ねこ

@yuzuki_desuze

ねこ

「んな!?」


 部屋に入り唐突に叫ぶ"私"。

 和室でのんびりしようとしたところ、床一面にびっしりと紙片が広がっていたのだ。

 元あった場所を見ると木枠と薄い紙が。


「いやいやいや、いったい誰が!」


 ふとそこで思い立つ。

 そういえば"あいつ"がいたな、と。


 "あいつ"は不意に現れてはブツをねだりに来るのだ。


「あのときはたまたまあったけど……。

今日あるかな。」


 あのときとは、"あいつ"が先日やってきたときのことである。

 そういえば初めて来た日も、今日と同じく床一面に紙片がちりばめられていた。

 誰も頼んではいない。


「えーっと……。」


 ごそごそとキッチンの収納を漁る。

 すると、わりとすぐ出てくるもんだ。


 お目当ての煮干しが。


「おい!犯人は分かっているんだぞ!さっさと出てこい!」


「ねこ!!!」


 という名の猫である。

 みそなのはあえて平仮名にしているところだ。

 上手い名前は思い付かなかったが少しひねりたかったのだ。

 ついでに言うと少し懐いているようだ。


「にゃ?」


 とぼとぼと歩いてくるねこ、煮干しを持ち相対する"私"。

 どうせご飯欲しさに来ているのであろう。


「ほーら、大好きな煮干しだぞ~。満足したら帰れよ~。」

「んにゃう。」

「じゃあなー。……ふう。」


 さて、こうして昼下がりの「"私"とねこと障子事件」はこれにて幕を下ろしたのであった。



 そして、少し時間が経ち。


「よし、張り替え終わり。」


 と同時にねこの「んーにゃっ」という間抜けな声とビリっという嫌な音。


「"呼んだ?"じゃないわ!!もー!今張り替えたのに!」

「にゃーにゃんっ」


 呑気なねこは「まあそういうこともあるよ」というような感じで返事をした。


 この昼下がりの「"私"とねこと障子事件」。


 まだまだ続きそうである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ねこ @yuzuki_desuze

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る