第23話 便利屋さんとジエイミの日常
〇〇〇地獄のトレーニング
便利屋さんと旅をしてから数日が経ちます。
「本当に愚図だなお前は、基礎体力がなっていない!」
戦闘訓練をしていますが、手も足も出ません。
便利屋さんの特訓は厳しいモノでした。
腕立て四回を三セット。スクワット三回を三セット。腹筋二回を二セット。ブリッチ五秒。
一セットこなすたびに全身から悲鳴が上がります。
「はぁ……はぁ……」
「こんなこともできないのか! そこ! スクワットちゃんと踵を浮かせ! 俺が現役だった頃は千回やらされたぞ! できないと木刀でぶん殴られたわ!」
「はい!」
流石に便利屋さんは叩きませんできした。
「自分の身は自分で守れなくてはならない。自衛は大事なことだ。そのために何が必要かが分かるか!」
「屈強な体です!」
「そうだ! あと一回! スクワット!」
「はい!」
へとへとになりながら今日のノルマを終えました。
「ぜぇ……ぜぇ……」
宿屋に泊ることになり食事の時間です。
便利屋さんは食事の時も兜を被っていますので顔が見えません。
「便利屋さん。どうして食事中も兜を被っているのですか??」
「……黙って食べろ。それと運動後には肉食え肉」
便利屋さんは私の質問に一切答えてくれません。
そして翌日です。
「痛い~痛い~」
筋肉痛で悶えました。
「だから肉を食べろと言っただろ……全くお前は……っふ」
私の気のせいでしょうか……兜の裏で笑っていた気がします。
「ごめんなさい~」
〇〇〇ケーキを作ろう!
しばらくの間、特訓は続きなんとかこなせるようになりました。
最初は無愛想で無口だった便利屋さんも話しかけると答えてくれるようになります。
「便利屋さんは、ずっと私の傍にいてくれますがご家族とかいないんですか?」
「いない。職業柄そういったものは持たないと決めている。それにお前の傍にいるのは仕事だ。その分の対価も依頼主からもらっている」
「じゃあじゃあ、便利屋さんは好きな食べ物ってあるんですか?」
「……特にはないが……甘いものは好きだな。それがどうしたという?」
「いいえ、ただ聞いただけです……甘いものが好きなんですね……」
便利屋さんは甘いものが好き、覚えておきましょう。
数日後。私は便利屋さんが外出したのを見計らい内緒で料理を作ることにしました。
料理は昔、母に教えてもらいましたが、今回は教わっていない『ケーキ』を作ります。
材料を集め最初から作りますが失敗します。
あれれ……上手く焼きあがりません……
その後も試行錯誤をして、ようやくケーキは完成しましたが……あまり良い出来栄えではありませんでした。
未完成品。形もぐちゃぐちゃで味も美味しくない……こんなの、便利屋さんに振舞えません
すると、部屋の扉が開きます。
「帰ったぞ……? これは?」
「あ! 便利屋さん! 違うんですこれは……」
必死に隠そうとしますが……
「……何? 『便利屋さん。いつもありがとう』どういうことだこれは」
何故か口調が荒くなります。
「その……便利屋さんが甘いものが好きって聞いたから……でも失敗して……ごめんなさい!」
便利屋さんは何も言わずに、その不出来なケーキを食べます……
「ダメですって……便利屋さん!」
「味もスポンジもダメダメだ。クリームの質だって悪い……なんでこんなものを作ったんだ」
「……それは」
「食材を粗末にするのはもったいないし馬鹿げている……ふざけるのも大概にしろ!」
やはり便利屋さんは怒っていました。
「ごめんなさ――」
「――だから……失敗した奴ももってこい。今日のご飯はこれだ。しっかりと責任を持て」
食材を無駄にすることなく、失敗したケーキは二人で頂きました。
正直に言って、もうケーキはこりごりです。
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