第164話 城

 ゴブリンを倒し続け、気づくともう寄ってくるモンスターはいなくなった。


「ふぅ……とりあえず草原のモンスターは全部やっつけたみたいですね」

「はい、強かったですけど……今の私たちの相手じゃありませんでしたね」


「さて、あの城まで行きたいんだが……どうするか?

 まどかさんは『大天使の羽根』でひとっ飛びだろうが我々は……」

 困り顔の虎石。


「それなら大丈夫です。ちゃんと考えてありますよ!」

 花子は得意げに言う。


 一箇所に固まる5人。

 花子は地面に向かって風魔法を放つ。


「おおっ! なるほど!」

 強風で5人が浮かび上がる。

 花子は風魔法をうまくコントロールし、空に浮かぶ城に近づく。


「うぅ……む、難しいわね……」

 器用な花子でも、なかなか上手く進むことができない。


「おい……花子さん……ここから落ちたら大ケガじゃ済まないぞ……!?」

「ま、まどかちゃん! アンタは飛べるんだから私たちをお城の方に押してちょうだい!」

「は、はい!」


 5人はフラフラと空を漂い、なんとか城の入り口までたどり着くことができた。


「ふう……ゴブリンよりこっちの方が疲れたよ……」


 ◇


 近くで見る城は、おとぎ話で見るような立派なものだった。


「おお、すげェ城だな……ここにナオコが……」

「よし、もう一度確認しておくぞ――」

 虎石が言う。


 ◆

 今回の冒険の目的はナオコの奪還だ。

 元々、崩壊寸前だったダンジョンはこの20年間はナオコの力で維持されている。

 ナオコも本来はそんな事に協力したくないが、ナオコが協力しないなら、人間界にモンスターが進出すると異世界の神に脅され協力している。


 そして、もう1つはダンジョンとは関係なく『トンネル』と呼ばれる、モンスターが人間界にやってくる異世界との通り道を使えなくすることだ。

 しかし、これは現状やり方が分からない。

 ナオコをさらった、異世界の神が関係している事は間違いない。

 ナオコを助け出した後に話を聞くことにする。

 ◆


 アキラたちの侵入に気づいたのか、城内が騒がしくなる。

 城のあちこちからモンスターが飛び出す。


「お? お出迎えみてェだな! アキラたちばっかりに頼っていられねェな!」

「ああ! 行くぞ、金剛寺!」

 襲いかかるモンスターたち。

 金剛寺は巨大な斧で擦り潰し、虎石は剣で華麗に斬る。


「すごい……あれがあの2人の実力か……」

 レベル99でトレーニングをしてきたアキラたちとは違い、レベル90までしか経験のない2人。

 はじめてのレベル100に通用するのか、少々の不安もあったがあっという間に消しとんだ。

 元世界最強冒険者は今でも最強冒険者だった。


 城内のモンスターを一蹴した2人。

「ガッハッハ! 俺たちもまだまだいけるなぁ!」

「ああ、それより……この城のどこにナオコがいるんだろうか……?」


 まさかお姫様のように、王の間に椅子に座って待っている訳は無いと分かってはいたが、モンスターがウヨウヨいるこの広い城内を探すのは大変そうだ。


「仕方ない、片っ端からナオコさんを探していきましょう!」


 その時、

『キサマは何者だ?』

 城内に声が響く。




★★★★★★★★★

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