やろうよ」

「どっちの話?」

「もちろんゲームの方」

「なぁんだ」

「ほっぺとはいえキスなんて恥ずかしくて、直ぐに何度も出来る訳ないでしょ! ダメダメね」

「直ぐに? じゃあ──」

「それ以上さきは地雷だからね」

「ははは、やっぱり?」


 最後はやっぱりツンツンな私が顔を出してしまったけど、こういうやりたりが本当に楽しくて落ち着く……幼馴染という硬い殻を破ることで、今までよりもドキドキする事が増えるとは思うけど、いつまでも変わらない関係も残していきたいなって思うのであった。


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ツンツンしている幼馴染はダメダメな俺を甘やかす 二重人格 @nizyuuzinkaku

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