第9話 シャボン玉ホリデー
夕方になる前にマイザーは帰って行った。
今生の別れの様なやりとりをアルコと
したって事はアルコはもうここに残るのか?
「まだ、出立は先の話だけど」
「「お邪魔でしょうか」」
被る兄妹。
「いや、邪魔とかじゃなくてさ」
どうもベアーマン的には
馴れる意味でも普段の警護という意味でも
今日から一緒に過ごす事にしたいそうだ。
俺は快諾した。
「荷物とかは無いのか」
「持ってきました」
そう言ってアルコはリュックを見せた。
その中に全部とは身軽だな。
そのまま夕飯だ。
料理を覚えたいとの事なので
作る俺を間近で見ながら
アルコは手伝いをした。
食うだけ天使長ミカリン
おい見習え
身長差がスゴイのでアルコは
少し前傾になりながらの観察だが
これが昔流行っただっちゅ~のポーズに
近いせいで胸が強調される。
これがワイルドで集中が切れそうになり
ちょっと困った。
・・・・
今度、おたまとかの一時置きに谷間に挟んでみるか。
「マスター噴きこぼれそうですが」
いかん
早速、集中が切れてる
リソースがエロ思考に大幅に持っていかれている。
俺は料理に集中した。
三人で丸太小屋の中で頂く
んーやっぱり食事は人数多い方が良いな。
「アルコよ。その付け耳はもう外して良いぞ」
俺はトモゾウの真似をしながら言った。
小さくないな
でかアルコちゃんだ。
「は?これは・・・本物の耳ですが」
コスプレ美女じゃないのか
そういえば種族が人間じゃなかった。
「ベアーマンの女性ってみんなそうなのか」
いや
前回、集落を訪れた時にも
メスは居たが外見で見わけが付かなかったな。
「いえ・・・私はその・・・」
言いにくそうに
アルコは身の上話を語り始めた。
稀に出る突然変異だそうだ。
その体のせいで幼い頃は酷いイジメに遭っていたそうだ。
初見で感じた自信なさ気な態度は
そのせいか
妹を守るためにマイザーは一人奮起した。
それが功を奏し若手の中で彼に敵う者は
居なくなる程、マイザーは強くなったが
マイザーの見ていない時には
嫌がらせなどが繰り返されたそうだ。
マイザーは一生俺が守ると言ってくれたが
そのせいで将来有望なマイザーの
足手まといに自分がなるのは嫌だ。
これが旅立つ理由の一つ
自分で自分の居場所を作りたい
これが二つ目の理由だ。
三つ目を語る当たりで
泣きが酷くて何を言ってるのか
分からなくなってきた。
思い出す行為とは追体験だ。
過去のイジメの酷さが伺える。
俺は立ち上がりアルコを
抱きしめ頭を撫でてやった。
椅子に座ってくれていると
丁度、頭が俺の胸辺りだ。
「ゴメンな。知らないとは言え
酷い事を聞いちまったな」
しばらく泣かせてやる。
「三つ目はまたの機会に聞かせてもらうよ」
落ち着いて来たようなので
そう言ってきかせた。
アルコは返事の替わりに何度も頷いた。
服がすげぇ濡れた
どんだけの量、涙蓄積してんだ。
ふと見ると
ミカリンも泣き・・・真似だな
を、していた。
俺は濡れた服を見せつける様に
ミカリンを抱きしめる為迫る。
「よしよし。そっちもかわいそうに」
服の状態に気が付いた
ミカリンは泣き真似を即座に中止
回避態勢に入る。
「ちょ、何それヤメ・・・ヤメ」
逃すか
「よしよし」
「あああああああああああああ」
そんなんで風呂タイムだ。
俺は裏手に回り例によって慎重に攪拌し
温度を確かめる。
「今日はちと熱いな」
すかさずバケツを攪拌に使った棒で
水面から救い上げ脇に退けると
もう一回りデカい裏返したバケツで蓋をする。
これで安全に消化出来るのだ。
湯が溢れる先にも
岩を粘土で漏れ止めした層があり
排水も一時的にそこに溜まる様になっている。
洗濯用の層だ。
俺は脱いで放り込む。
「今日、熱くない?!」
俺の頭上越しに脱いだ服を
3Pシュートの様に放り投げながらミカリンが言った。
「今丁度良くするよ」
俺は湖から引いている竹のパイプの
栓を抜き風呂に水を追加した。
ミカリンは攪拌棒でかき回してくれた。
俺達の行動が気になったのだろう
アルコが裏手に現れる。
「あの・・・何が始まるんですか」
第三次せか・・・じゃない
「何って風呂だよ」
首を傾げるアルコ。
まさか・・・。
聞いて見るとそのまさかだった。
ベアーマンに風呂の習慣は無かった。
確かに
女子なので黙っていたが
アルコは結構匂いがきていた。
んー猿は入るよな
熊ってどうなんだろう
俺は風呂の説明をした。
アルコは乗り気だ。
俺とミカリンの見よう見まねで掛け湯をって
おーい服と靴そのままじゃないか。
「コラ、風呂に入るには服を脱がないと」
また首を傾げるアルコ。
「え・・・これ以上、脱ぐ物は有りませんが」
なんと
同族の毛皮で作ったビキニとブーツと
思い込んでいた服は
地毛だった。
じゃ
ずっと全裸だったって事ですか
思えばベアーマンは武装以外は着て無かったか
あまりに良く出来た定番スタイルだったので
ビキニとブーツだと勘違いした。
「ホントだ。毛、退けるとあるよ」
「きゃっ」
失礼にもミカリンは
アルコの毛を弄って確認した。
俺はすかさず「どれどれ」と言って
参加しようかと思ったが
普通にさせてくれそうなので止めた。
こういうのは嫌がる相手でないとな。
「「うぃいいいいいいいいいい」」
「うっ・・・ういいいいい?」
別に謎の掛け声は真似しなくても
良いのだが、まぁいいか。
俺は灰と油、芋焼酎から抽出したアルコールで
作った石鹸を使って二次層で
服を踏んずけながら体を洗う。
体と服の同時洗浄だ。
香料は手に入らないので
あの独自の香りは無い
ちょっとさみしい。
「魔法より、そういうの作り出す方が不思議だよ」
俺の石鹸を見てミカリンが
呆れとも感心とも取れる発言をした。
「恐れおののけ、これが人類の力だ」
俺はミカリンとアルコに石鹸とはなんぞや
から使い方と注意点を教え体を洗わせた。
二人とも気に入った様だ。
風呂の栓を抜き二次層に湯を流す
それで体と服を濯ぎ絞って干した。
最後にもう一度湯船に浸かって
おしまいだ。
俺は上がったが
女子二人はまだ居るといって風呂続行だ。
なんで女子って
いつまでも風呂入ってるんだ。
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