第8話 目出し帽

「そういえば、花子さんはダンジョンへ行ったことはあるの?」


 さっそく、名前呼びをするアキラ。


「実はないんですよね……配信を見るのは好きなんですけど自分で冒険はいいかなって。

 運動音痴だし……入場料も高いし、なかなか行けませんよ」


 ダンジョン配信が流行り出し、ダンジョンを冒険する者も増えたが、配信だけを見て満足する視聴者も多かった。



「そっか、じゃあ今日が初ダンジョンだね!」


「はい! ちょっと楽しみです! カメラマンは任せてください!」


「あ、カメラマンと言えば……」


 ここで一つ問題に気づくアキラ。


「前の配信では、自分でスマートフォンを手に持ってたから顔を映らなかったけど、   花子さんが撮影となると俺の顔映るよね? どうしよう?」


「うーん……そうですね。顔出しNGの配信者はお面やマスクを使いますけど……アキラさん何か顔隠せるもの持ってませんか?」


「お面は無いな、あっ、顔を隠すんだったらいいのがあるかも!」


 アキラはタンスの中から真っ黒の目出し帽を引っ張り出す。


「これなら目しか出ないからいいんじゃない?」


「これって……銀行強盗とかが被ってるやつじゃないですか?」


「銀行強盗じゃなくても被るよ! 昔、スキーの時に使ってたんだ。防寒用だよ」


「まあ顔は隠せますけど、なんというか……華がありませんね。

 私はアキラさんに配信者として成功してほしいですけど、若者が憧れるインフルエンサーにもなって欲しいんですよ」


「お、俺がインフルエンサー!?」


「はい! のちのちは『アキラちゃんねる』のグッズ展開も考えてるので、もっとオシャレな仮面がいいんですが……

 まあ、今日はこれでいきましょう。衣装は早急に考えておきます」


「頼りになるよ、プロデューサー……」


 二人は引き出しからダンジョンへと入る。


「ここからハシゴで降りるんですね。怖いですね」


 運動音痴の花子は10段程のハシゴを降りるのも一苦労だ。


「じゃあ俺が先に降りるよ」


「お願いします。もし私が落ちたら受け止めてくださいね!」


 先にハシゴを降りるアキラ。


「大丈夫かい? 花子さん?」


 アキラは視線を上の花子へ向ける。


 その時、


「!!!」


 仕事帰りの彼女はOLらしくスカートを履いていた。

 当然、アキラの目には花子のパンツが飛び込んできた。


(……これがレアアイテムってやつか!?)


「はい……怖いですね……」


 慣れないハシゴをぎこちなく降りる花子。


「ゆっくり……ゆっくり降りておいで……へへへ」


 アキラは必要以上に花子をゆっくりと下ろした。なぜかは彼女は知らない。






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