第167話 アイテムショップの店長

「ナオコーッ! どこだーっ!」

 ダンジョンではナオコを探し走り回る金剛寺。神の使いの反応から、この城にいるのは間違いない。

 次々と襲いかかるモンスターを斧でなぎ払いながら進んでいく。


 城の1番上の部屋、頑丈な扉の前に着く。


「はぁはぁ……ここか……? ここにナオコが……」

 扉に手をかけたその時、背後に気配を感じ、咄嗟に身をひるがえす。


『バンッ!』

 銃弾が金剛寺の頬をかすめる。


『へぇ、すごい反射神経だね』

 銃を持つ魔族が立っている。


「へっ、また魔族かい! お前がナオコを見張ってるのか?」

『ああ、あの女の監視が俺の仕事だよ』

「ふっ……やっぱりここにナオコが!」

『もうダンジョンを維持する力もなくなってきたみたいで必要なくなるけど、お前らには渡さないよ』

「ああ、とっとと終わらせてやるよ。

 俺は愛する女を20年も待たせちまってるからよ!」


 銃を撃つ魔族。金剛寺は構えから弾道読み斧で防ぐ。

 銃といってもただの銃ではない。魔力を弾丸の替わりに撃つ特殊な銃のようだ。


「くっ、このままじゃラチが明ねェな!」

 防戦一方の金剛寺。


「うおらぁぁぁあ!」

 手に持つ斧を魔族に投げつける。

 金剛寺の怪力で投げられた斧を魔族は避けきれない。


『ぐっ! ……貴様ぁ!!』

 魔族は怒りに任せ、銃を乱射する。


『バカめ! 自ら武器を手放すなんて! フハハ、素人か貴様は!』

 斧を手放した金剛寺に銃弾の雨が降りそう。

 壁や床の破片が煙となる。


「ふ、雑な攻撃だぜ!」

 煙の中から、金剛寺の声。

 煙が晴れると、盾を持った金剛寺が現れる。


『な……盾だと!? は! まさか!』

 魔族は金剛寺が腰が腰に付けた『アイテムポケット』に気づく。

『アイテムポケット』には無数のアイテムが収納されている。


『ふ……まさか斧使いが盾も使うとはな!』

「……斧使い?」

 金剛寺はニヤリと笑う。


『アイテムポケット』からは槍を取り出す。

『なに? 槍!?』

 槍で魔族を突く金剛寺。魔族の体からは青い血しぶきが飛ぶ。

 突然の槍での攻撃に、魔族はたまらず距離を取る。


『や、槍まで……!?』

「ガッハッハ! おい魔族、お前はなんもわかってねェみたいだな。

 人間のアイテムショップの店長は……どんな武器でも使いこなせるんだよ!」


 銃を打ち続ける魔族に金剛寺は槍を投げつける。

 槍が魔族の腹を貫く。

『ぐはぁ!』


「ふっ……銃なんて離れたところから相手を撃つ卑怯者の武器だ!」

 金剛寺は『アイテムポケット』から巨大な木槌を取り出す。

 槍が刺さり、身動きの取れない魔族に怒りの木槌を振り下ろす。


『ガーンッッッ!!』

 魔族は砂になり散っていった。


「ふぅ……強ェ相手だった。あいつら大丈夫だよな……?」

 離れて戦う仲間が心配になる。


「……お前ら、すぐ戻るからな。少しだけ時間をくれ!」


 金剛寺はとうとう城の最上階の扉を開ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る