第356話 ファンシーな中ボス部屋


そんなこんなで、ようやく10階である。


「魔法少女以上のお題が待ってるのか…」


オークを倒し終わったら魔法少女が解除されてオークのドロップしか残らなかった。


あのステッキ欲しかったなぁ。主に錬金術素材として使いたかった。


そんなお疲れグレイが、嘆きながらお題を読んだ。


「登場人物になりきってモンスターを倒せ……だと!?」


「キュー」


なりきり要素多いね。というヤクシの言葉に、ちょっとピンときた。


「うにゃにゃー?」


もしかして、こういうの有るから職業取得の時に無駄に上手い人が居たとか?


皆がハッとした。職業を得るときの演劇仕様で、無駄に上手い人が複数人居たのだ。


ついでに個人でも取得場面を動画で撮ってる人がいて、無駄に慣れてる感があった。


『ダンジョンさんはー探索者でー遊びすぎだと思うのよー』


「それな」


やっぱり遊ばれてるんだ……そして今、その洗礼が俺達にも!


「にゃぁ?」


で、配役は?


「桃太郎と犬、猿、雉らしい」


「にゃ!」


我猫であるからして!


「俺に言われても……」


うむ、まぁ、そうだよな。いや、でもどうなの?ワンワンとか言えないが?ヤクシもキューなんだが?マリモちゃんなんか念話だぞ?


「なぁうなぁうなぁうなぁう」


「ワンワンには聞こえないぞ?」


『鳴き声はー諦めるしかないねー』


ふむ、なら尻尾をブンブン振ってりゃ……あれ?あいつらどうやってあんな高速で尻尾ブンブンしてるんだ?


尻尾がゆらんゆらんしかしない!


「とりあえず、入ってみれば何とかなるだろう」


グレイは女装&コスプレじゃなかっただけで、楽天的だ。グレイ的にはコスプレとかが嫌なのではなく、ダンジョン内で防御力に不安がある格好をするのが嫌なのらしい。


というわけで、何となく予想は出来てたが、モンスターはオーガだった。急にモンスター強くなりすぎ問題である。


ただ、桃太郎演技をしていた場合、オーガに特効が入る仕様となっていて、演技を出来なかった場合のみ通常オーガの強さになっている……と鑑定が出た。


因みに、10階中ボスはお題が討伐系となっていて、どんなモンスターでも確定で美白美容液セット(化粧水、乳液、クリーム)を出す。


「我こそは桃太郎!悪さをする鬼を退治に参った!観念せい!」


ビシッとポーズを決めたグレイを見てから怒り出したように叫ぶオーガ。ちゃんと特効が発動している。


……いや、普通にオーガ倒せるけどね?特効発動させる意味はないんだけど、ずっとお題をやってると、やっとかなきゃいけない気持ちになってくるんだ。


ただ、犬のように攻撃が噛み付く主体じゃないのは判定がどうなってるかわからない。


俺がひっかいて、マリモちゃんがひっかいて、ヤクシが体当たりしてるのだ。


グレイは桃太郎になりきって、ハァ!とかヤァ!とか言いながら剣で攻撃してる。



ただ、部屋の壁紙が白地にアクアマリンの水玉なので途轍もなくミスマッチである。

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