デビルバロン 3
@tetra1031
第1話 リスタート
宮本たけしは今ログアウトしていった。
今の自分が彼がプレイ中に懸念していた
コピーされた人格とやらなのだろう。
いいなぁビール飲めるのか。
羨ましさ半分。
ざまぁ向こうじゃただの人間だ。
優越感が半分だった。
機能を失い砂になった一粒一粒の背後。
背後と言っても物理的背後では無く
何て言うか、その
次元的な背後
まぁとにかく背後にミカを飲み込んだ
光の裂け目が現れ全て吸い込まれていった。
視覚がもう無いのだが
それを認識する事が出来た。
光のトンネルとでも言おうか
その中を進む際に体が再構築されていく
ババァルの空間転移とはまた違った感触だ。
どこへ向かうのか
再構築が終了し
ぼんやりと周囲に漂っていた
意識は体へと戻り、形を取り戻す。
たけしー新しい体よー。
って思えば
〇ンパンマンは頭を交換するが
奴の自意識は体のどこにあるのだろう。
頭以外なのは間違い無いはずだが
それなら体だけで行動すればイイ
パンチを攻撃の主軸に据えるなら
むしろあの巨大な頭部は邪魔でしかない。
要らんだろ頭。
そう思っていた時期がありました。
しかし、今は違う。
俺は成長したぞ。
体だけだと何マンだか分からなくなるのだ。
つかパンシリーズから外れてしまう。
存在の力の根源を失うのだ。
これでは活動できない。
自分が何者であるのかその為に必須なのだ。
じゃあ
今の俺はどうなのだろう
オリジナルの自意識が出て行ってしまった。
多分
いや絶対
残ったコピーの俺の事なんて
考えるハズも無い。
思いつきもしない。
せいぜい転ぶ振りしておっぱい掴めないか
とか、そんな事位しか考えない脳みそだ。
だって俺だもん。
嫌なくらい想像がつくわ。
などと
いつもながら下らない事を
考えていると時間が来たようだ。
触感が帰って来た。
俺は仰向けに寝そべっている。
背中のチクチク具合から察するに草の上だな。
目を開けゆっくりと起き上がる。
手を握ったり開いたりして感覚を確かめた。
視力はOK
反応速度はまぁ人レベルだな。
聴力はどうだろう。
そう思った時
声が聞こえて来た。
「やっと来た」
声がした方向を向く
小麦色の肌
本来なら隠す部分も同じ色なので
日焼けでない事が見て取れた。
ショートの金髪
碧い瞳
華奢な体つきの美少・・・・
年?
女?
どっちだコレ
「欲情した?する?」
ナオコとしむらのWケンコンビの
古典コントみたいな事言って
またぐらを開いて見せて来た。
俺の心の声が聞こえるのか
はいはい美少女でした。
俺は両手を合わせ拝んでから立ち上がり言った。
「大人をからかうんじゃない。」
言ってから自分の声の違和感に驚いた。
なんだこの声
高ぇ
「自分だって子供じゃん」
ケラケラと笑う少女。
彼女は岩の上に座っていた。
その岩の向こうに見える湖
この景色。
知っている風景だ。
俺は少女をスルーして
湖まで急いで歩いた。
立ち上がる際に
見た自分の下半身が
いつもの人間の俺の下半身とは
異なっていた。
毛が少ない。
おれは湖面を鏡替わりに
自分の姿を写した。
前回は天使のつもりで見て
悪魔だった事に嘆いたが
今回は大人のつもりで見て
餓鬼が写っていて嘆く事になった。
あちゃー
これ小学校卒業か
中学入学あたりだろ
一物に生え始めたばかりの頼りない毛。
あー術式で取り除いた
皮がすっかり元通りにー
ヴィータか?
いや存在として時間が巻き戻ったのなら
この頃は術式前だからあって当然なのか
いや
今そんな事に思考リソースを割いている場合か
取り合えず俺は湖に向かって叫んだ。
「ウゾダドンドコドーン」
なに
リスタートの初期村
俺ココなの?
村じゃないし
セーブポイントのオブジェクトすら無いよ
しかも全裸って
「どうかしたの?」
少女が岩から下りて
四つん這いになっている俺の
所まで来てそう言った。
どうもこうも無いな
まず
お前は誰だ。
俺はデビルアイを起動させる為に
半人化
・・・
半人・・・化・・
できない。
俺は咄嗟に立ち上がり
また湖に向かって叫んだ。
「ウゾダドンドコドーン」
「ウゾダドンドコドーン」
少女も面白がって真似し始めた。
しばらく二人で叫んだ。
「ねぇコレ何の意味があるの」
しばらく叫んで飽きて来た少女はそう聞いて来た。
「無いよ」
あるわけないだろ
言わせるなよ。
「つか、お前誰だ」
当初の疑問を解決しよう
幸い翻訳機能は生きている様だ。
言葉での意志疎通は可能だ。
「・・・ああ、年齢も種族も違うもんね」
少女はそう言って俺の正面に立ち
自己紹介をしてきた。
「魂は天使長のミカだよ。
呪いを返されてこんな状態さ主様。」
ミカ
最終決戦で俺に呪いを掛けて来た天使だ。
天使より上位の女神の力を使って
返したんだっけな。
自爆技だったが上手くいって良かった。
「それだ。どんな呪いだったんだ」
俺は返しただけで
どんな呪いなのか知らないのだ。
このちんちくりん状態の原因が
呪い返しである事は間違い無いだろう。
「いや、面白い相手だったから
下僕化して持ってかえろうと思ってさ」
それは理由で
呪いの詳細じゃないが
俺は続きを待った。
「悪魔のままじゃ天界に入れないから
同種族に変換して奴隷にする『捕縛』系の
術だったんだけど・・・。」
同種族化か
つまり悪魔の肉体では無く
操作していた俺の種族って事になったのか
「コレ・・・人間だよね。なんで人間になるのさ」
「俺が人間だからだ。」
それ以外無いだろ
やっぱりバカだなコイツは
ミカは、そこら辺に落ちていた1m弱の
枝を一本拾うと自分の正面に立て
両手を先端の上に乗せて言った。
「問おう、あなたがマスターか」
肌の色的にはソファにふんぞり返っていて欲しかった。
「種族は分かった。次は年齢だ
なんでこんなガキになったんだ」
考えあぐねた挙句
ミカは自信無さ気に言った。
「多分・・・宇宙時間を均等に分割したんだと思う」
元の俺27歳÷2人=13.5歳
って事か
なんか納得した。
しかしコレは困ったぞ。
悪魔化出来ないんじゃ、ただのひ弱なガキだ。
オリジナルの俺
替わってくれ
ショックに頭を抱える俺に
まとわりつくミカ
何で何でとうるさい
ちょっと頭に来たので
怒鳴ってしまった。
「うるさい!ダマレよ」
怒鳴った後に瞬時に後悔した。
大人気無いだろ・・・・
・・・・
大人じゃないからイイのか。
いや、肉体の話じゃない
謝っておこう
そう思いミカを見て俺は驚愕する。
只ならない状態になっていた。
瞳孔が開いたり閉じたりを繰り返し
全身から冷や汗をかき
ワナワナと震えている。
顔色も紫っぽい
両手で喉を押え
よだれを垂らしている。
「おい・・・どうした?」
俺を見て手で話せない事をジェスチャーしている。
「おい、分からない話せよ」
俺がそう言った瞬間に膝から崩れ落ち、
地面に転がり荒い呼吸を始めるミカ。
如何にも苦しみから解放された直後って感じだ。
もしかして・・・呪いのせいか
俺が「ダマレ」と言ったからなのか
俺は謝罪をして詳細を尋ねた。
答えは予想通りだった。
呪いの強制力だ。
主の命令に絶対逆らえない。
魂をヤスリで削るような苦痛を
自由自在に与え放題なんだそうだ。
「自分だって女神に散々やられて
辛さは分かっているでしょうに」
痛みの治まって来たミカは
恨めしそうにそう言った。
「いや・・・一度もされた事無い」
恐らくその機能はあった。
解析した俺自身ならよく分かる。
死に至らしめる事だって可能だろう。
「なんだかんだ言っても
やっぱり女神様だったんだね」
ミカは半分意外
半分は納得と言った微妙な表情になって
そう言った。
「ミカ。これ解除しよう」
俺はそう提案した。
「ハァ?何で」
「俺は勝利したかっただけで
お前に呪いを掛けたかったワケじゃない」
正直に打ち明ける。
便利なら、そのままでも良いが
これは危険だ。
「そう言ってくれるのは
嬉しいんだけどさ・・・エヘヘ」
なんか様子が変だ。
「おい、まさか」
「うん、解けない」
詳しく聞いて見たトコロ
この体の宇宙時間まぁ天寿と同意かな
が
尽きるまで消えないそうだ。
「自殺、または殺害された場合はどうなるんだ」
「ゴーストの奴隷が出来上がり」
死んでも奴隷が解けないのか
なんて恐ろしい呪いだ。
こんなモノを使おうだなんて
お前それでも天使か
「・・・俺が死亡した場合は?」
「安全機構が作動して僕が身代わりで
先に死亡する。その後のダメージで
本人が死んだ場合は晴れて解除かな」
コレ掛けられた方はたまったモンじゃないぞ
まぁ呪いなんだから、みんなそんな物かもだが
もし返せないで食らっていた場合
俺はどうなっていたのだろう
今更考えても仕方が無い
というより
考えるのが怖いので止めた。
何重もの意味で
俺は改めてヴィータに感謝したのだ。
悪魔ボディで無い今なら
祈っても大丈夫だろう。
俺は祈りを捧げる為
指をクロスして手を合わせ
目を閉じ・・・・・・
・・・・・・
なんか・・・・
目を閉じた状態の時の真っ暗な
視界の右下の方に
淡い緑色の光を発している
一本の棒が見える。
これメニューが最小化してる状態じゃないのか
出展
ウゾダドンドコドーン オンドゥル語、訳すと「嘘だそんな事」と言う意味である。
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