現代を生きる主人公が、ある朝目覚めると異世界の住人になっていた。
――という、定番の物語。
仲間たちとモンスター退治に出かけたり、学校に通ったりといった定番の展開も起こります。
……なのですが。その設定も登場人物たちの個性も、ぶっ飛んでいます。
まず、この世界は主人公が書いた厨ニ病的な『黒歴史』を元にした世界です。
当然、登場するキャラクタも、それに相応しい曲者揃い。
異世界に来た主人公は『物語に登場する主人公』の体に乗り移っているのですが、前述のキャラたちも同じ体に乗り移っています。
それも肉体の細かい部位を住処にし、主人公へ好き放題に語りかけてくる始末。
しかも、外で出会う人物も皆、個性的な姿をしています。
――もはや全方位からギャグが押し寄せてくる勢い。
笑いと共に、どこか芸術性すらも感じる素晴らしさです。
最初こそ登場人物の多さに圧倒されるかもしれませんが、重要な部分ではしっかりと紹介してくれるので、流れに身を任せても大丈夫です。
私は特に、『魔女』『賢者』『悪魔』がお気に入りですね。
彼女らの「個性的な褒め言葉」が毎回面白いです。
世界観はエキセントリックながらも作りこまれており、文章の巧さも相まって非常に読みやすいです。
下地がしっかりしているので、ギャグにも物語にも集中できます。
主人公も自身が乗り移った『主人公』を気遣うなど、好感が持てます。
また、作者様の過去作と似たキャラが登場することもあり、「もしかすると、あのキャラに会えるかも?」と密かにワクワクしております。
このように、挙げはじめると止まらないほどに面白い作品です。
皆様にもぜひ、この世界を体験して頂きたいですね。オススメです。