第204話 やるか、やらないか

ミロクは膝に足をかけて僕のアゴに頭をぐいっと押し付けてニャァンと鳴いた。意味の無いただの鳴き声は久しぶりで可愛いし、全力で誤魔化しにきてるから誤魔化されてあげよう。



さて、マリモちゃんが取り出した本は助かるけど大問題だった。


1冊目はまだマシで、職業の特徴とレベルごとの職業効果、上位職業の分岐に必要なスキル等が詳しく書かれてる攻略本みたいなものだ。


高村さんの仕事が一気に減った。


問題はもう一つの本だ。


「正式雇用のすすめ?」


『小ダンジョンでー職業取得してない人がー正式に職業取得できる方法を書いたやつー』


え、僕らってダンジョンに雇用されてたの?


「にゃぁ?」


『雇用されても働かないぞ?』


「探索者は個人事業主分類なのでは?」


「キュー」


『ダンジョンさんはセンス無いから題名に意味はないよね』


ミロクとグレイはボケちゃったし、ヤクシは辛辣だね。


『ざっと読んだけどー職業別で書いてあるからー周知がめんどうなのーマリモちゃんやりたくなーい』


「えぇ、それはこちらの仕事ですね、ありがとうございます!」


高村さんの仕事がだいぶ減った。


高村さんはウッキウキで本を開いたけど、次の瞬間フリーズして、勢い良くページをめくりだし、とあるページを見つけて読み始めた。


たぶん自分の職業のところだろうけど、何が書いてあるんだろ?


「にゃ?」


『なんだろ?』


『マリモちゃんが見たのはー剣士だけどー小ダンジョンのボス部屋でー、ゴブリンに向かってー「我こそは(地方名)の勇者(名前)なり!我が聖剣エクスカリバーの光にひれ伏すが良い!」って全力でー演じないといけないんだってー』


「「「うわぁ……」」」


「キュー?」


『職業効果要らないのでは?』


「うにゃ」


『動物が正義!』


僕、正式に職業取得しといてよかったぁ!



ガタンと椅子を倒す勢いで、高村さんが立ち上がった………物凄く笑顔です。



「すみません、急遽小ダンジョンをぶち壊しに行かなければならなくなったので、ここまでで」


……いったい、何が書いてあったんだろう?高村さん、ちょっとパチパチいってない?帯電してる?


「ぶにゃ!?」


『おちちゅけ!?』


ミロクも落ち着こうか。というか翻訳って噛んだ翻訳するんだね。


なんかミロクのおかげで和んでしまった。


「……失礼しました。やはり猫はストレスに効きますね」


高村さんは結構特殊だと思うけど、否定も出来ない僕が居る。


「にゃ?」


『平気か?』


ミロクが前足で高村さんの腕をちょいちょい触っている。静電気が来ないかと恐る恐るだった。


高村さんはそれを見て、にやけた笑顔でミロクを撫でた。


「平気ですよ、大賢者は小ダンジョンのボス部屋でゴブリンを倒してから、雨乞いの儀式を……似非能力者風に行うことでした。ご丁寧に小道具まで用意して生け贄に魚を用意して、ロープで四角に囲って簡易結界のようなものまで作って、葉っぱの沢山ついた木の枝を振りながら自分で考えた雨乞いのセリフを全力で叫ぶそうです」



………ごめんなさい!ちょっと見たいかも!

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