第16話 スポンサー様

『ダンジョン製薬』との打ち合わせを終えた花子。


「やりましたよ! なかなかの額がもらえそうです!」


「おお! 流石、花子さん!」


 アキラに親指を立てる花子。


「でも条件があります。

 これからの冒険ではヘルメットに『ダンジョン製薬』のステッカーを貼ります。

 そして、配信で回復アイテムを使わないといけません」


「なるほどね。ステッカーかぁ! いいね、プロっぽくなってきたよ!」


「でも、企業のステッカーを貼るわけですから、うかつな発言や放送禁止用語なんかには気をつけてくださいよ! 失言はスポンサー切られますから!」


「あー、たまに差別発言で炎上とか、ネットニュースになってるもんね」


 最近の配信者ブームで、スポンサーにつく企業は増えた。

 しかし、配信者の不用意な発言で炎上し、スポンサーに切られることも珍しくない。



「そうです! まあアキラさんはその辺の心配はないとおもいますけどね」


「放送禁止用語か……どんなのがあるのかな?」


「んー……例えば、●●●とか●●●、なんかはアウトですね」

 恥ずかしげもなく、とんでもないワードを言い放つ花子。


「花子さん……アンタがアウトだよ……」

 妙な興奮を感じるアキラであった。


「と、とにかく! これからは発言も気をつけましょう!

 私たちはプロフェッショナルなんです!」


「おお! プロフェッショナル! いい響きだ……」

 今までの人生、プロフェッショナルという言葉に縁のなかったアキラは、その言葉を噛みしめていた。


 さっそく『黒のヘルメット』にステッカーを貼ることに。


「うん! いいね!」

 シンプルな真っ黒のヘルメットに貼られた『ダンジョン製薬』のステッカーを眺めるアキラ。


「ふふふ、ヘルメットじゃ足りないくらいの案件を集めてやりましょう!

 薬草とポーションもたくさん貰ってきましたよ」


 箱いっぱいの回復アイテムだ。これをダンジョン配信で使って宣伝するのだ。


「アキラさんにはガンガン戦って、傷を負ってもらわないとスポンサー様に合わす顔がありませんね!」


「……恐ろしいことを言うね……」


 ◆


「さあ、さっそく配信を始めましょう!

 いいですか? 回復アイテムの素晴らしさをアピールするんですよ!」


「オッケー! 任せてよ」


「でも、気をつけないといけないのは、あまりに宣伝しすぎると視聴者は冷めてしまいますからね」


「なるほど……確かに。俺もスポンサーの宣伝ばかりする配信を嫌いになったことあるな……」


「いい感じでほめる、それでいてやり過ぎない! そんな具合で頼みますよ」


「難しい注文だなぁ……」



「ゴホン。こんにちは! 『アキラちゃんねる』の配信を始めますよぉ!」


 ◆コメント欄◆


【名無し お! 待ってました】



【名無し アキラキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!】



【名無し おいおい! なんだそのステッカー?】



【名無し もう案件来たのかよ!?】



「ふふ、みなさん。お気づきのようですね……本日の放送は『ダンジョン製薬』の提供でお送りします!!」


『バカッ! アピールし過ぎですよ……』


 ワイヤレスイヤホンには花子の呆れた声が流れた。


「そ、それでは、今日はレベル4のダンジョンへ行ってみましょう!」


『アキラちゃんねる』レベル4の配信はこうして始まった。






★読者様へ★

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