第116話 トンネル

「それにしても、アンタたちのアイテムはすごいのぅ。聞いた話じゃまだ冒険者になって1年も経ってないみたいじゃないか?」


「そ、そうですね……ダンジョンガチャでラッキーが重なりまして……」


「ふぅん……そうか……」


 不信な目でアキラたちを見る老婆。




「アンタたち……宝くじを買った方がいいぞぉ!? ホッホッホ!」


「は、ははは……そうですよね」


(よかった。怪しまれてないみたいだ……)




「レア度★★★★★のアイテムなんて、レベル90のダンジョンでも数百回に一回ってもんじゃよ」




 現在見つかっている最高レベルのダンジョンはレベル90だ。


 外国で見つかり、多くの冒険者が挑戦し、命を落とした。


 凄腕の冒険者を50人ほど集めた『冒険者世界連合』が数週間かけてやっとクリアできたのだった。


 もはや、冒険者の集団ではなく、軍隊のような連合だ。




「あの、レベル90より上のダンジョンは見つかってないんですよね……?」


 アキラは老婆に尋ねる。




「……ああ、まだ見つかっていない。


 しかし、ココがレベル100の入り口じゃないか? と言われている扉はいくつか見つかっておる。


 南極の永久凍土の奥深くに、扉があることが最先端のレーダーで分かっている。まあ氷の奥深くだ。人間にはどうすることもできない」


「南極の氷の奥深くですか……確かに厳しいですね……」




「そしてもう1つはなんと日本じゃ。


 富士山の地中にも、ダンジョンの扉が確認されている。これも掘り出すのはなかなか大変だが……南極の氷よりは現実的じゃな。


 簡単には入れない2つの扉、このどちらかがレベル100のダンジョンではないかと専門家は言っとる」


「なるほど……どちらも簡単ではないですね……」




 南極の氷と富士山の地中か……まさかウチにもレベル100の入り口があると知ったら、驚くだろうなぁ。アキラそう思った。




「あ、レベル100のダンジョンって、中はどうなっているのか知ってますか……?」


 アキラは恐る恐る聞く。聞き方を間違えるとこの老婆は疑ってきそうだ。




「……そんなの知るわけないじゃろ。誰も行ったことないんだからのぅ……なぜそんなことを聞く?」


「そ、そうですよね! いやー! どんなダンジョンなんだろうって気になっちゃって! まあ俺たちには縁のない話ですね! ハハハ!」


 アキラはわざとらしく、おどけていた。




「そんなことより、お前たち3人は政府公認冒険者ってやつなんじゃろ?」


「はい。そうですけど?」


「噂じゃぁ、最近この世界にモンスターが現れているそうじゃないか?」


「え……えっ!?」




 人間界にモンスターが現れたことは、一般人には口外禁止と言われている。


 アキラはダンジョン省の人間である、店長をチラッと見る。




「あー、その婆さんにならいいんじゃねぇかな?


 俺や虎石や……俺や虎石の師匠みてェなもんだからな」




「そ、そうですか」


(店長や虎石さんの師匠!? とんでもないお婆さんだな……)




「この世界に現れたモンスターじゃがな…… どこかに異世界とこの世界をつなぐトンネルのようなものができたんじゃないかとアタシは思ってるよ」




「ト、トンネル……!?」




 老婆は神妙な面持ちで話を続ける。




★★★★★★★★★

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