第四章 勇者の真実編

第15話 再会した元パーティーメンバーは美人でした! 勇者の答え合わせが始まります


☆☆☆再会。美女マジョーナ・アンデ


彼女は確かに元勇者パーティのマジョーナ・アンデであった。


そして、自分が名乗っていた三つの名その全てを知っている。


「……感動の再会といきたいところだが、歓迎ムードではないみたいだな」


「そうですね、エクシリオ……しかし、勇者をやめたと思っていたらまさかこのような女性達に囲まれているとは……」


やはり彼女が何者であるか判断できない時点でこちらから語るのはリスクがある……


「イルミルを連れてこの場を離れるんだ」


「でもスシデウス君……危ないよ」


「スシデウス様を置き去りにはできませんよ!」


彼女達はこの場から離れない……仕方がないか。


「ずいぶん、信頼されているみたいですね、やはり、自分より弱い立場の相手に優しくするのは気分がいいみたいですね。彼女達は手に入らなかったジエイミの代わりですか?」


こいつ自分相手に煽ってきてるな? 正直に言えば仮初の奴隷契約でそんな気分がハーレムにはなっていないが。


だが自分に口喧嘩で勝とうとするのは無駄だ。喧嘩なら絶対に負ける自信があるが。


「二人は会話に入ってくるな、それで用があるのは自分だろ? 彼女たちに気を配っていていいのか?」


「それもそうですね、では単刀直入に問いましょう。エクシリオ・マキナ。あなたは一体何者ですか?」


どういう意図の質問だ? 転生者がバレたとかそういうパターンか? 現代知識使って無双していたからな……言うほど無双だったかは知りません。


「それは君が知っているエクシリオ・マキナだ。かつての勇者であり、魔王軍四天王を追い払った伝説を持つ優秀な勇者だろうに」


「そういうことではありません! アナタはいつから気付いていたのですか……」


彼女は自分に恐れを抱いていた。そんなはずはない。


明らかにさっきの魔法を見るにマジョーナは自分より圧倒的に格上である。


「いいや、もっと的確に言ってくれないかな、思い当たる節が多すぎるんだ。あれのことか? それともあれか?」


「全てですよ!」


そんな彼女が自分を恐れている……? とりあえず喋ってくれることに期待しよう。


「――エクシリオ・マキナが『』であり、ダンジョンで暗殺され魔王軍と全面戦争の火種に利用するためのであったこと」


……え? 


自分が『偽物の勇者』? 戦争の火種のために暗殺されるただの捨て駒?


まさか、最初に訪れたダンジョンにアークジャドウが出てきたことも全てが計画されていた?


「最初からに決まっているだろう。気付いていないと思ったのか? 少し自分を侮りすぎているぞ、お見通しなんだよ」


思い返せば、冒険者はある目的のためにダンジョンに潜っていたのに自分達と合流すると引き返していたな。


まさか……な、それに死亡フラグ立ててたやつも……恐らく金で雇われたのだろう。


「ダンジョンで助けた冒険者はアークジャドウが出現する場所に案内する誘導役だった、恐らく多額の金で雇われたのだな」


図星であったのか、彼女は生唾を飲む。


「言っただろ、お見通しだと」


虚勢を崩さない。


「貴方のステータスは最弱です。ただ光の無力な魔法が使えるだけの無能な村人を私達が『勇者』に仕立てただけだというのに、貴方がアークジャドウを撃退するなんてありえない、本来あの時点であなたは死んでいたはずなのに!」


『勇者』に仕立て上げる。随分と嫌な響きだな。これでは恐らく単独で魔王軍を追っ払ったって話も自作自演であるだろう。


「それにです、あのゴブリンもたかが村人が進行を食い止めた! あの変異種も完全に想定外でした!」


ゴブリン……あの激辛のやつか、魔王軍の仕業にしてたけど、こいつらのせいだったのかよ


「他にも! 氷雪地帯で貴方を落とした時は確実に死んだと思いましたよ! ただの村人には助かるはずがない高さでした」


あれってマジョーナがやっていたのかよ! どんだけ殺意強いのこの人、結構落ち込むぞ。でも落ち込んでる隙を見せれば相手に主導権を握られてしまう。


「確かに危なかったさ、まさか落ちた先に屋敷があるとは、マジョーナも予想外だったのではないか?」


「なっ……やはり、それも貴方の仕業でしたかエクシリオ・マキナ。我々『勇者機関』への資金援助、及び魔王軍との全面戦争を反対していたジュゼッペ・ダッラ・ベッティオル伯爵暗殺計画も阻まれた」


……誰だっけ? あ、あの別荘の貴族さんだ。


『勇者機関』恐らく彼女が属する組織。名前から推測するに勇者に関するものであるのは違いない、かなり大きな組織であるのだろう。


「彼を殺されてしまえば都合が悪いのは目に見えている、政治面でも頼りになる男だった」


とりあえず適当なことを言う。全然知らんけど。


「だから、暗殺者に気付き懐柔した。そのせいで『勇者計画』が滞ってしまいました」


……あっ! 血塗られた本! あれって暗号の類か? つまりあの本を自分が見てしまったことが伯爵の暗殺計画阻止に繋がっていた?


ということは、暗殺者ってあのメイドさん!? そうか、なるほど。メイドになりすまし都合の悪い伯爵を暗殺しようとしていたのだろう。


確かに仕事をやめると言っていたな、それはメイドではなく暗殺者をやめたということだったのかな。


まさか自分のしょうもないギャグのせいでそうなったとは考え難い……何が原因で組織をやめたのだろうか?


「それに、チャバネイルもあなたの差し金でしょう。勇者機関との繋がりに気付き糾弾した。おかげでこちらも彼を見捨てるしかなかった。かなりの痛手でしたよ」


確かにあの時、チャバネイルの裏で大きな組織が動いていることには気づいていた……そうでなければ魔王軍との繋がりもないだろう。


つまり勇者機関は魔王軍とも繋がっている……なら彼女たちの目的は一体何だというのだ?


「ジャークゲドウ。あいつは確かに強い奴だったよ、ちょうどいい相手だったさ……あんたらと同じ方法を使わせてもらったぞ、死を偽装することだ」


エクシリオ・マキナが世間的に魔王軍に殺されたことになっているのも恐らく勇者機関の差し金だろう。


だからこそ後付けでペルペッコの死も利用したということにしておこう。


「……何故最弱ゴミステータス外れスキル無能底辺雑魚クソ村人がここまで我々の障害になっているのですか」


散々な言われようである。確かに自分が最弱であるのは事実であるけど。


偽物だし、外れスキルだし、役に立たないし、無能だけど……その言われようはあんまりだ。


まぁいい。大体分かった。とりあえず自分が今とんでもなくめんどくさい状況に巻き込まれている。


「自分が最弱なのは認めているさ。だが、人の価値は弱さで決まるものじゃない。やりようはいくらでもあるのだよ」


かつて自分を最強の勇者だと思っていた人もいたのだ。ジエイミとか、ジエイミとか……あれ? 尊敬されていたのジエイミしかいなくないか?


「――最弱を最強としてイカし切る方法ってやつを」


「エクシリオ……」


勇者機関の計画を知らず知らずのうちに阻止していたのだ明らかに最優先の標的になるだろう。


「勇者を祭り上げている勇者機関だが、何故ジエイミを追放した? 彼女は手元に置いていたほうが都合がいいはずだ」


疑問だった。なぜ追放する必要があった? 本来ならどう考えても無能なのは自分だ。


「私達のパーティーにいた頃の彼女は無能でした。勇者としての素養も微塵もなかった……はずなのです。それが追放された途端に彼女は次々に戦果を挙げて行きました。更に彼女の血筋を調べると勇者の末裔であることが判明しました」


完全に勇者じゃん。もう自分居る意味なくない? 結局は血筋かよ……


「気付いていなかったと……節穴か」


「やはりエクシリオは気付いていたのですね」


そりゃ、追放モノなら定番だろう。異世界人には分からない概念であるが。


追放した相手が有能だなんて日常茶飯事だし。追放した奴が痛い目見るのもな。


「自分が追放されるものだと思っていたぞ、あのパーティーで一番貢献していなかったし。ま、解散したのだから関係はもうないが」


「それは……そうですが、随分思い切りがいいのですね。偽物の勇者だと知ってあのような演説が出来るとは……」


それは忘れてくれ、あの場のノリで言ったことだ。


「やはり……貴方は危険因子『勇者計画』にとっての一番の障害だ。例えステータスが最弱であっても最初から暗躍しているほどの切れ者なら排除するしかありません!」


魔法を詠唱する。


圧倒的な殺意を感じた。やばい! やばい!


これでは彼女に殺されてしまうのではないか!

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