⑳完
翌日、俺たちは、村に隣接している森の奥へと入っていた。付いて行きますというジュラさんとフェブラさんに対して、村に何かあったら事なので、二人には残ってもらう事にした。実際、昨日の襲撃が俺たちの居ない時に起こった時に、村の人たちを守ってもらう。
しかし、やはりあの二人は戦闘の心得があるんだな。
「バアルさん」
先行しているパールが俺を呼ぶ。何かを見つけたみたいだ。
「どうした?」
しゃがみこんで、地面を指差すと、その地面には真新しい足跡が残っていた。
「アースグリズリだな」
「ですね」
その足跡はアースグリズリのものだった。まだ、新しい事から見て、おそらく昨日クロリアに来たアースグリズリものだ。足跡が向かっている先が、俺たちが来た方に向かっているから間違いない。となると、アースグリズリは森の奥から来たんだな。
「おい、こっちにもあるぞ」
シバが指差す木には、爪痕がシバの頭上に残っていた。これもまた、新しいものもあれば、古いものも残っている。これは、昨日言っていた俺たちがクロリアに来る前に襲撃されたって言っていたから、その時のものなのかもしれない。それか、まだ、森に潜んでいる可能性も否定はできない。
「もう少し奥に進んでみよう」
二人は頷き、俺たちはさらに奥へと進んで行く。そして、違和感に気が付いた。俺は反転する魂を嵌めると、探知魔法を飛ばす。とりあえずは、範囲は狭めて。
「バアル?」
突然、魔法を使った俺にシバが首を傾げる。
「モンスターの気配がしない」
「えっ?」
「それが、どうした? もしかして、アースグリズリが他にも居ないか調べたのか、だとしたら、良い事じゃないのか?」
「普通ならな。だけど、この森はアースグリズリの他にもモンスターは確認されているんだ。それなのに、反応がない」
「あのアースグリズリに倒されたって事ですか?」
「それもあるけもしれないけど。それにしては、まったく反応が無いというのはいったい……」
範囲が狭すぎた? いや、それにしては何の反応もないのは、妙だ。それにアースグリズリは群れでも行動しているのに、探知に引っ掛からない。とりあえず、痕跡を辿ってみるか。
さらに、痕跡を探しては、森の奥へと入っていくと、異様な事に気が付いた。
「モンスターの反応があった。だけど」
「だけど、何だ?」
「反応が偏っている。ある場所を避けて、反応を避けているって感じだ」
「ある場所……」
「そこに何かあるかもしれない。そこに行ってみよう」
移動を開始する俺たちだが、モンスターが襲って来る様子はない。そして、大木が見えて来た。どうやら、ここを中心として、モンスターたちが避けるようにしている。その大木に近づいた俺たちは、自分たちの目を疑った。
「バアル」
「これって……」
二人の問い掛けに、俺は答える。
「ああ、ダンジョンの入口だ」
大木には洞がある。しかし、ただの洞じゃない、肌で判る。この異様な雰囲気、俺たちを誘うかのように、ダンジョンという名のもう一つの世界の入口が、大きな口を開けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます