第13話

 夜になり、俺達は横並びにベッドの上に座り、約束通りゲームを始める。


「久しぶりだから覚えてるかなぁ?」

「大丈夫だろ」


 恋愛の話ってどんなタイミングですれば良いのかな? 早い方が良い出しやすいのだろうか? でもあまり早過ぎても、不自然な気がする。ちょっと様子を見るか──。


「あ~……悔しい! 悠ちゃん、また同じステージ選んで」

「了解」


 このままではゲームして終わりそうなんだが、大丈夫か? 思い切っていま話しかけてみようか? でも何て切り出す? チー、お前好きな人っている? って聞くのか?


 ──んー……千秋に好きな人が遠の昔に誰かと付き合ってるよな? そんな噂、いままで来た事なし、千秋だったらちゃんと話してくれそうな気がする。


「悠ちゃん、ブロックが積みあがってるけど大丈夫?」

「あー……まだ大丈夫」


 千秋がもし好きな人なんて居ないよって答えたら、会話はそこで終了してしまうだろう。だったら──。


「なぁ、チー。変な事を聞いて良い?」

「悠ちゃんはいつも変な事を言っているので、いつでもどうぞ」

「あのな……人が真面目な話をしようとしてるのに、茶々入れるなよ」

「真面目な話?」

「うん。チー、って俺の事──好き?」


 言ってしまった!! 何て返ってくる!? ダイレクトに聞いてしまったからダメダメは確実かもしれない!!!


 ドキドキしながら返事を待っていると──千秋は無表情のままゲームをやり続ける。え!? まさかの放置プレー!!?


「それって友達とか、幼馴染とかじゃなく異性として好きって事?」

「うん……そういうこと」

「ダメダメね」


 あ、やっぱり言われた。千秋は無表情を崩さずゲームを続けているが──明らかに動揺しているのかブロックが、どんどんと積み上げていく。


「もしその答えが好きだったら、悠ちゃんどうするつもりなの?」

「どうするつもりって……責任取るよ」

「──分かった」


 二人ともゲームオーバーになると、千秋はゆっくりコントローラーを床に置いて体をこちらに傾けた。俺もコントローラーを床に置き、千秋の方に体を傾けると返事を待った。


「私……悠ちゃんのこと好きだよ。大好き」

「──え……嘘……」

「なんでこの流れで嘘つかなきゃいけないのよ」


 千秋は不満げにそう言って、フグの様に可愛らしく頬を膨らませる。


「あ……そうじゃなくて信じられなくて……」

「なんで信じられないの?」

「いやだって……俺はダメダメな男だし、チーは人気者で高嶺の花だから……」


 千秋は俺の返事を聞いて呆れたのか、両手を腰にあて鼻で深呼吸をする。


「まったくダメダメね……分かってない様だから、仕方なく教えてあげる。恥ずかしいから一回しか言わないからね。よく聞いてなさいよ」

「うん……」

「私のダメダメにはね。悠ちゃんに必要とされたい欲求が込められているの」

「え? 完璧なチーが俺に必要とされたい?」

「そう! 私はね、不器用だけど一途で優しい悠ちゃんの世話をするのが楽しいの! 悠ちゃんの嬉しそうな笑顔をみるだけで幸せなの。私にとって悠ちゃんは、今のままで十分に魅力的なんだよ」

「俺が魅力的……」


「あ!」と、千秋は声を出すと、俺の顔を覗き込むかのように体を動かし「だからとって調子に乗らないでよ?」


「分かってるよ、チー。俺もチーの事が好きだから、嫌われる様な事をしないって」


 俺がサラッとそう言うと、千秋はカァァァ……と頬を赤く染め、サッと俺から顔を背ける。だけど覗き込む姿勢がアダとなり、しっかり可愛い表情を拝ませて貰った。


「突然、照れ臭くなるようなこと言わないでよ……」

「それはお互い様だろ?」

「なんのこと?」

「気付いてないなら良い。さて、ゲームの続きをしようか?」

「うん!」


 俺達はゲームのコントローラーを手に取り、ゲームを再開する。


「──ところで恋人同士って何をするんだ?」

「えー……一緒に登下校したり遊んだかな?」

「それって今と変わらないんじゃ……?」

「あー……確かに。じゃあ──」


 千秋はベッドの上にコントローラーを置いたかと思うと、俺の顔に自分の顔をグイっと近づける。そして──チュッとホッペにキスをした。ホッペと腕に柔らかい感触が残り、俺は間違いなく動揺する。


「こういうのはどう?」

「あ~ッ!! やられた」

「どっちの話?」

「もちろん、ゲームの方だよ」


「なぁんだ」と千秋は残念そうに言って「じゃあもう一度やろうよ」と提案してくる。


「どっちの話?」

「もちろんゲームの方」

「なぁんだ」

「ほっぺとはいえキスなんて恥ずかしくて、直ぐに何度も出来る訳ないでしょ! ダメダメね」

「直ぐに? じゃあ──」

「それ以上さきは地雷だからね」

「ははは、やっぱり?」


 遠回りはしてしまったけど、こうして俺達は幼馴染という硬い殻を破り、付き合い始める──付き合ってからも千秋は相変わらずツンツンしていたが、ダメダメねと俺を甘やかしてくれた。俺はそんな千秋の事をいつまでも愛おしく思った。


───────────────

後書き

──────────―――――

次話からヒロイン視点になります!

ヒロインがどんな気持ちでいたのか! お楽しみ頂けたら幸いです!

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