第17話 豚しゃぶ定食、無制限一本勝負!
ミーナが歩哨に立っていたであろう方をむくと、豚のような魔物が2頭、猛烈な勢いでステラの方に突進していく。
ちなみにミーナは体当たりされたのか、その場に倒れていた。
「み、ミーナ!」
俺はミーナに声をかけるが、ピクリともしない。そこへナターシャの大声が、響き渡る。
「ショウゴ! 落ち着け! そこの2名、ワタシに続け! マイアは引き続き周辺を警戒何かあれば叫べ! ショウゴと残りはステラさまの周囲を固めろ! 絶対に守り抜け!」
ナターシャ隊長が素早い指示を飛ばして、抜刀しつつ2頭の魔物に迫る。
隊長に続いた2名のうち1人は、倒れたミーナの元へ向かう。
「ショウゴさま! ブルーボアです! ミーナが!」
ステラの元に向かうと、彼女は顔面蒼白となり俺の方に駆け寄ってくる。
「大丈夫だステラ! あいつはあんな程度ではやられない!」
初めて転生した時も「ほげぇええ」って吹っ飛んだあとピンピンしてたからな。うん大丈夫だ……たぶん。
俺たちは、ステラを囲うように円陣を組む。その場からは動かない。
ブルーボアが2頭いたということは、まだ他にもいるかもしれないからだ。現状では、戦闘中のナターシャと離れる方がリスクが高い。
ナターシャ隊長の方を見ると、騎士の1人が風魔法でブルーボアの動きを阻害しているようだ。
「はぁああああ!」
そこへナターシャ隊長が、剣に火魔法を付与して一刀両断にする。訓練どおりの動きで1頭を処理する。
素早く標的を変えて、もう1頭と対峙する。彼女の気合の入った声が飛んできた。
もう1頭との交戦も、有利に進めているようにみえる。
このまま終わってくれればいいのだが……
ガサガサっ
―――終わらないか。
「ブルーボア、後方に出現!」
周辺を警戒していたマイアの叫び声と同時に、しげみから別のブルーボアが飛び出してきた。
「大気の精霊よ、我にその力を与え給たまえ!
正面に構える護衛騎士がブルーボアに魔法を放つ。
が……ブルーボアは、魔法を放った騎士の頭上よりはるか高くに跳躍する。ウソでしょ……この図体でよく飛べるな。やはり魔物は通常の動物とは違う身体機能が備わっているのだろうか。
そのまま、上空から口をパックリあけると青い光が集まっていく。え? 何あれ? なんかヤバいと感じた俺は、即座にアイテムを使用する。
「
俺がとっさに放った光と風の拳は、ブルーボアが発射しようとした何かを粉砕すると同時に、突き抜けて顔面に命中する。
顔面をのけ反らして、そのまま脳天から地面に叩きつけられたブルーボアは、ピクリとも動かなくなった。
その直後―――何かが上空から大量に降ってきた。
「うおっ!」
時間としてはわずかだが、上空から大量に水滴が落ちてきたのだ。もう大雨のようにザァーと。
どうやらブルーボアが口から発射したのは、水を圧縮した塊のようだ。発射直後に、顔面を光と風の拳で殴ったものだから、水が飛び散ったのだろう。
水魔法としての攻撃力は奪えたようだが、俺を含めみんなびしょびしょだ。
「みんな大丈夫か……」
ああ……上半身は鎧なのでまあいいとして……スカートとかヤバイ。もう張り付きまくって……そりゃもう……
「「「「「キャア~~っ! 見ないでっ!」」」」」
俺がみんなに視線を向けると一瞬固まったのち、女子たちの悲鳴がこだました。同時に両脇の女性騎士からビンタされた。
俺、頑張ったのに……なぜゆえに?
そこ気にするなら、なぜ鎧にスカートなんだよ……そもそもの設定ミスなんじゃ……
だが、落ち込んでいる暇はなかった。さらに3頭のブルーボアが現れる。
さきほどの一撃で仲間がやれたのを見ていたのだろう。即座に飛び掛かっては来ない。うち1頭が口を開けたかと思うと、青い光が収束されていく。
「なあ? 魔物って魔法が使えるのか!?」
俺は反射的に再度、みんなの方を向いてしまった。ステラがど真ん中にいる。
ステラは純白の修道服に身を包んでいるので、水を被った影響がもろにでている。うわぁ~ピッタピタのボディライン出まくりじゃないの。
「ええ、魔物も魔法を使いますよ。体内の魔力を使って放出できます! って……ちょ、ショウゴさま! どこ見てるんですか! 前を向いてくださいっ!」
ステラに怒られた俺は、再び3頭のブルーボアに目線をうつす。
なるほど、さっきのブルーボアが口から発射したのは魔法だ……まあ厳密に言うと
……ん?
なら食べれるんじゃないの?
「ブルゥウウウウ!」
ブルーボアの口から青い球体が形成されていく。
『魔力放出を感知、吸収可能です』
俺の脳内にスキルの声がひびく。やはりか、どうやら食べられるらしい。
ブルーボアから水の塊が発射された。凄い勢いでこちらへ飛んでくる。
パクリっ!
おお……肉の旨味と野菜がいい感じにからんで、ポン酢らしき味付けによって酸味が効いており、全体がキュッと締っている。
いやこれ……豚しゃぶ定食じゃないかぁあああああ!
俺が歓喜の声を上げると、残りのブルーボア達も水魔法の発射体制に入りはじめた。
「おお、マジかよ! いくらでも打ってこい! こりゃ最高だ!」
俺は「豚しゃぶ定食」無制限一本勝負に入るのであった。
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