第133話 見えない壁

『ガチャ』


「り、凛!?」

「あ、お兄ちゃん。これなに?」

 引き出しの中……ダンジョンを覗き込む凜。


「そ、それは……」

 部屋のダンジョンの事はもちろん秘密だ。青ざめるアキラたち。


「ご、ごめんなさい。私が凛ちゃんを連れてきたばっかり……」

「いえ……私が凛ちゃんを1人にしちゃったから……」

 小声で謝るまどかと花子。しかし、


「これ……面白いね。ダンジョンみたいだね。すごいリアル。お兄ちゃん、そんなにダンジョン好きだったっけ!?」


「……え?」


「ほら。本物みたいなのに、引き出しの中に手を入れても、透明な壁に当たっちゃうんだね?」


 凛の言っている意味が分からないアキラ。

 引き出しに近づくと、手を伸ばすが、見えない壁のようなものに阻まれる凛の手。


「……壁!? ああ……こ、これは最新の合成動画みたいなもんなんだよ……すごいリアルだろ……?」

 戸惑うアキラ。とりあえず妹にはごまかすことにした。


「そうなんだ! ビックリしたよ。お家にダンジョンがあるのかと思った! あ、私の部屋見てこようかな! このお家久しぶりだし」

 凜は自分の部屋を見に行く。


「あの、アキラさん……? 見えない壁って? そのダンジョン入れないんですか!?」

 引き出しに駆け寄る花子。


「……いや。大丈夫みたいだ……」

 アキラは引き出しに手を突っ込む。

 いつも通り、ダンジョンに入れる。


「でも……さっき、凛が手を入れた時は確かに、透明な壁にぶつかってるみたいだったな……」

 いくら手を入れても、まるで引き出しの底に手がぶつかるようだった凛。


「……もしかして……私たちしかこのダンジョンに入れないとか……?」

「……」

 今まで、アキラの部屋のダンジョンに入ったことがあるのはアキラ、花子、まどかの3人だけだ。


「どうだろう……? 凛が冒険者じゃないから……?

 いや、俺も花子さんも最初は冒険者じゃなかったし……」


「もしこのダンジョンが3人しか入れないとなると……店長や虎石さんはここを使えないってことですか……?」

 新たな不安が出てきたアキラたち。


「……だ、誰かほかの冒険者にも試してもらいましょうか……?」

「……そうだね。どのみち、もう秘密にするつもりはなかったしね……でも、誰か知り合いの冒険者なんているの?」


「…………」

 黙る一同。


「あっ! アキラさん! 1人連絡先知ってるはないですか!」


「え……? 誰!?」

 全く覚えがないアキラ。


「ほら! 冒険者研修でアキラさんが戦ったイケメン君ですよ!」


「あー……いたね……あのイケメン剣士か。そういえば連絡先交換したな」


「そうです。彼をここに呼んでみましょうよ!

 アキラさんの部屋のダンジョンが他の冒険者も使えるのか? これは今後のレベル100クリアに向けて大きなポイントになりますよ?」

 熱弁する花子。


「……花子さん。イケメン君に会いたいだけでは……!?」


 アキラはイケメン剣士、御剣 流星に連絡をした。





★★★★★★★★★

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