第2話 秘技! ホーミング・ヘリックスブレイカー!!
その日の夜。
自宅を部屋の窓から出て人目に気を付けつつ通学路を歩き、私は再び高校を訪れた。
校舎裏の広場まで来て、周囲に怪しい気配がないか感覚を研ぎ澄ませる。
「隠れてるのは分かってるわよ。出てきなさい!」
気配のした方を睨みつけてそう叫ぶと、何もない空間から黒い影が現れた。
「やはり気付いたか。今日は何のつもりだ?」
双眼を不気味に光らせた黒い影は機械音声のような声でそう尋ねた。
「私のいるこの高校を共学化しようなんて、いい度胸をしているわね」
「素晴らしいアイディアだろう? 何せ全国共学化の阻害因子の拠点なのだからな」
「ふざけないで!」
そう怒鳴りつけると黒い影から青白色の光線が発射された。
私はそれを颯爽と回避し、宙に飛んだ勢いのまま制カバンからステッキを取り出した。
「そっちがそのつもりなら……」
着地した私は、魔法のステッキを天に掲げて叫んだ。
「
衣服が瞬時にして光に包まれると、神々しいスーツへと変異していく。
変身が終わると同時に、私はステッキを黒い影に向けて叫んだ。
「別学魔法少女、ジョシコールナ! サンダーバードの命により成敗するわ!!」
女子校の生徒会長である私、霧崎瑠奈。
そのもう一つの姿が共学化と戦う魔法少女、ジョシコールナだった。
「今言うのもあれだが、その変身バンクはいい加減見飽きたのだが。そろそろ更新してはどうだ?」
「う、うるさいわね!」
黒い影、シャドウキョーガクとはこれまで何度も戦ってきたため敵同士でもお互いよく知っていた。
「まあいい、我々プロジェクトCEの邪魔をするのなら実力で排除するとしよう」
シャドウキョーガクは秘密結社プロジェクトCE(Co-Education)が使役する怪人の1人で、日本国内のあらゆる学校の共学化を目論む悪の秘密結社の尖兵だった。
「男女共同参画の力を受けてみるがいい。トライアングルレーザー!」
シャドウキョーガクの腹部から三角形を描く光線が射出される。
「効くものですか。優美なる振る舞い、キリーツ・レイ!」
急激に上昇した後に降り注ぐ光線の数々が、トライアングルレーザーを打ち消した。
「
「お前が言うなよ……」
敵の発言は聞こえなかったことにして私は次なる攻撃に移る。
「あなたと会うのも
ステッキを再び天に掲げると、雷の力がその先に宿ってゆく。
「ヘリックスブレイカー!!」
ステッキの先から放たれた光線は螺旋を描きつつシャドウキョーガクへと伸びていく。
「その攻撃も、いい加減マンネリというものだ。私の瞬間移動の前には……!?」
瞬間移動によって上空へと逃れたシャドウキョーガクに向けて光線は上昇していく。
「な、何だと!」
「私がいつまでも同じ技を使い続けると思って? 考えが浅いことね」
ジョシコールナの必殺技の一つ。ヘリックスブレイカー。
放たれる光線は威力や速度は充分でも追尾能力に劣るという問題点を抱えていた。
守護女神サンダーバードの祝福を受けて強化されたこの技は敵を追尾する性質を備え、新たにホーミング・ヘリックスブレイカーと名付けられていた。
光線は徐々に速度を増し、悲鳴を上げたシャドウキョーガクに直撃した。
爆炎が上がり、私は黒い影との戦いに勝利した。
……ように、見えたのだけど。
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