こんな仕事
「こんな仕事さ、さっさと辞めた方がいいよ。」
急いで服を着ながら、男はそう告げる。
「君まだ大学生でしょ。就職はちゃんとした所でしなきゃ。こんな仕事、おばさんになったらできやしないよ。」
客は大体こうやって、後ろめたい行為の言い訳を共犯の私に押し付けて去る。売るものがいて、買うものがいる。ただそれたけだ。
どうせ誰に言っても分かっちゃくれない。口をゆすいで、シャワーに打たれながら考える。
奨学金だけでは払いきれない教材費や設備費。実習費に教科書代が高くつくことを。
綿密に組まれたカリキュラムのせいでまっとうなバイトじゃ間に合わないことを。
私の下には3人の弟妹が居て、母には頼れないことを。
長年の闘病の末に父が死んだことを。
逆に話したところで金を引き出そうとするお涙頂戴の嘘話だと笑われるだけだ。頂き女子。そんなの可愛い娘だけだよという嘲笑のおまけつきで。
今しかできない仕事。それは美しくない自分が良く分かっている。私は安い。けれど若いから売ることはできる。
だからどんなことをしてもに学費を間に合わせて資格を取って働きたい。
次の男が部屋に現れて私は笑顔を作る。私の心。それだけには指一本触れられたくな買った。
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