お年玉
お正月になると、親戚の大人たちがあいさつ回りに次々と訪れる。本家だから当然だけど。
「里香ちゃん、今年で何年生?」
指を三本突き出す。面倒くさい。独身のキモい叔父さんがこっち見てくる。キモい。手を突き出す。ほら、さっさと貰ってやるから出しなよ。
「はい、お年玉。」
里香ちゃんへ、そう書いたのし袋を徴収。パパもおじいちゃんも私には甘いからスルー。
ママはよその人間だから私を叱れるはずもない。二階に上がってさっそく中身をチェック。
「は、5000円とか舐めてんの?」
キモいおじさんの、ぼろぼろの五千円札。
「だっさ。大人のくせに」
けどお金はお金。今年の収穫はぜんぶで12万円。去年より少ないじゃん。しけてる。だけどこれが「本家」の役得だから。
◇
今年のお正月はいくら貰えるかな。20万は堅い?ふんふん鼻歌しながら正月を待つ。
「里香ちゃん、久しぶり。仕事どう?」
「フツー。」
めんど、干渉してこないで。今絶賛ブラック企業のパワハラで死にそうなんだから。
職場のおばさんたちに「非常識」とか人格否定されてて、もう辞めよっかなって思ってるのに。
黙って手を突き出す。ほら、出しなさいよお年玉。すると伯母さんは苦笑いした。
「里香ちゃん、もう社会人だから。」
皆けらけら笑いだす。何それ、聞いてないんだけど。
「おじちゃん、おばちゃん、あけましておめでとう。」
いとこの娘が歩いてくる。
「おめでとう未希ちゃん。はいどうぞ。」
「ありがとう。」
「私はあげないから。」
そう言った。意思表示は大事。堂々宣言。するとキモい叔父さんがぽち袋を持ってやってくる。
「じゃあ叔父さんがあげるよ。はいどうぞ」
「ありがとう、おじさん」
「こんなに頂いていいんですか?」
よそものの、いとこの奥さんが申し訳なさそうに尋ねる。
「あげる相手が居るだけ幸せだからさ」
それを聞いた親戚たちはどっと笑って口々に叔父さんを褒める。
「それもそうか」
「いいとこあるじゃん。」
ははは、と皆で笑う。
私の時は5000円だったのに。おもしろくない。本家の正月ってうるさいし、託児されるしマジサイアク。
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