配信しながらダンジョン&露店商売

 配信をスタートして、遺跡ダンジョン『パルテノン』へ進入していく。

 遺跡は薄暗く視界が良いとは言えない。

 ゴースト系のモンスターが出てきてもおかしくない。


 それにしても……配信はこれでいいのだろうか?

 なんの反応もないのだが。


「あの、カインさん。配信はいかがですか?」

「う~ん、始めたばかりだからな。きっとそのうち投げ銭されるんじゃないか」


 考えても仕方ない。

 今はとにかくダンジョンの奥へ向かい、露店を開いてアイテムを売る。お金を稼いで生活を楽にすることが最優先だ。


 アナライズに貢献できれば、僕はもっと出世できるし――いずれはお店を持つことも叶うかもしれない。


 夢を叶える為にも、慎重に突き進む。


 通路は広いが、冷気を感じる。

 少し進むとモンスターと対峙するパーティがいた。こ、これは……!



「敵はサンドリザードか」

「サンドリザード?」


 砂のトカゲを目の前にして首を捻るアルメリア。見たままなのだがな。


「地属性のオオトカゲさ」


 とはいえ、俺も初めてみた。

 本当に砂状なんだな。

 複数のパーティが少し苦戦しながらも戦っている。

 邪魔しちゃ悪いな。


 どのみち僕は、一定時間狙われないし。

 アルメリアを連れて僕は先へ進む。

 この先で露店を構えていれば、ここで戦っている連中が消耗アイテムを買ってくれるはずだ。


 モンスターに狙われないよう、通路の隅を歩いて奥の部屋へ。


「よし、ここはモンスターのいない安全地帯か」

「いわゆる、セーフティゾーンですね!」


 ダンジョン内には、いくつか安全地帯が存在する。そこだけはモンスターに狙われない――いわば聖域みたいな場所だ。僕達が今いる場所はその一部というわけだ。


 ここなら安全に露店を開ける。

 すでに先客もいるようだが商人ではなく、鍛冶屋か。つまり、あれは武具の修理屋。競合店ではないな。


 安心して僕は良さげな場所を確保した。


 すると、鍛冶屋から話しかけられた。厳ついドワーフだな。



「お前さんたち、ここに二人で来たのか」

「そうですよ。僕達は露店をしに来たんです」

「なるほど、商人か。こいつは珍しい」

「どういう意味です?」

「向こうのエリアを見ただろう。サンドリザードの群れを。アレを突破できる冒険者は、そうはいない。お前さん、只者ではないな」



 珍獣でも観察するかのようにドワーフは、僕を見た。なんだかな。けど、悪い人ではなさそうだな。


「僕は雇われ店長なんですよ」

「しかもお前さん、S級店長じゃねぇか……すげぇな。共和国に四人しかいないと聞いている」


 S級店長ってそんなに少なかったの!?

 知らなかったなぁ。


「そんなわけでよろしくです」

「ああ、ワシの名はマックスだ。よろしく」


 握手を交わし、彼は去っていく。

 僕もお店の準備を進めよう。


 アルメリアの力も借りてアイテムを地面に敷いたシートの上に広げていった。慎重に丁寧に。

 しばらくしてサンドリザードのエリアから冒険者がやってきた。激戦を繰り広げたのか、みんな憔悴しきっていた。あの感じだと消耗アイテムをかなり使ったようだな。


「くそ、回復ポーションがなくなった」「困ったぞ、ここから買出しなんて面倒だ」「荷物持ちを雇っておけばよかった」「くそがー! ここまでか……って、アレ、露店があるぞ?」「うぉ、マジだ。こんな場所に露店だって?」「回復アイテムもあるじゃん!」「おい、マジかよ!!」


 冒険者がこちらの露店に殺到してくる。

 体力回復ポーションと魔力回復ポーションは飛ぶように売れ、売り上げがどんどんアップしていく。イイ感じだ。

 しかも、冒険者から感謝もされて僕は嬉しかった。アルメリアも手伝ってくれるし、商売って楽しいな。


「ありがとう、カインさん」「店長、また奥の方でも露店を頼むよ」「カインさんを専属にしたいなぁー!」「桃色の髪の女の子も可愛いな」「ねえねえ、カインくん。私のパーティに入らない?」「ありがとう、俺たちは先へ進む!」


 などなど感謝されたり、パーティに誘われたりもした。気分最高!

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