お年玉

 お正月になると、親戚の大人たちがあいさつ回りに次々と訪れる。本家だから当然だけど。


「里香ちゃん、今年で何年生?」


 指を三本突き出す。面倒くさい。独身のキモい叔父さんがこっち見てくる。キモい。手を突き出す。ほら、さっさと貰ってやるから出しなよ。


「はい、お年玉。」


 里香ちゃんへ、そう書いたのし袋を徴収。パパもおじいちゃんも私には甘いからスルー。


 ママはよその人間だから私を叱れるはずもない。二階に上がってさっそく中身をチェック。


「は、5000円とか舐めてんの?」


 キモいおじさんの、ぼろぼろの五千円札。


「だっさ。大人のくせに」


 けどお金はお金。今年の収穫はぜんぶで12万円。去年より少ないじゃん。しけてる。だけどこれが「本家」の役得だから。



 今年のお正月はいくら貰えるかな。20万は堅い?ふんふん鼻歌しながら正月を待つ。


「里香ちゃん、久しぶり。仕事どう?」


「フツー。」


 めんど、干渉してこないで。今絶賛ブラック企業のパワハラで死にそうなんだから。


 職場のおばさんたちに「非常識」とか人格否定されてて、もう辞めよっかなって思ってるのに。


 黙って手を突き出す。ほら、出しなさいよお年玉。すると伯母さんは苦笑いした。


「里香ちゃん、もう社会人だから。」


 皆けらけら笑いだす。何それ、聞いてないんだけど。


「おじちゃん、おばちゃん、あけましておめでとう。」


 いとこの娘が歩いてくる。


「おめでとう未希ちゃん。はいどうぞ。」


「ありがとう。」


「私はあげないから。」


 そう言った。意思表示は大事。堂々宣言。するとキモい叔父さんがぽち袋を持ってやってくる。


「じゃあ叔父さんがあげるよ。はいどうぞ」


「ありがとう、おじさん」


「こんなに頂いていいんですか?」


 よそものの、いとこの奥さんが申し訳なさそうに尋ねる。


「あげる相手が居るだけ幸せだからさ」


 それを聞いた親戚たちはどっと笑って口々に叔父さんを褒める。


「それもそうか」


「いいとこあるじゃん。」


 ははは、と皆で笑う。


 私の時は5000円だったのに。おもしろくない。本家の正月ってうるさいし、託児されるしマジサイアク。

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