第80話 タンクオジさんと猫


巻き込まれ事件から数日、ようやくご主人の胸のドキドキがおさまったのでダンジョン解禁。


一歩間違えたら、ご主人の知らないうちに俺たち死んでたって事実が結構なショックだったらしい。


気持ちはわかるが暇だった。人として1回死んだことある猫なので、仕方ない時は仕方ないと思うのだ。


まぁご主人のドキドキが再発しないように初心者ダンジョンに行く予定だ。草原ダンジョンでお猿の採取魔石ゲットしなきゃだし。


………なんかうっすら『いきたーい』って念が魔苔から来る。


テイムして初めての自己主張。



「うにゃ」


だが断るのである。猫は鉢植え持って移動出来ないので残念だったな!


因みに、コイツの名前はマリモちゃんだ。ご主人が霧吹きで水やりしながら言ってた。


「マリモちゃん元気に育ってねー」


もしやご主人、わかりあえるスキルでマリモと交信してないよな?


ちょっと怖いから聞かんでおこう。


というわけで、マリモちゃんはお留守番でヤクシと草原ダンジョンだ。まぁお猿の魔石ゲットしたら別のとこに行くんだけどな!


タンクオジさんに連絡してギルドで待ち合わせなんだ。


俺は5分前行動も出来る猫なので!


ちゃちゃっとお猿倒してギルドに行ったが、15分前だった。しかも既にタンクオジさんは来ていたのだ。


「にゃ!」


「おー、ミロクとヤクシ、久しぶり」


うむ、特別に撫でさせてやろう。さらふわだろぉ?


『これお礼、食べれ』


「本当に魔石でスキルとれんのか?まぁ食うけど」


ギルドの休憩スペースにてコーヒー飲んでたオジさん、魔石を渡すと食べた。


「蜂蜜味だな」


『スキル見てー』


ごっくんしたのを見て、免許で確認してもらう。


「うわ、マジで採取増えてる」


『採取、ご主人が魔苔の植え替えしてた。生きたままだからミロクがテイムしたけど気を付けてね』


「魔苔って分類上は植物モンスターだったはずだが?」


『魔苔は不思議、フォレストドラゴンの系譜っぽい。進化するとなるのか特殊な条件でなるのか、そもそもならないのかは不明』


凄くヤバそうなこと聞いちゃったって顔してる。


『魔苔の卵の特殊孵化にフォレストドラゴンあるのビックリした』


「そもそも魔苔の卵があんの!?」


『この前おっさんがたくさん持ってきた中にあった』


「………あぁ、あのやらかしの」



凄いな、おっさんの話したらスンッて表情消えたぞ!表情どころか感情すら消えてるかも!


「俺のパーティーのヒーラーが呼ばれたらしくて、めっちゃ笑いながら話してくれたわ」


あー、呪い解除したヒーラーさん!オジさんのとこの人か!世間は狭いな!


「呪われた剣が沢山あって、かかってた呪いがわんわんの呪いで高村さんの手前笑いを我慢してたけどヤバかったって」


俺も聞いたぞ。わんわんとかにゃんにゃんとかあったんだろ?ダンジョンのネーミングセンスは独特だな!


まぁ、そんなことはユニークスキルでわかってたことだ。


『ダンジョンさんのネーミングセンスはユニークスキルでお察し』


そう告げたら、ビックリ顔で俺を見てきた。


「お前ユニーク持ってんの?」


『ミロクだけでヤクシはないよ?』


「キュ?」


ヤクシも首をかしげてた。


「……探索者の中での噂って言うか都市伝説みたいな話なんだがな?ユニークスキルってダンジョンに目を付けられてる奴に出るスキルなんじゃねえの?って」



………ほほう?


『ご主人は目をつけられるようなことしてないよ?』


「いや、関係者にもコレ要る?って感じのユニーク付くことあるって話だぞ?」


確かに、ご主人のユニークはコレ要る?って感じだ!


「キュ!キュキュ!?」


ヤクシが慌てて自分はユニーク付いてないかと訊いてくる。


じーっ……


「にゃ」


寝相ヶ雑技団ってユニーク付いてた。


「キュー!」


なにそれー!って言ってるけど俺は納得した。


『なんか信憑性あるっぽい噂』



「だろ?まぁ、最初に言われたのが神木と高村のやらかしコンビだったんだけどな」


え、高村もやらかし?


「神木は言わなくてもわかるだろう?当時の高村は神木にキレてよくダンジョンで叫びながら雷ばら蒔いてたんだ……当時は俺も流れ弾で魔法ガードのスキル上げしたもんだ」


そんなしみじみ言われても!?おっさんの同期らへんの人達修羅ってない!?



ご主人世代違ってよかっ………身内だったなそういえば。

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