第21話
やってしまったぁ……私は久しぶりに風邪を引き、ベッドで休んでいる。私の両親も共働きで夕方まで戻らない。妹も学校で居ないから、家が凄く静かだ。
──悠ちゃん、元気よく学校に行ったかなぁ。そんな事を考えつつ私はまた眠りにつく。
コンコンコンとノックの音が聞こえてきて、私は首を傾げる。妹でも早く帰ってきたのかな?
「はい、どうぞ」
「チー……大丈夫か?」と、部屋の中に入ってきたのは悠ちゃんだった。悠ちゃん、御見舞に来てくれたんだ……ちょっと心細かったから嬉しい。
「うん、単なる風邪だから大丈夫だよ。ありがとう」
「なにか欲しいものあるか? 飲み物とか食べ物とか」
「昼まで寒かったんだけど、今度は熱くて……保冷剤が欲しいな」
「分かった。冷凍室を開けるけど良いかな?」
「うん、大丈夫だよ」
「分かった。待ってて」
俺は部屋を出て──直ぐに部屋に戻ってくる。
「チー、持って来たよ」
「ありがとう。おでこに乗せて」
私は目を瞑ったまま、悠ちゃんにお願いする。
「うん」
──すると「ヒヤッ!!」と、思わず大声を出すぐらいオデコが冷たくなる。その犯人は剥き出しのまま置かれた保冷剤だった。
「ど、どうした?」
「どうした? じゃないわよ! もしかして悪戯?」
「悪戯って何だよ」
「保冷剤はそのままじゃ冷たいの! タオルか何かで包んで乗せてくれないと……」
「あー……そうだったのか、ごめん」
「まったく……子供じゃないんだから、しっかりして頂戴ね」
「はい……」
悠ちゃんは床に落ちた保冷剤を拾い「じゃあ、タオル巻いてくる。脱衣所のところにあるかな?」
「うん、あるよ。くれぐれもその辺に掛かってるタオルを持ってこないでね」
「分かってるよ」
悠ちゃんはまた部屋を出て──白のハンドタオルに巻かれた保冷剤を持って来てくれた。
悠ちゃんはさっきの失敗で怖くなったのか、恐る恐る私のオデコにタオルで包んだ保冷剤を乗せる。そんな姿が子供みたいで可愛らしかった。
「気持ちいい……ありがとう」
「ほ……どう致しまして」
──少しの間、私は目を瞑り休んでいたが、悠ちゃんはまだ帰る気配がない。もしかすると、誰かが帰ってくるまでと居てくれるつもりなのかもしれない。私は今の気持ちを伝えたくて、目を開ける。
「どうした?」
「ん……早く治さないとなって思って」
「そうだな」
「そうじゃないと悠ちゃんに殺されちゃうからね」
「ひでぇな……」
「ふふ、冗談」
「分かってるよ。おやすみ、チー」
「うん」
素直じゃない私が顔を出したけど、気持ちを伝えられて良かった。早く治すから、また一緒に学校に行こうね、悠ちゃん。
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