第125話 世界一の冒険者に

『お兄ちゃんのバカ! 私、最近ダンジョン配信見始めて、『まどかチャンネル』のファンなんだよ!』

 電話の向こうでは凛が怒鳴り続けている。


「そ、そうなのか……」

(妹よ……お兄ちゃんは人間界のピンチに直面しているんだぞ……!?)


『まどかさんはお兄ちゃんの仕事仲間なの!?

 なんで冒険者のまどかさんとお兄ちゃんが!?』


「……ほら、俺、動画編集の仕事をしてるからさ、その絡みで少し……」

(妹よ……『アキラちゃんねる』は見てないのか……? まあヘルメットしてるけどさ……)


『私、まどかさんと冒険行ってみたい! お兄ちゃんからお願いしてみて!』


「んー……聞いてみるよ……」


 電話切るアキラ。


「はぁ……まったく、うるさい妹だ」

「はは……それより、私も凛ちゃんに会ったことあるのに、私のことには気づいてないんですね……はは……顔出ししてるのにな……」

「は、花子さん……」

 落ち込む花子だった。


 ◇


 数日後、錬成が終わったと連絡をもらい、アキラたちは店長の店に受け取りに出向く。


「ありがとうございました」

「ホッホッホ、なかなか強化できたはずじゃよ!」

 自信満々の老婆。

 3人はそれぞれアイテムを手に取る。


「……うん! 確かに前よりもオーラを感じますね!」

 見た目は変わってはいないが、アイテムの雰囲気が変わっている気がする。

 早くダンジョンで使ってみたい! 3人はそう思った。


「ホッホッホ、確かに前よりはパワーアップしているのは間違いない。しかし、結局は使い手じゃ。

 錬成師がこんなこと言ってはイカンのかもしれんがのぅ。

 戦いまくるんじゃ! ゲームみたいなパラメーターは冒険者には無い。しかし、戦った分、しっかり冒険者自身も成長しているとアタシは思ってるよ」

 老婆はアキラたちに言う。


「お婆さん……いや、武者小路さん!

 このアイテムを使って、俺たち必ずレベル90をクリアします! その時は……」


「おお、分かっとる。

 アタシも今、虎石と協力して人生大一番の計画をしているところじゃ。

 それまでに……世界一の冒険者になっておいてくれ」

 老婆はニヤッと笑う。


「せ、世界一!?」


「お前たちなら何とかしてくれると信じておるぞ」


 ◇


 アキラの家に戻る3人。

 早速、ダンジョンで強化されたアイテムを試してみることに。


「世界一の冒険者か……」

 アキラは老婆に言われた言葉を思い出す。


「レベル100のダンジョンをクリアするなら、当然、それくらい強くないと無理ですよね……」


「そうだね……でも、虎石さんはレベル100のダンジョンに人間界にモンスターが現れる原因があるんじゃないかって言ってたけど……それも本当なのかは誰にも分からないんだよね……」


「レベル100ですか。怖かったですけど……綺麗な所でしたわね」

 まどかは美しい草原を思い出していた。


「そういえば、大きなお城が空に浮いてましたね」


「あー、そうだったなぁ。……ってことは、あの空に浮く城にダンジョンの主が!? ……そんなわけないか。

 とにかく、俺たちはまずレベル90のダンジョンをクリアしよう。そして武者小路さんに20年前、レベル100のダンジョンに行った冒険者の話を聞こう!」


 3人はレベル60のダンジョンへと入って行った。

 今のアキラたちに出来ることは、強くなることだけだ。





★★★★★★★★★

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