第23話 見習い女神ミーナ、ムキムキになる

「ショウゴ~スキル使うの怖いようぅうう~~」

「ミーナ! 大丈夫だ、おそらく強化系のスキルだろ?」


 現状のピンチを脱するため、ミーナの温存(?)されたスキルをお披露目する時がきたのだ。


「ふわぁああ……わかったわよぅ! やればいいんでしょ、ステータスオープン!」


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 使用可能魔法

 ・「えいっ」風属性

 ・「やあっ」火属性


 ☆特殊スキル

 筋肉製造マッスルメーカー

 ・物理攻撃が大幅にアップする


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 ふむ、やはり筋力強化のスキルとみて間違いない。効果も物理攻撃アップだしな。


「ミーナ安心しろ! 単純に攻撃力が上がるスキルのはずだ! 特に痛いことはないぞ!(たぶん)」


 おそらくは体が光って、「力が強くなっているぞ」みたいな演出だろう。ゲームみたいに。


「ふわぁああ……【筋肉製造マッスルメーカー】使用ぅうう!」


 ビリッ! ムキっ!


 ん?


 ビリッ! ビリッ! ムキっ! ムキっ!


 これ、何の音?


「うわぁあああん! ショウゴ~~体がムズムズするぅううう! なんか膨らんできた~~」


 ミーナの2つの膨らみがどんどん大きくなっているような……いや膨らみだけではない。手足や体全体が膨らんできているようだ。


 ビリッビリッ―――ビリィイイイ! ムキムキぃいい!


 ミーナの着ているローブを引き裂いて、ムッキムキの筋肉が露わになる。

 ローブの下は例のビキニアーマーだ。なんだこれ……前世のしかるべきボディコンテストに出たら優勝しそうな。

 しかし、筋肉ムキムキになるスキルって、そのまんまじゃあないか。


「ふわぁああ! なにこれぇええ! 嫌ぁあああああ!」


 ミーナは自分の変わり果てた姿に絶叫した。

 ガマンだミーナ、ここはムキムキに耐えてくれ。


「なんだぁ……このムキムキ女はぁ」


 魔族ボアロスがミーナの異様な変化に驚くや、髭のムチを高速で飛ばしてきた。


「ムキムキって言うなぁ~~!」


 バチン! 大きな衝撃音と共にボアロスの髭をビンタで叩き落すミーナ。


 うぉ……普通に凄い。半泣きだが、ミーナの物理攻撃力は間違いなくアップしている。ビンタであの強力な髭攻撃を弾いたのだから。


「俺様の髭を……クソムキ女がぁああ!」


 怒ったボアロスがさらに髭のムチを高速で乱発してくるが、ミーナが「だからムキムキ言うなぁ~!」と、ビンタでバシバシ応戦する。


 すげぇ。筋肉魔族と筋肉女神の戦いだ。もうどっちもムキムキだぞ。

 体全体が筋肉の塊と化したミーナは、普段では考えられないほど俊敏かつトリッキーな動きで、ボアロスを翻弄している。

 ちなみに、2つの膨らみだけは、より巨大化しただけのようだ。もうそれはそれはブルンブルンして、ビキニアーマーの本領を発揮している。


「わぁああん! ショウゴ! ショウゴ! ショウゴ! あたし大丈夫?」

「ミーナ大丈夫だ! ムッキムキのブルンブルンでカッコイイぞ!」


 取り合えず思いついた誉め言葉を言っておく。ここはミーナに踏ん張ってもらう必要があるからな。


「ふわぁあああん! 全然可愛くないじゃなぃ! ムキムキって言わないでぇえええ!」


 ステラたちの方を見ると。男爵の領兵に押し込まれて苦戦している。

 今にも防御円陣が崩されそうだ。


「よしミーナ、少しでいいからムキムキ踏ん張っていてくれ!」

「何よ! ムキムキ踏ん張るって! あたし可憐な女神なんだもん! もうこうなったらやってやるぅうう!」


 おれはこの場を筋肉ミーナに任せて、ステラの元へ急いだ。




 ◇◇◇




「な、ナターシャ隊長3名負傷! も、もう持ちません!」

「あ……諦めるな……姫様を絶対に守り切るんだ」


「ステラ~逃がさんぞ~ボアロスの奴だと加減を誤ってステラを殺しかねんからなぁ。奴が独断でブルーボアをけしかけた時は焦ったが、良くぞ無事にわしの元までたどり着いてくれた~グフフ」


 カリラス男爵が、円陣の中心にいるステラを見ながら下卑た笑いを漏らした。


「さあ、もう女騎士どもも限界だろう。いま楽にしてやるわい」


 男爵が手をあげて領兵たちに突撃を命じた。

 兵たちは、槍や剣を構えて一斉に突っ込んでくる。だが、彼らと円陣の間に熱風が走り抜ける。


炎風魔法ファイアーウィンド!」


「ぐあぁあああ!」

「男爵! 後方から特殊な魔法が……ぎゃあ! あついっ!」


 突っ込んできた兵たちは、俺のアイテム合体使用に驚きいったん後退した。その隙に俺は防御円陣に合流する。


「ショウゴか! 魔族はどうした!?」

「ナターシャ隊長、あっちは筋肉ミーナが踏ん張っている。まずはこちらを片付けよう!」

「き、筋肉ミーナ? 良くわからんがこちらは劣勢だ、みな魔力も尽きかけている!」


 そこへカリラス男爵がぬっと現れた。


「ステラ! 大人しく降伏しろ! お前は魔王さまへ献上されるのだ、魔王様の一部になれるなど栄誉なことではないか~グフフ」


「カリラス男爵……あなたは間違っています! 降伏などしません、今すぐ兵をひきなさい! 我々の敵はあの魔族でしょう!」


 ステラの叫びに呼応して、ナターシャ隊長や他の団員たちに闘志が再びともり始める。俺もグッと拳を握りしめた。


「まったく、面倒をかける王女殿下だ。良かろう、わしがまとめてケリをつけてやるわい。おまえは素直に捕まって、魔王様に食べられれば良いのだ!」


 男爵は剣を抜き放ち、その切っ先を俺たちに向けて詠唱を開始する。魔法でケリをつける気か。だが……


 食べるだと?


「おい、俺を差し置いて食べるとはなんだ?」

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