第42話 円山 麗華
「おじゃましますわ」
「はい……汚いところですが……」
(なにを企んでるのか知らないが、追い返すわけにもいかないからな……)
アキラは不安な気分でまどかを部屋に上げる。
「汚ッ!」
散らかっている部屋を見渡し、
「それにしてもお礼に菓子折りなんて……立派なお嬢さんですね。
お人形さんみたいに可愛い子ですし」
花子は礼儀正しい女子高生のまどかを感心していた。
「お人形だなんて……!」
花子に褒められ、顔を赤らめるまどか。
「ははは……そうだね」
しかし、アキラは訴えられるのではないかと、気が気でなかった。
「とんでもございませんわ。花……あなたと初対面ですね。
花子にお辞儀をする
「あ、はじめまして。
決して彼女ではありませんので!」
彼女ではないことを強く主張する花子であった。
「は、はぁ……」
(彼女じゃないのね! って、なに喜んでの私は!?
うぅ、悔しいけど近くで見ると本当に美人ね……これはファンが増えるのも納得だわ……)
同じ女配信者として、まどかが静かな怒りの炎を燃やすことを花子は知らない。
「それ
まどかが切りだす。
「う……な、なにかな……?」
(きたっ! 間違いない……慰謝料か!?)
震えるアキラにまどかは驚くべきことを言う。
「あの……私にもダンジョンを使わせていただけませんか?」
「……え?」
突然のことで頭が真っ白になるアキラ。
「なんで……?」
当然、花子も驚く。
呆然とする2人にまどか続ける。
「私……知ってるんです! あの机の引き出しからお2人がダンジョンへ行ってることを!
あなた達が『アキラちゃんねる』だってことも!」
まどかは机を力強く指さす。
「ど、どうして!? い、いや、何を言っているんだい?」
アキラは必死にとぼける。
(どういうことですかっ!? なんでこの子、ダンジョンのこと知ってるんですか!?)
(し、知らないよ! 俺も驚いてるんだよ!)
アキラと花子は目線で会話をした。
「フフ……とぼけるおつもりですか? アキラちゃんねる! ネタはあがってるんですわ!」
『ファサッ!』
まどかは写真をばら撒く。
「こ、これは……」
写真には引き出しに出入りするヘルメットを被るアキラと花子の姿が。
「ふふふ、ウチの窓から丸見えだったわ、動かぬ証拠よ!」
まどかは勝ち誇ったように言う。
「な、なんてことだ……」
「恐ろしい子ね……」
2人はゾッとした。
「家にダンジョンがあるなんて世間にバレたら大騒ぎで暮らせないわ!
最悪、ここを追い出されてダンジョン使えなくなるわよ!」
まどかはニヤリと笑う。
「くっ……このガキ……!」
(しかし良かったか? ハダカを見たことこと関係なさそうだな……)
どこかホッとするアキラであった。
(でも、ダンジョンバレていたとは……困ったな……まあ、この子が使ったからって減るんもんじゃないか……)
「うーん、ダンジョンを使いたいのか……」
アキラが諦めかけた、その時
「ダメですよ!」
花子がアキラの言葉をさえぎる。彼女はつづける。
「ダンジョンは使わせません!
冒険者が流行ってて行きたい気持ちも分かりますけど、あなたみたいな素人の子供を連れていけません」
厳しいがまともなことを言う花子であった。
花子に反対されたまどか、当然これくらいでは諦めなかった。
「素人の……子供……ですって!? ふふふ、仕方ないわね……
アンタたち、私が正体か分からないかしら?」
まどかはアキラを見る。
「え? えーっと、ウチのお隣の
「フフフ、甘いわね、アキラちゃんねる!」
まどかはアキラを指さす。
「人のことをアキラちゃんねるって……」
「待ってください……アキラさん、そういえばこの声……どこかで聞いたことあるような?」
花子は耳を澄ませていた。
「……確かに? 前から聞いていたような……?」
「フフフ……そりゃそうでしょうね! なにを隠そう私は人気配信者『まどかチャンネル』のまどかなのよ!」
決めポーズをする誇らしげなまどか。
「えぇっ!? ま、まどかチャンネル!?」
アキラは衝撃の事実に頭が混乱する。
「言われてみれば……たしかに『まどかチャンネル』の声です……」
花子も驚く。
「
「フフフ、分かったわね! 私は素人じゃないわ!」
こうしてアキラは知った。お隣さんが人気配信者『まどかチャンネル』だったことを。
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