幕間
PV4000 記念SS アストレイアの休日
私は、目を開ける。ここは、ダンジョンの中でも、依頼で遠征先で野宿しているわけでもないので、先に私の視界に入るのは、見慣れた私の部屋の天井だ。
先の依頼達成から、今日は一日休日という事になっている。私としては、ダンジョンに潜るのもありかと思ったが、ムルルが新しく杖を新調したいので、休みが欲しいとの事なので、休日となった。
さて、私は身支度を整えると、今日は何しようかと考える。剣の鍛錬をするのもいい。防具でも見に行ってみようか。これからの予定を考えていると、お腹が鳴く。
ここに居るのが私だけで良かった。今のを、誰かに聞かれてしまったら、恥ずかしい。そんな時に、ある人物の事が頭をよぎり、ここが財政管理会計課の部屋でなくて良かった。
こんな時は、あそこで朝食を食べる事にしよう。私は、『
『ヒナドリ』ここは、冒険者であれば、一度は誰もが通っている店だ。私が店のドアを開けると、
「あら、アストレイアちゃん。いらっしゃい」
「おはようございます」
ここの主人の奥さんでもあるルーリエさんが私を出迎えてくれる。朝から昼の時間は、主人のウカさんではなく、ルーリエさんがこの店を仕切っている。
「サンドイッチをお願いします」
「任せて」
私はカウンター席に着くと、ルーリエさに注文する。ここの料理は、夜に食べるウカさんのご飯も美味しいが、ルーリエさんが提供する軽食も絶品だ。なので、朝や夜も食べに来る常連も結構居るらしい。
私もその一人だ。
「お待たせ」
「ありがとうございます」
私の前に皿に乗ったサンドイッチが出される。今日頼んだサンドイッチは鶏のタマゴ焼きである。うん、この絶妙な甘さが美味しい。
「今日はお休み?」
「はい。なので、これから何をしょうかと思いまして…」
「アストレイアちゃんの事だから、剣の鍛錬とかしようとしてたんじゃない?」
「…そんなに判りやすいですか」
「ふふふ、そうね」
ルーリエさんに一番最初に思いついた事を当てられてしまった。私ってそんなに判りやすいかな、私。
「アストレイアちゃんは、冒険者だから判るけど、女の子なんだから、アクセサリーとか見に行って見たらどうかしら」
「アクセサリーですか…魔道具とかなら興味はありますけど、宝飾品の類はあまり興味はないですね」
私がそう言うと、ルーリエさんがため息を吐く。
「アストレイアちゃん…」
「なんでしょう」
「今から、お店を閉めるから、私と一緒に出掛けるわよ」
「えっ、ですが…」
「いいわね」
「はい」
ルーリエさんの圧に私は、はいの二文字以外の言葉を口に出す事は、私には出来なかった。これが、獣人の本気ですか。
こうして、私の休日は意外に形で、始まったのだった。
「これも、いいわね。いや、でも、こっちも……」
ルーリエさんは様々なアクセサリーを見ては、呟いている。私も見ては見るが、正直よく判らない。
「これなんて似合うんじゃないかしら」
ルーリエさんは私に首飾りを当てる。鏡を見てみるが、似合っているのかは判らない。今まで、似合う似合わないでそういう物を見た事がほとんど無かったから。
「でも、こっちもいいわね」
次は、耳に着けるイヤリングだが、これもどうなんだろうか? やっぱり、私には良し悪しが判らない。
「すいません、ルーリエさん。やはり、私には、よく判らないです」
「うーん、なら、これを着けてと気になる人と一緒に出掛けるって想像してみたらどうかしら」
「気になる誰かと…」
私はイヤリングを着けた自分を鏡で見ながら、想像する。気になる誰か、私はある人物と一緒に街を歩く。隣に居るのは……私は、顔を勢いよく振り、今した想像をかき消す。
なんで、私は彼を思い浮かべたの? 確かに、気にはなっている、でも、それはそういう意味で、気になっているわけじゃない。
私は視線を感じて横を見ると、ルーリエさんがなにやら面白いものを見たとでも言わんばかりの顔をしながら、こっちを見ていた。
「わ、私には必要ありません、やはり」
「えー、本当に?」
「本当です」
私は、イヤリングをそっと、棚に戻す。今の、私には必要ない。
その後も、ルーリエさんに連れられて様々な店を見てみた。と言っても、連れ回されたと言った方が正しいかもしれない。そして、気が付けば陽が落ち、良い時間になってきていたので、ルーリエさんとは別れた。
なんだか、妙に疲れてしまった。ダンジョンや依頼の時とは、違う疲れがあった。でも、いつもと違った休日を堪能させてもらったから、ルーリエさんには感謝をしないといけませんね。
そう思いながら、私は帰路につく。すると、大きな音が聞こえる。その音の鳴った方を見る。
「あっちは、オアシスの方ですか」
私は、なにやら正らぬ気配を感じ、オアシスへと向かう。オアシスに着くと、建物の一部が破壊されているのが見えた。そして、そこからは微かに、あれは炎?
私は、
その光景を見た瞬間、私は『
そして、攻撃を受けていた人物であり、私が気になる人物でもある、バアルに私は訊く。
「まったく、何をしているんですか、あなたは」
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