魔眼の時と成り上がり

矢斗刃

第1話 現実と夢と異世界


ここはどこだ?

「大丈夫か?坊主?」と声が聞こえる。

「だれ?」と呟く。

うっすらと目が開いてくる。


そこには防具と剣を持った男がいる。

「起きたか?。」

「ここはどこ?」と疑問に思ったことを僕は聞いた。


「ああん、何言ってんだ。ここはダンジョンの中だろう?」

そんなことを言い出す大男。

肌が褐色で、顔はイケメン、ちょっと悪そうな顔をしている。

戦士の鎧を着て、盾を持っている。


「大丈夫坊や?」

そう聞いてきたのは女性でステッキを持っている。

ローブとスカートが一体化していてラフな格好をしている。

なんだか魔法使いみたいだ。


「坊や?」と彼女が言っていたことを思い出す。

僕は自分の身体を見渡すと身体が小さく。

足と手もなんだか短くなっている。

服はなんだかボロボロ。

それを見て・・・僕は。


「なんじゃ、こりゃーーー。」と思わず大声をあげてしまう。


〝なんじゃこりゃーー。〟

その声がダンジョンの中に響き渡る。


「ちょっとシッー。黙って。」と女性に口を塞がれた。

顔が近い、近いよ。とドキドキしている僕がいた。


「まずいな。モンスターが集まってきているぞ。」と臨戦体勢に入る褐色の戦士の男。

「だから言ったじゃないか。」と急にどこかから現れた全身忍び装束の女?

その忍者は忍者刀を持っている。


「お前が言いたい事はわかる。けど、こんな所に子供を置いて行けるわけないだろう。」

「ふん、もしモンスターなら私の手で殺してやるからな。」

そんな風に言って首筋に刃物が当たっていた。

恐い、なにこの忍者の人。


「来るぞ。」と何体ものモンスターがこちらにやってきている。


それはこの世の物とは思えない異形のもの達。

向こうの世界で言う。

モンスターと呼ばれるもの達。


オークだったか?そんなモンスターの名前だった気がする。

「オーク?」


「こいつ等一体、一体は弱いのに、数だけは多いからな!」

戦士の男が一体のオークを切り伏せた。


「瞬伸。」

言葉と共にオークと忍者の位置を一瞬で縮め、オークを二体も狩った。


「ファイヤーボール。」と魔法使いの女がオークめがけて炎の球をぶつけた。


「ぐぎゃー。」と言って丸焦げになるオーク。


「おおう。」と目を輝かせてその光景を見ていた。

なんだかわくわくしている自分がいたりする。


しかし、未だオーク達はやってくる。


「多いな。」

「切りがない、やっぱりその子、囮に使われたのかも。」とこちらを睨んでくる忍者。

「そんなこと言わないでアヤメ。まだ子供なのよ。」と魔法使いの女の子に庇われた。


「二人とも喧嘩はそれまでだ。ここは退こう。」と判断を下す褐色の戦士。

「はーい。」

「わかった。」


「坊主、来い。」と戦士の背中に背負われる僕。

鉄の鎧を着ているからだろうか。鉄の感触が痛かったりする。


彼等パーティーは走った。

しかし、オークはその彼等の前に立ち塞がる。


「しまった。」と臨戦体勢に入る戦士。

「おびき出された。」と苦い顔をする忍者。

震えている魔法使い。


僕からは見えないかったので戦士の背中から降りて、前を見ると。

見上げるほどでっかいオークがいる。その右手には大きな斧が握られていた。


「オークジェネラル。」と戦士が絶望の表情で言う。

魔法使いの女が冷や汗を流した。

忍者は周りを見渡し逃げる算段をつけようとする。

しかし、後ろからはオークが近づいてきている。


「ぐぁぁぁぁぁ。」とオークジェネラルは咆哮を放った。


三人はその咆哮にやられて身体が震えている。


「この子を囮に使って逃げよう。」と忍者が言った。

「・・・そんなことができるか。」

「そうよ。」


「貴方たちが出来ないなら私がする。」

オークジェネラルに僕を突き出そうとする忍者。


「やめろ!」

「やめて!」そんな風に抗議する二人。

しかし、忍者は僕をオークジェネラルの前に突き出した。


図らずも僕はオークジェネラルと睨み合っている。


「くっそー。」と駆け寄ろうとする戦士を抱きついて制止する忍者。

「行っちゃダメ。」と止める。


オークジェネラルは拳を振り上げ、僕を潰そうとした。

僕はその瞬間まるで時がスローモーションのように見えた。


ドッカーン。という音と共に砂埃が舞う。


思わず目を伏せる魔法使いの女性。

「くっ。」と悔しがる戦士。


やったと思った奴は、そこに誰もいないことに気付いた。

「ぶもっ?」と首をかしげる。


「こんちくしょぉぉぉ。」とオークジェネラルの背中から駆け上がる僕。

しかし、そんな僕は武器すら持っていない。

どうしよう?と悩んでいる暇もない。


奴が背中に手を伸ばしてきた。

僕は思いっきり飛び上がる。

その瞬間奴が地べたに倒れ込む。


「ぶもぉぉぉ。」とその衝撃は計り知れない。


その時の僕はヤケクソだったと思う。

今考えるとそんな危ないことは出来ないだろう。


それは時に人はチートと呼んだり、異常と呼んだり、はたまた勇者や、英雄と呼んだりしたりする。


そんな瞬間に三人の冒険者は出会った。

それはその三人にとっては奇跡だったのかもしれない。

それほどの幸運に、その瞳の虹色の魔眼に見入った。


「こん畜生!」と炎を纏ったかかと落としがオークジェネラルの首に決まって、奴の息は絶えた。



僕の耳に鳴り響くLVアップの声。

まるでそれはゲームの世界のような気がして来る。

ここは本当にどこだろうか?


向こうの世界と違ってモンスターなんている世界。

大変な世界に来てしまった。


身体の構造が変わっていく気がする。

なんだか凄く眠い。

あとは任せました。とその三人の冒険者を見ると皆驚いていた。


ああ、思い出した。

僕は向こうでイジメにあって、この世界に逃げ込んだんだ。

この世界が僕の現実なんだって思い出した。

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