『大絶滅恐竜タイムウォーズ』 草野原々

『大絶滅恐竜タイムウォーズ』 草野原々


 一八三二年、大荒れの洋上を航海中のビーグル号の甲板で、ダーウィンは不思議な老婆からとあるお話を聞かされる。それは二十一世紀、日本の小田原で暮らす女子高生たちが白亜紀へタイムトラベルをして、知性化鳥類と戦争をするという物語だった。かつて猫型人類と人類の進化をかけて戦い犠牲を出しつつも勝利を収めた彼女たちは、この戦いにも勝利できるのか⁉  ……といった展開にはならず、とんでもない暴走の果てに時間と時間で殴りあうような派手で壮大な時間戦争が繰り広げられるSF小説。



 SF百合小説『大進化どうぶつデスゲーム』の続編。ちょっとダークでブラックな大長編ドラえもん的な趣だった『どうぶつ』とは大いに異なる、SFってなんでもアリなんだなと思わせるとんでもない小説。こういうのをワイドスクリーンバロックというのかもしれない。

 ハードSFは苦手でもワイドスクリーンバロックと呼ばれるているものは割と好きなので前作よりは楽しく読んだが、ただ私はSFについて語る語彙を持たないので「なんか派手で面白かったです」としか言えないのだった……。百合度は女子と女子が時間戦争を繰り広げているのでこっちの方が高いと思われる。


 しかし作中では東京オリンピックが予定通りに開催されているので、コロナ禍後の二〇二三年に読むとなんとも言えない気持ちになってしまうのを否めないのであった……(本作の刊行は二〇一九年)。こういう不測の事態もあるので、買った本を積読の山の裾で寝かせすぎるもよくないなと反省した次第である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る