第99話 ギャル

 無事、勝利を収め帰ってきたまどか。


「はぁ……疲れました。人間相手だと色々と気を使いますね」

「すごい戦いだったよ」

「かっこよかったわよ! まどかちゃん!」


 さすがの天才少女も、初めての人間との戦いに疲れたようだ。


 ◇


 続いて花子の番号が呼ばれる。

「うぅ……行ってきますね」

「気をつけてね。花子さん」


「まどかちゃんの相手が弓矢使いでしたし、対戦相手がまた魔法使いとは限らないんですかね?」

「そうだね……まあ冒険者は剣を使う人が多いから」

 周りを見渡すと、確かに半数以上の冒険者が剣を持っている。


「嫌だなぁ……人と戦うのはもちろん、剣使いとなんて戦ったことないですからね……」

 花子は不安そうにダンジョンへと入っていた。


「大丈夫ですかね? 花子姉さん……」

「うーん、まあ『炎帝のブレスレット』があるからね……心配はいらないと思うけど。いや、相手の命が心配か……」


 ◇


 闘技場に立つ花子、対戦相手は金髪でセクシーな格好をしたギャル冒険者だ。

「何をこのバカそうなギャルは……」


 そして、嫌な予感は的中した。

 相手は巨大な剣を持っている。アキラやまどかの剣の数倍の大きさのある大剣だ。

「げっ!? ほんとに剣使いじゃないの!」


「あら? 珍しいわね、女なんて」

 対戦相手のギャルが言う。


「よ、よろしく……」

 派手なギャルを相手におとなしくなる花子だった。


「ふふ、なんかアンタ……顔はそこそこ可愛いけど……地味な女ね。オタサーの姫感があるわね!」

 ギャルは馬鹿にしたように笑う。


「オ、オタサーの姫!? あ、あんたねぇ!!」


「それでは始め!」

 2人が言い合いをしている中、試合は始まった。


 ◇


「……なんか、花子さん喧嘩してる……?」

「花子姉さん……集中して!」

 スクリーンを眺めるアキラとまどか。


 ◇


「くそ! 許さん!」

 怒りに震える花子。すぐに飛びかかってくるだろうと炎魔法の準備をする。しかし相手は動かない。


 ギャルは大剣を構え、近づくものを長い大剣でなぎ払おうとしているようだ。


「……なに? こないの?」

 困惑する花子。

 武器を使う冒険者は接近戦を好む。

 特に魔法使いの花子相手なら、距離を取らずすぐに飛びかかってくるのがセオリーだが……


「ふふふ、かかってこい! 私の大剣はどんな攻撃も切り刻んでやるわ!」

 対戦相手はドッシリと構えている。


「なるほど……私の魔法をその大剣で防ごうってことね……舐められたものね!」

 花子は相手に手のひらを向ける。


「くらいなさい! ビッチ!」

 一次予選とは違い、今回は魔力を抑えられていない。

 フルパワーの魔法は花子の体が耐えられない。

 若干加減しながら、炎魔法を撃つ。


『ゴゴゴ……』

 加減したとはいえ、『炎帝のブレスレット レア度★★★★★』を装備した花子の攻撃は規格外だ。


「……は? デカ過ぎない!?」

 ギャルは慌てる。迫り来る巨大な火球、まともにくらったら一撃でアウトだ。

 しかし、彼女もここまで残った冒険者。

 花子の魔法を冷静に見極める。


「はあっ!」

『ザンッ!』

 火球を大剣で真っ二つに斬る。


「そ、そんな!」

 花子にとって『炎帝のブレスレット』が初めて破られた瞬間だった。

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