第60話 同級生
「ファミレスなんて久しぶりですね」
アキラ、花子、まどかというレアメンバーでファミレスに昼食をとる。
「そうだね。会社いた時の昼なんかはたまに来てたけど。まどかちゃんはよく来るでしょ?」
「え!? いえ、そんなには……」
「そうなの? JKなんてみんなファミレス行ってそうだけどね。お嬢様学校のまどかちゃんは行かないのかな」
「……あまり友達と遊ぶことがありませんね」
歯切れの悪いまどか。
注文を終えたアキラ達の横を女子高生らしき4人組が通りかかる。
「あれ? 円山さん?」
「あ……」
知り合いらしき女子高生が話しかけるが、気まずそうなまどか。
同級生たちまどかにチラリと見て、とくに話をすることもなく、そのままアキラ達からは離れた席に着いた。
「……お友達?」
アキラは状況が掴めずまどかに聞く。
「まあ……同級生ですわ」
ボソりとまどかは言う。
「……そっか」
勘の鈍いアキラだが、あまり親しい同級生ではないのだろうとすぐに分かり、それ以上はなにも言わなかった。
そんなまどかを見て、花子は何も聞かなかった。
食事が届き、食べ始める3人。
離れた席で楽しそうに騒いでいるまどかの同級生が、チラチラこちらを見て何か話しているのが気になる。
「な、なんだろう? 俺がカッコいいって話でもしてるのかな……? な訳ないか! ハハハ……」
同級生が来てからというもの、明らかに暗くなるまどか。アキラの爆笑トークもスルーだ。
「私、お手洗いに行ってきますわ……」
まどかは俯きながら席を立つ。
「ど、どうしたのかな……?」
アキラは心配そうに花子に尋ねる。
「うーん……あれくらいの女子には色々あるんですよ。
アキラさんのクソつまらない話を無視したのは関係ないと思いますけど。ちょっと様子見てきます」
花子もトイレに向かう。
「……クソつまらないだって!?」
1人取り残され、スパゲッティをむさぼるアキラ。
◇
トイレをのぞく花子。まどかの姿はないことこら個室にこもっているのだろう。
「うーん……どうしましょうねぇ」
あまり親しくない同級生と休みの日にバッタリ会う気まずさは花子にも分かるが。
花子が洗面台の前で待っていると外から声が聞こえてきた。さっきの同級生たちだ。
『円山さんと一緒の人たちって誰? だいぶ年上っぽかったけど?』
「げ、同級生!? 気まずいな……」
咄嗟にまどかの隣の個室に逃げ込む花子。
『さあね? あの子のことだから流行りのパパ活ってやつじゃないの? あ、でもおばさんもいたか』
(お、おばさんっ!?)
個室では息を殺す花子。
当然同級生たちはこのトイレに花子とまどかがいることは知らず、鏡の前で髪や化粧を直し始める。
『まあ学校じゃいつも1人で、友達いないからね。趣味関係の友達かしらね?』
『あーダンジョン好きらしいからね。女子高生でダンジョンってねw』
『変な子よね。家はお金持ちらしいけど……まあそこもムカつくんだけどねw』
(……くっ、アイツらぁ!)
花子は迷っていた。隣の個室ではまどかが心を痛めているはず。
こういうことは女子高生の中ではよくあることだ。
今の花子が飛び出して彼女らを怒ることは簡単だ。
しかし、それがなんの解決にもならず、余計面倒くさくなることは花子にも分かっている。
散々悪口を言い散らかし、しばらくしてトイレを後にする同級生たち。
花子は出ていくタイミングをうかがう。
これ以上、まどかを傷つけたくはない。
きっと今、1番まどかが嫌なことは、花子がここにいて今の話を聞かれたと知った時だろう。
花子は静かにドアを開ける。
(よし、まどかちゃんはいない!)
花子は個室を飛び出す。
その時、
『ガチャ』
「あ……」
「え……? 花子……お姉さん……?」
目に涙を浮かべたまどかと鉢合わせる花子。
気まずい空気が流れる中、2人は手を洗う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます