第34話 のぞき

 アキラの部屋


「だ、大丈夫ですか……?」

 帰ってくるなり、血まみれのアキラに驚く花子。


「ちょっとラッキースケベ……いや、トラブルがあってね……ふふふ」

 血まみれながらも、笑顔のアキラ。彼は幸せそうだった。


「幸せそうで何よりですが、キモいですね……」


 ◇


「アキラさん、今日はもう1本、軽く配信しませんか?」


「えっ? 今日2回目の配信? ゴリラと戦ってクタクタだっていうのに……」


「分かってます。

 アキラさんの剣はボロボロで使えないんですから、無理のない低レベルのダンジョンにしましょう。視聴者も増えてきてる今が大事な時期なんです!」


 熱く語る花子、コンビでの配信になり、登録者も増えた今こそ頑張り時だと彼女は分かっていた。

 せっかく人気が出ても、すぐに勢いの止まってしまった配信者をたくさん見てきたのだ。


 疲れてはいたが、アキラはそんな花子の熱意を感じた。

「よし! 花子さんがそこまで言うなら行こう。

 俺はプロデューサーの事は信じてるよ」


「アキラさん……」

 アキラの言葉に心を打たれる花子であった。


「今が『アキラちゃんねる』の勝負所だもんね! 頑張ろう!」


「はい、その通りです! いきましょう。

 あ、その血まみれの服は着替えてくださいね?」


 アキラと花子は、いつものように机の引き出しからダンジョンへと向かう。


 ◇


 まどかの部屋


 その頃、

 隣の家のベランダに干してある『アキラちゃんねる』のヘルメットを見つけたまどか。


「まさか隣に『アキラちゃんねる』のアキラが住んでいたなんて……

 言われてみれば、さっきの変態男と配信者のアキラは声もソックリだわ」


 まどかは自分の部屋の窓から、双眼鏡でアキラの部屋を覗き込む。


「変態め……『アキラちゃんねる』を終わらしてやるわよ!」


 アキラにハダカを見られた恨み、花子に人気女配信者の地位を奪われた恨み。

 まどかは怒りの炎に燃えていた。


 自分も双眼鏡で覗く、立派な変態なことには気にも留めず、『アキラちゃんねる』の弱点、秘密を探ろうとするまどかであった。


「ん? あ、あれは花子!?」

 まどかはアキラの部屋にいる花子の存在に気づいた。


 これで隣人のアキラ=配信者のアキラが確定した。


「なるほど……悔しいけど確かに美人だわ……

 でもコンビでやってるとはいえ、普通、男の部屋まで来るかしら?

 もしかして2人は付き合ってるの……?

 ふふふ、これは良いことを知ったわ!」


 熱狂的なファンのつくことが多い女性配信者にとって、彼氏の存在は大ダメージだ。

 まどかはいざとなったらこのスキャンダルをリークしてやろうと思った。


「残念だったわね『アキラちゃんねる』! あんた達はもう終わりよ!」


 しばらくアキラの監視を続けるまどか。


「それにしてもあの男……よく見ると素顔も悪くないんだから、ヘルメットなんてやめればいいのに、女性ファン増えそう……ハッ! わ、私は何を言ってるの!? バカバカッ!」


 1人顔を赤らめる思春期真っ盛りのまどかであった。




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