老後

@yuzuki_desuze

老後

『あははっ!りょうちゃんおばけこわいのぉー!?……じつはさっき、たすけてーってさけびごえきこえたの。ふふっうそだよ!あははは!』




『ぶっ!遼ちゃん、まだお化け怖いの!?今度の肝試しどうするー?あたしがおてて繋いだげよっか?』




『あ、ねえねえ聞いてよ!うちのクラスに猫塚遼っているじゃん?遼ちゃんさ、幼馴染みなんだよね!でさ、遼ちゃんちっさいときからすっごいビビりなの!面白くなーい!?』




『ん?どうしたの?千波。あ、パパの学生のとき?いいよいいよー、話す!遼ちゃんね、めっちゃ怖がりだから、後ろから驚かすだけで凄い悲鳴挙げてたの!その勢いで隣の机に腰打ってそのあと転けるし。しかも病院行ったら骨折してたんだってさ。怖がりだしドジなんだよー。』




『遼ちゃん、今あたし、笑えてるかな。最後まで、千波のこと笑顔で送り出してあげたいんだ。泣き虫のあんたが笑ってるのに、……あたしまで泣いてちゃダメだよね!』




『………りょう、…ちゃ……。』





「……未希。」



 この間の葬儀が終わってから、未希の夢ばかり見る。

 小さい時から一緒で、結婚して子供もできて、幸せな毎日だった。


 怖がりとバカにされているときが幸せだったといなくなってから気付いた。今さら遅すぎるのに。


 娘の千波が事故で亡くなって幾年。

 泣いたのはその日だけで、二人で支えあって、笑いながら生きてきた。


 その生活が終わり、一人になった今。


 妻と娘に想いを馳せながら、一人庭の木を眺める。

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