第166話 人間界への大移動

 その頃、虎石と金剛寺は城の奥へと向かう。




「おい! こっち合ってるのか!?」


「しらねェよ! でも、お姫様を閉じ込めておくなら、城の1番上だろううが!」


「……そうなのか? !! おいッ、危ない!」


 走る金剛寺を掴み止める虎石。




『ビュン!』


 止められた金剛寺の目の前に剣が振り下ろされ、髭が数本舞う。




「あ、あぶねェ……おい、てめェは何者だ?」


 金剛寺は剣の主をにらみつける。




『お前らが侵入者の人間か?』


 尖った耳に、青い肌、先程の魔法使いの男によく似た風貌の長身の男が立ちはだかる。


 魔法使いとは違い、長い剣を持っている。




「……お前も神の使いとやらか」


「けっ! 何人いるんだお前らは? かかってきやがれ!」


 金剛寺は斧を構える。




 しかし、虎石は言った。


「……金剛寺、お前は行け」




「な、何言ってるんだ!」


「……ナオコはお前が助けに行け! この神の使いは見たところ剣使いだ。俺に任せておけ」


 虎石は鋭い眼光で剣を抜く。




「くっ……わかった。頼んだぞ、虎石……ナオコを見つけたらすぐに戻ってくる。死ぬんじゃねェぞ!」


 金剛寺は走り出す。




『この俺と一対一とは、見上げた根性だ。


 お前も剣士のようだな。楽しませてくれよ』


 神の使いは長い剣を構える。




 ◇




 アキラたちに召喚獣を放ち、姿を消した魔法使いは異世界の神に侵入者のことを報告する。




 尖った耳に青い肌。年齢は数100歳を超える老人。


 異世界の神、魔族の長老だ。




『なるほど……人間が来おったか……


 あの女、最近何かこそこそやってると思っとったが……。


 仕方ない、少し早いが計画を始めるかの。


 遅かれ早かれ、あの女の力は弱ってきておる。ダンジョンの崩壊は免れん。


 行こうかのぉ。新世界……人間に!』




『かしこまりました。


 ちょうど今、我々四天王の1人が人間界に侵入したところです。


 城に残ってる3人で侵入者を排除します』


 魔法使いは神の前にひざまずく。




『今日は我々魔族の歴史に残る1日になる。


 人間界への大移動の日だ』


 神はニヤリと笑う




 ◇




 召喚獣の蛇を倒したアキラたち。


『魔法の糸電話』が鳴る。




『もしもし、アキラ先輩ですか? そっちはどうですか?』


 電話は人間界に残った御剣からだった。




「俺たちはナオコさんのいる城に着いたよ。


 神の使いとかいう、青い肌の魔族に手こずってるところだ。とんでもなく強い、今まで戦ったどんなモンスターよりも……」




『あ、青い肌の魔族!? そんなのの相手、大丈夫ですか?


 こっちも少し前から、昼だって言うのに空が真っ暗なんです。空からモンスターもチラホラ現れ始めて……今までのモンスター災害とは全然違うんですよ。


 こっちはこっちでなんとかするんで、アキラ先輩たちも気をつけてください!


 出口の扉も壊されないように死守しますから!』




「頼んだよ! 頑張ろう!」




 ◇




「アキラ先輩たち、城に着いたみたいですね」


「ホッホッホ、虎石と金剛寺もおるんじゃ、安心しろ。」




 御剣と共に人間界に残った柳生。アキラたちの入っていった扉を守り、モンスターから町を守ろうとダンジョン省で待ち構える。




「それにしても不気味な空ですね……


 アキラ先輩たちは城で魔族と戦ってるみたいです。


 めちゃくちゃ強いみたいですよ。肌も青いとか?」




「ほう。魔族か……肌が青いというと……あんな感じかのぅ?」


 柳生は空を指差す。


「……え!? 空に人? 肌が……青い……!?」




 薄暗い空の中、長い槍を持った青い肌の男に気づいた柳生と御剣。




『ここが人間界か……悪くないな


 とりあえず、神がいらっしゃる前に邪魔者は消しておくか……』






★★★★★★★★★

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