第38話 古道具屋

「ここが……古道具屋!?」


 大型アイテムショップを飛び出し、アキラと花子は裏路地にひっそりとたたずむ中古アイテムショップに来た。


 さっきまでの奇麗なアイテムショップと比べると、ボロボロの店構え、店内は狭く、薄暗い入りづらい雰囲気だが……


「アキラさん、どうしますか? ちょっとボロ過ぎますよね?」


「いや……この雰囲気、すごくいいよ! これぞ道具屋だよ」

 アキラはこのボロアイテムショップに妙にテンションが上がっていた。


「まあ……アキラさんがいいなら……」


 古道具屋の扉を開く。客のことを考えていない古くて重い扉だ。


「す、すいませーん……」

 アキラは恐る恐る店内に声をかける。


『シーン……』

 反応は無い。


「うーん、留守かなぁ?」

 アキラは店内をキョロキョロと見渡す。


「うわぁ……なんか散らかってますね。ちょっとアキラさん、お店の人いませんし帰りましょうよ……」

 花子は暗い店内の雰囲気に怖がる。


「いや……見てよ、花子さん、なかなか良さそうなアイテムが多いよ……?」


「あ……たしかに……」

 2人は店内に並べられたアイテムを見る。


 使い古された中古品、しかし、奇麗に磨かれ、メンテナンスもしっかりされていそうなアイテムだった。


「おぉ? なんだ、客か?」

 アイテムを見るのに夢中になっていた2人の背後から急に声をかけられる。


「キャッ! て、店員さん……ですか?」


「そりゃそうだろ。俺の店だぞ?」

 店主と名乗る男。そこには身長2メートル、体重120キロほどの屈強な髭モジャの男が立っていた。


「こ、これぞ武器屋の親父だよ……!」

 ファンタジー漫画から飛び出してきたような店主に心躍るアキラであった。


「誰が親父だ? アイテム買いに来たのか?」


「は、はい……」


「ふーん……お前らダンジョン冒険者か?」

 店主はアキラ達をジロジロ見る。


「い、一応……ダンジョン配信者です……」

 屈強な男に睨まれビビるアキラ。


「あー……最近ガキどもの中で流行ってるダンジョン配信者ってやつか……」

 明らかに怪訝な表情に変わる店主。


「は、はあ……そうです」


「帰れ帰れ、ここにはお前らが欲しいようなアイテムはねぇぞ?

 ウチの目の前のデカイアイテムショップに行った方がいいんじゃねぇか?」


「うぅ……」

 そのデカイアイテムショップにも行ったけど、飛び出してきたとは言いづらいアキラであった。


「配信者っていうとアレだろ? 視聴者とお喋りしながらモンスターを倒してチップをもらうっていう。

 情けねぇ奴らだよ! 男なら、ペチャクチャ話してモンスターと戦ってないで、より高みを目指すべきだろ!」


 店主は机をドンと叩く。


「ペ、ペチャクチャって! 私たちは真剣にやってるんです!

 その辺の配信者と一緒にしないでください!」

 ひるむアキラとは違い、言い返す花子。


「お? 姉ちゃんも配信者なのか?

 姉ちゃんならどんな良い武器で戦うよりも、水着かなんかで戦えばチヤホヤされるんじゃねぇか? ガッハッハ!」

 店主は下品な大笑いをする。


「ぐぐ……なによこの男、最低ね!

 もうっ! なんなのよ? アイテムショップの男はみんなくそ野郎しかいないのッ!?」


 店主の言いぐさに、花子は発狂する。


「おいおい、なに怒ってるんだよ? 俺は褒めたつもりなんだが?」


「ほ、褒めたって……? イカれてるわ、この男!」


「まあ冗談は抜きにして、俺の店のアイテムは中古品しかないぞ?

 たしかに新品よりは安いが。

 冒険者ならともかく、視聴者に戦いを見せる配信者はもっとイマドキのカッコいい武器を使った方がいいんじゃねのか?

 どうせそんな強いモンスターと戦おうなんて思ってねえんだろ?」


 ぶっきらぼうなこの男は、思いのほか、しっかりとアキラたちのことを考えてくれていた。



 そんな店主の言葉を聞いたアキラは言った。


「いえ……このお店のアイテム……すごく気に入ったんです!」

 アキラは並べられたアイテムを手に取る。


「たしかにピカピカの新品ってわけじゃないですけど、なんていうか、店長さんのダンジョンアイテムへの愛情が伝わると言うか……俺はこの武器で戦ってみたいです!」


「ほう……ド素人のくせに分かってんな!」

 店長の顔に笑みが浮かぶ。


「そうですね。悔しいけど質の良いアイテムばかりだわ。まあ店長はセクハラくそ野郎ですけどね!」

 怒りむき出しの花子もアイテムの良さは認めている。


「ガッハッハ! 気に入った! よし、お前たちのアイテム選んでやるよ!」


「え? いいんですか?」

 アキラは思いもよらない返事に驚く。


「なあに、向かいに出来たデケーアイテムショップのせいで客も全然こなくて暇なのよ!」


 この店に来れてよかった! アキラと花子はそう思っていた。

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