第180話 炎帝のブレスレット

「……そりゃそうか。南極の地下だもんな……」

「くそ……やっと見つかったってェのに……」

 3つ目の扉、人間界への最後の帰り道は南極の分厚い氷によって塞がれていた。


「アキラくん、約束だ。君たちは早く部屋への扉に向かいなさい!」

「……そんな」


『ゴゴゴゴゴッ!』

 その時、今までで1番大きい地震がダンジョンを襲う。


「キャア!」

 立っていることも難しいほどの大きい揺れ。ダンジョンのあちこちから火柱が立ち上る。


「ま、まずいぞ! この地震……まさか……」

 虎石は遠くの山に目をやる。

 アキラたちの部屋に繋がる扉のある山が崩れ落ちていく。


「しまった……! 君たちをもっと早く帰すべきだった!!」

「と、扉が……くそっ! なんてこった……」

 虎石たちは頭を抱える。アキラの部屋への扉は埋もれてしまった。


 ◇


 大地震が6人を襲う。いよいよ神を失ったダンジョンの最期は近いようだ。

 地割れが広がり、地面が沈み込む。


「チクショウ……ここまでか……」

 目の前に人間界に帰れる扉があるにもかかわらず、氷の壁に阻まれ、どうすることもできない。


 全員が諦めかけたその時――


「……私の炎魔法で……氷を突き破ってみます……!」

 花子が手につけた『炎帝のブレスレット』を握り締め言う。


「そうか……炎魔法! でも……もう使えないんじゃ!?」

 アキラは心配そうに聞く。アキラの剣もまどかの羽根もすでに消えてしまっている。


「『風神のピアス』も『聖なる弓』も消滅したんですけど、この『炎帝のブレスレット』だけはまだ残ってるんです。

 もしかしたら、あと1回くらい使えるんじゃないかと思って……

 南極の地下から地上まで……なんとか道を作れればいいんですけど……」


「やってみよう! このまま待っていてもどうすることもできない!」

「花子姉さん! お願いしますわ!」

「はい! フルパワーでぶち込んでやりますよッ!! 私が気絶しても置いていかないでくださいよ!?」


 花子は扉の氷に向かって手をかざす。

 花子を冒険者として成長させてくれた『炎帝のブレスレット』。

 アキラたちが最初に獲得したレア度★★★★★のアイテムだ。


「ふぅ……くらえぇえッ!」

 花子は1番使い込んできたアイテムの力を信じ炎を放つ。


『ゴゴゴ……』

 放たれた炎の矢が氷を溶かす。

 分厚い南極の氷と炎がぶつかり合う。


「花子さん……頑張れッ!」

「うぅ……硬いです……」

 南極の地中深くの氷の塊だ。簡単には貫けない。


「花子姉さん……いけぇぇぇえ!」


「はぁあああッ!」

 花子は最後の力を振り絞り火力を上げる。


『ガッ!』

 炎の矢が氷を突き破る音が響く。


「や、やったぁっ!!」

「はぁはぁ……し、死ぬぅ……」

 力を使い果たし倒れる花子をアキラが支える。


「花子さん……やったよ!」

「ふふふ……やはり最後の決め手は……私でしたね……」

「ああ! 花子さんは最高のプロデューサーだよ……!」


『炎帝のブレスレット』は砕け散っていた。






★★★★★★★★★

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