『メイズさんの言うとおり』　小金井ゴル

　琉香が引っ越してきた町には、怪しい洋館と「メイズさん占い」と呼ばれる腕時計を使った占いがあった。転校先のクラスを支配する女王様、真珠ちゃんに勧められて琉香は占いに手をだすが、なぜか琉花が天候したその日からメイズさん占いは必ず当たるようになる。

　百発百中の占いがあればなんでもできる。というわけで、真珠ちゃんたち女王様グループの面々は好きな男子と仲良くなったりお金を稼ぐなど、占いを便利に使いだす。そんな事態に違和感を覚える琉香だが、かつて真珠ちゃんに反論したためにクラス内で孤立している呉（ウー）さんこと呉（ウー）宇珊（ユーシャン）の姿を見てしまうと、怖くて自分の意見を封じ込めてしまう。しかしユーシャンは琉花のことを気にかけ、占いには手を出さないように忠告する。そんな態度が真珠ちゃんの怒りを招き、二人はとっさに洋館に隠れる。そこで見たのは封印された少女の人形だった。

　琉花とユーシャンはその日から洋館と少女の人形やメイズさん占い、台湾出身の道士だったというユーシャンの祖父との関係について調べ出し、どうやら自分たちの因縁が浅くないことに気づく。そしてメイズさん占いに頼っていた真珠ちゃんたちが一人ずつ行方不明になるなど、二人の身辺に怪現象が起きるようになり──。

　ポプラキミノベル大賞を受賞した、ホラーな児童小説。百合ホラーだという評判を耳にしたという、大変浮ついた理由だけで手に取る。

　精度の高い占いの背後に潜む呪いの人形と曰く付きの洋館、一部の生徒に支配されて緊張を強いられる中学生活、たまたま同じクラスになっただけに見えた二人の少女の因縁と友情、洋館を舞台にしたアクションといった各要素がうまく絡み合い、読後の満足感の高いエンターテイメントホラー小説になっていた。ボリュームもちょうど映画一本分といったところか。虐められるのを怖がる内向的な琉花のキャラクターもそうだが、キャラクターの皆にほどほどに現実の中学生らしさがあるところも好印象だった。何か怖くて楽しいものを読みたい現役の小中学生の他、児童向けの小説を書きたい方にも是非おすすめしたい。得る所が多いと思う。

　琉花と正義感の強いユーシャンの友情もよいものだったけれど、それ以上に女王様の真珠ちゃんがよかったですね。意地悪な女の子のキャラクターがきっちり意地悪なことをやってくれてると嬉しくなる人間なので。ちゃんと作中でバチも当たるので、意地悪な女の子なんてムカつくし嫌いだよという方もスッキリできる仕様になってますよ。　