第27話 エイプリルフール

 4月1日。

 今日も俺は、あやかし古書店でバイトだ。

「やあ、おはよう」

「? こんばんは」

 角を1本生やした小さな鬼が来店した。

「僕は本を探していないよ」

 そう言いつつ鬼はキョロキョロと本棚を見ている。

 どう見たって本を探しているようだけど。

「そいつは天邪鬼。嘘を吐く妖怪さ。今日のイベントにぴったりだろう」

 確かに今日はエイプリルフール。

 嘘を吐いても許される日だ。

「その天邪鬼は、本当は無口で、あまり嘘を言わないようにしてるんだが、今日は嘘解禁だから、満を持して喋るよ」

「『動物合格』は読みたくないよ」

「ええっと、これは嘘だから、本当は本が読みたくて……。動物、合格?」

 動物の反対は人間、合格の反対は……。

「分かりました! 太宰治の『人間失格』ですね!」

「違う違う」

 そう言いつつも天邪鬼はお会計をしてくれた。

「もう来ないよ」

「ありがとうございました~」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る