風介粋姿

希藤俊

第1話 時空を超えて1

 スマホに向かっていた。使い古したスマホの動きが鈍い。あまりに反応が遅いのでイラつき、画面を強打する指が痛い。


 壁の時計は、既に2時12分を指していた。秒針が淀んだ空気を刻んでいく。


 春は名ばかり、木枯らしみたいな冷たい風が街中を吹き回っていた。頭の中をスッキリさせるため、風呂場に飛び込んで凍えるようなシャワーを頭から浴びてきたばかりである。


 今、小説を書いている。もちろんプロではないが、趣味で小説やイラストエッセイ、ブログや俳句なども書いている。


 かっては某サイトを主戦場として小説などを投稿していた。このサイトには何年か在籍したが、マイペースな性格なので、クリエイター仲間などほとんどいなかった。


 既に数回サイトを退会していた。バカな性格で些細なことにムカついて退会し、性懲りもなく再入会を何度も繰り返していた。


 初めは三日月風介と名乗った。名前の由来は、千葉県にあるリゾートホテル三日月が好きで、何度も通っていたからである。


 風介の由来、風は風来坊、介はとるに足らない。つまりとるに足らない風来坊だから、風介とした。初めてのネーム変更は夜空夢丞。ふと思いついたネームである。


 クリエ活動では大した成果を出さぬまま、いたずらに年を重ね3度目の改名。三日月風介と夜空夢丞を会わせ夜空風介とネームを変更した。


 最近では睡眠時間を削り、つまらぬ小説等を書き続けているバカなおじさんだ。


 今、書いてる小説のネーム?

 『風介粋姿』という小説だよ。


 どんな小説かって?

 そんなものわかりゃしねえよ。

 まだ書き始めたばかりなんだぜ。


 大きな方向性はないのかって?

 あんまり考えちゃいねぇんだよ。


 ただ作者のオレ自身が、時空を超えて過去未来の世界に飛び込んで、度胸と魔力を携えて大暴れする、まあ風介の自伝的空想小説だな。


 どうやって時空を超えるかって?

 後でゆっくり教えてやるよ。

 どんな話かって?分からねぇな。


 今回もいつもの小説と同じ、適当に思いつきで書いてるんだから。どういうシナリオでどういう風に展開するのかは、打ち込むスマホのキーを叩いている指先に聞いてくれよ。


 分野は何にするか?ファンタジー? 伝奇? ギャグ?まあとりあえず童話じゃねえし、絵本じゃねえし、ホラーじゃねえな。しょうがねえから、とりあえず分野はSFしかねえか・・・・・


 既に2時21分を過ぎていた。まもなく現世と過去未来がつながる魔の時間が訪れる。


 えっ、知らねぇのかい。2時22分22秒のことに決まってるだろう。神代の昔から語り継がれている時空間に歪みが発生する時間のことさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る